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序章 第4話 黄昏に微笑むあの子

작가: 輪廻
last update 최신 업데이트: 2025-12-30 18:45:19

斯くして、宗一さん・清さん兄妹の御陵本家に迎え入れて貰った私は、数日掛けて御陵家ご用達の大病院で体調を整えた後に退院し、そのまま本家の屋敷へと引っ越すことになりました。

引っ越し当日、宗一さんからの指示で病院屋上へと足を運んだ私を出迎えたのは、爆音を轟かせながらヘリポートへと今正に着陸せんとする中型多目的ヘリ、UH-60……通称"ブラックホーク"でした。

アメリカ合衆国のヘリコプター製造会社、シコルスキー・エアクラフト社製の本機は、汎用性に極めて優れる多目的ヘリコプターであり、"日ノ本の裏御三家"もその汎用性の高さを認め、相当数を購入・保有していました。

本来、アメリカや日本の自衛隊、台湾やオーストラリアなどの、国家の防人たる··が運用しているブラックホークですが、目の前に着陸したそれは迷彩など不要とばかりに真っ黒に塗装されており、見る者に底知れぬ不気味さを感じさせました。

着陸したブラックホークの中より、特殊部隊のような格好をした黒ずくめの男たちが降りてきたかと思うと、一糸乱れぬ動きで敬礼します。【敷島】の者たちと見間違え、一瞬身構えた私でしたが、程なくしてその不安は杞憂であったと知りました。

「御陵 奏さまですね、お会い出来て光栄です──これより我らが貴女を、御陵本家までお連れ致します」

目の前の男たちはそう言って、再度私に敬礼しました。裏御三家が保有する私兵部隊、通称【彼岸】。それが、彼らの正体でした。清さんたち裏御三家の人間を敵対者から守護し、裏御三家に仇なす者を見つけ出しては、手段を問わず闇へと葬り去る……云わば、裏御三家の·とでも言うべき存在。

あの日、宗一さんからの指示を受け、清さんと共に私を救出しにやって来たのも【彼岸】の人たちでした。【敷島】とは似て非なるもの……私は即座に警戒を解き、御陵本家まで私を護送してくれる彼らに対し最大限の敬意を示そうと、その場で深々とお辞儀をしました。

「御陵……奏、です。どうか、宜しくお願いします」

「はっ──こちらこそ、宜しくお願い致します」

時間が勿体ないということで、私は直ぐに機内へと案内されました。思った以上に狭い──それが、機内に乗り込んだ際の第一印象でした。ブラックホークは軍用ヘリですので、当たり前と言えば当たり前なのでしょうが……。

「軍用ヘリゆえに、乗り心地は決して良いとは言えないでしょう──最短コースで、本家までお連れしますよ」

機長と思しき男が明るい声でそう言うと、ヘリは爆音を轟かせながら離陸を始めました。

御陵本家までのフライトは、お世辞にも快適とは言えませんでした。狭い上に、機内には爆音と振動が満ち満ちており、両脇には武装した屈強な男たちが控えている。無線交信が飛び交い、怒鳴らなければまともに会話が成り立たない劣悪な環境。

頭が痛くなり、吐き気が込み上げてきます。そんな私を見るに見かねたのか、隣にいた【彼岸】の隊員の方が、酔い止めや鎮痛剤、そして未開封のペットボトルの水を私に差し出してくれました。

「あ……ありがとう御座います……」

消え入るような声でお礼を言いながら、私は差し出された薬の中から酔い止めを選択して服用し、ゆっくりと噛み締めるようにペットボトルの水を口に含みました。

「──優秀とはいえ、所詮は軍用ヘリですから。旅客機に乗るのとは勝手が違いますよ。ですが、何度か乗れば慣れますよ。住めば都、とは少し違いますが……乗れば高級セスナみたいなものです」

「…………」

「どうやって慣れろ、そう言いたげなお顔をしていらっしゃる……しかし先にも申した通り、何度も乗れば嫌でも慣れますよ。巫女のお務めとやらで調査に赴く時は大体、これで現地の近くにある最寄りの空港まで行きますので」

そんな物騒なことを笑顔で言うと、彼は再び元の仏頂面に戻ってしまいました。時折、同僚や上官とやり取りをしていましたが、本質的に一人でいるのが好きなようでした。

凡そ一時間半ほどの劣悪なフライトの末、ヘリが降り立った場所は複数の山々を切り開いて築かれた巨大要塞……いえ、巨大な刑務所或いは監獄でしょうか。

何人たりとも外から侵入出来ないよう、高く分厚い鋼鉄の壁で以て四方を囲んで外界を遮り、壁の上にはご丁寧に高圧電流が流れる有刺鉄線まで取り付けられています。更には等間隔で、見張り用と思しき塔とサーチライトが配置され、多数の【彼岸】の隊員たちが敷地内の至る所を小銃を手に闊歩していました。

敷地の中央──丁度、山間部に和洋折衷の荘厳な屋敷が建てられており、ヘリはその屋敷前に設けられた多数のヘリポートの内の一スペースを目指していました。屋敷前にズラリと並んだ黒塗りのブラックホークの列は、壮観を通り越して畏怖の念すら覚えます。

時刻が夕刻ということもあり、余計にそう思えたのかもしれません。

ヘリが着陸すると同時、屋敷の門が重い音を響かせながらゆっくりと開かれ、宗一さんと清さんが、複数名の使用人を引き連れて私を出迎えます。まだヘリのプロペラが回転しているというのに、宗一さんも清さんも何ら動じることはありません。

黒スーツ姿の宗一さんは兎も角、風圧で髪や和服の袖や裾が激しくはためいてもびくともしない清さんの佇まいは凛としていて、とても格好良く見えました。

ヘリの扉が開かれ、私は一目散に清さんたちのいる方へと足早に向かいました。一刻も早く外の空気が吸いたかったのと、ヘリから直ぐにでも降りたいという気持ちからでした。清さんはにこりと笑うと、駆け寄ってくる私を真正面からぎゅっと抱き留めてくれました。

「いらっしゃい、亜也子ちゃ……こほん、奏ちゃん。ようこそ、御陵本家の屋敷へ」

視線の先では、宗一さんがヘリのパイロットや私の護衛を担当した【彼岸】の隊員たちに労いの言葉を掛けつつ、一人一人と固く握手を交わしています。私は清さんや使用人の方々と一緒に、彼らに深々と一礼しました。

私に酔い止めをくれた隊員さんは、残念ながら全くの無反応でしたが……他の方々は笑顔でピッと敬礼しながら、各々の持ち場へと素早く戻っていきました。

「お兄さま。ヘリコプターのプロペラから生じる風はお身体に障ります故、奏ちゃんを早く屋敷の中へ」

「あぁ……言われずとも分かっているよ、清」

宗一さんは苦笑しながら私たちのところへと歩み寄ってくると、私の頭をポンポンと軽く撫でながら、清さんと同じく優しく私を迎え入れてくれました。

「さあ、こっちだ。本当は、今日中に敷地内の全てを案内したいところだが……時間も時間だ、お前の部屋へと真っ直ぐ案内するからゆっくり休むと良い。夕食と入浴は時間になったら薫《かおる》が呼びに来るから、彼女に着いてゆけば屋敷内で迷うなんてことはない筈だ」

宗一さんの言葉を受け、使用人さんたちの中で一番若く可愛らしい黒髪の女性が前に進み出て、胸に手を当てながら私に軽く一礼しました。シンプルなデザインの濃紺の小袖の上から白いエプロンを羽織り、足には足袋と赤い鼻緒の草履を履いています。他の使用人さんたちも、薫さんと呼ばれた方と同じ格好をしていました。

「初めまして、奏ちゃん。宗一さまの許嫁……御門 薫と申します。お困りのことが御座いましたら、何なりと私や他の使用人たちにお申し付け下さいませ」

苗字が御門ということは、どうやら薫さんも"日ノ本の裏御三家"の一員のようです。巫女ではなく使用人と言うのが少し引っ掛かりましたが。宗一さんの隣を小さな歩幅で歩く薫さんの横顔を見ながら、私はふと、そのようなことを考えました。

玄関で靴を脱ぎ、屋敷の中へと上がると、しゅっという鋭い衣擦れの音と、ひたひたという白足袋に包まれたくぐもった足音が、屋敷の奥の方から聞こえました。

「…………」

「…………」

その音を聞いて、宗一さんと清さんはわずかに表情を曇らせ、薫さんは小さく息を呑み、使用人さんたちは怯えた様子で周囲を見回します。

「……どうか、したの?」

首を傾げながら私が問うと、宗一さんは取り繕ったように笑みを浮かべながら、努めて穏やかな声音と態度で私に告げました。

「……一つ。一つだけこの家には、絶対に破ってはいけない規則があってね。いや、他にも色々と守って欲しい規則はあるが、今から言うことだけは何が何でも···守って欲しい。これだけは、絶対に。良いね?」

人差し指を立てながらそう言うと、宗一さんは続けてこう言いました。

──··の機嫌を損ねるな。

冗談や脅しなどではない。私は宗一さんの態度からそう確信しました。この家には··がいる。決して怒らせてはならない··が。それこそが件の音の主である、と。

周囲に··の気配がないことを確認すると、宗一さんたちは私に宛てがわれた寝室兼居室へと、私を案内します。一歩一歩と歩を進める度、靴下越しにひんやりとした感覚が伝わり、二の腕に鳥肌が立つのを感じました。

屋敷内が寒いわけではありません。寧ろ屋敷内は暖房機能が充実しており、外と比較するのが馬鹿馬鹿しいくらい遥かに暖かいのです。

それなのに──

宗一さんと清さんを除き……皆、白い吐息を吐きながら凍えていました。

しゅっ……と再び鋭い衣擦れの音が響き渡り、ひたひたと白足袋に包まれたくぐもった足音が耳に届きます。

そして──··は、私たちの前に姿を現しました。

廊下の突き当たり……私の寝室兼居室の扉の前に、一人の少女が佇んでいました。白の小袖に緋の袴と、巫女装束に似た格好でしたが、巫女装束との相違点として小袖の上から純白の打掛《うちかけ》を羽織っており、巫女と戦国期のお姫様の服装を足して二で割ったような出で立ちでした。

服装以上に異質だったのは、その容姿でした。透き通るような白い長髪、そして雪を思わせる白い肌。切れ長の目の奥底には、鬼灯の花を思わせる赤い光が煌々と輝いているのが見えます。

そして、何より──その少女の顔立ちは、清さんと瓜二つでした。いえ、相手の方が少し大人びて見えるので、清さんが成長したらこうなるだろうという顔立ちを相手が有している、と言った方が適切でしょうか。華奢な体躯も、瞳の奥底に宿した光の数もほぼほぼ同じです。

兎に角、アルビノになって成長した清さんと言う感じで、他の追随を許さぬ綺麗で可愛らしい容貌をしていました。

沈みゆく夕日に照らされながら、少女は宗一さんや清さんには目もくれず、ただじっと私だけを見つめてきます。

──··の機嫌を損ねるな。

宗一さんの言葉が脳裏を過ぎり、私は咄嗟に少女へとお辞儀をしました。今、自分に出来る最良の礼節を尽くそう。そうすれば、彼女も自分を受け入れてくれる筈。

確証はありませんでしたが、何故だかそんな気がしてなりませんでした。

「────」

少女は深々と頭を下げる私を数秒ほど見つめると、やがてくすりと笑みを湛え、夕闇に溶けてゆくかの如くすうっと音もなく姿を消してしまいました。まるで、怪談に出てくる幽霊のように。

その日、それ以上··は私たちの前に姿を見せませんでしたが、夕食の時も……お風呂の時も……そしてパジャマに着替えて、ふかふかのベッドに身を横たえる時も何故だか不思議と、彼女の姿が頭から離れませんでした。

恥ずかしながら、夕食の時もお風呂の時も、宗一さんや清さん、それから薫さんたちと色々な話をして盛り上がった筈なのですが……今となっては全く思い出せません。思い出すのは何時だって、黄昏に微笑むあの子。

沈みゆく夕日に照らされながら、私を見つめて微笑む、清さんに瓜二つの顔を持った神秘的なアルビノの美少女……それは、引っ越し初日に体験した最も強烈な出来事として、すっかり私の脳に焼き付いてしまったのでした。

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