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第750話

Author: 北野 艾
病院を出ると、エントランスにはすでに迎えの車が待機していた。

運転手の大森がドアを開け、詩織が乗り込もうとしたその時、背後から遠慮がちな声が聞こえた。

「あ、あの……ちょっと待ってください」

周囲に人の気配はない。詩織は足を止め、振り返った。

そこには一人の若い女性が立っていて、真っ直ぐに自分を見つめている。

見覚えのない顔だ。

「私を呼んだ?」

「はい」彼女はこくりと頷いた。

緊張しているのか、頬を少し紅潮させ、言葉に詰まりながら続けた。「江崎さん、ですよね。はじめまして……じゃないんです、実は。小宮山遥と言います。数年前に一度お会いしてるんですが、覚えてらっしゃいますか?」

数年前――

詩織は記憶の糸を辿ってみたが、すぐには結びつかない。

遥がそっとヒントを差し出した。「クルーズ船の、カジノです」

範囲を絞られ、詩織の脳裏に鮮明な光景が蘇った。「ああ……あの時の妹さん?」

思い出してもらえたことがよほど嬉しいのか、遥の顔がぱっと輝いた。「そうです!あの時はお兄ちゃんを助けて、カジノでたくさん勝たせてくれて……ずっと、ちゃんとお礼を言いたいって思ってたんです
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でたー!忘れてたー!!
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