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第14話

Author: 皆無
二年の月日が流れた。異国の地に拠点を構えるデザイン会社、星瀾クリエイティブ。

外はすでに夜の帳が下り、会社内には数えられるほどの明かりが灯るのみとなっていた。アシスタントが最後の手仕事を片付け、今なお明かりが漏れる社長室のドアをそっと叩いた。

「入って」室内に響いたのは、熟成された赤ワインのように芳醇で、低く落ち着いた声だった。

「社長、まだお帰りにならないんですか?もうすぐ十時ですよ」アシスタントがドアの隙間からひょっこりと顔を出し、語尾を少し弾ませた柔らかい声で尋ねる。

デスクで書類に目を通していた安奈は、顔を上げてふわりと微笑んだ。「先に帰っていいわよ。私もすぐ切り上げるから。夜道、気をつけてね」

この二年間で、会社は完全に軌道に乗っていた。近く上場を控えており、経営者である安奈は、細部に至るまで自ら気を配る必要があった。ここ数日は、連日深夜零時を回るまで仕事に追われていた。

怒濤の忙しさが続く中、ついに上場当日を迎えた。その日の夕方、安奈は全社員に向けて早めの終業を告げるべく、広々としたオフィスの中央に立った。「皆さん、今日はお疲れ様!仕事はもう切り上げて、今夜は盛大に祝杯を挙げに行きましょう」

「わあ、やった!」「社長、最高です!一生ついていきます!」

歓喜の声が上がる中、安奈は微笑みながら社長室へと戻り、共同経営者であり親友でもある竹内良子(たけうち よしこ)に電話をかけた。「今夜は打ち上げよ。欠席は認めないからね」

電話越しの良子が笑う。「分かってるって。あの仕事中毒のあなたが羽を伸ばすんだもの、付き合うわよ」

電話を切った安奈の顔には、なおも余韻のような笑みが残っていた。

創業当時は、現地の競合他社から執拗な嫌がらせを受け、資金繰りがショートしかけることも一度や二度ではなかった。その窮地を救ったのが、惜しみなく私財を投じ、彼女の揺るぎない後ろ盾となってくれた良子だった。

良子の助けと、自分を信じて付いてきてくれた社員たちがいたからこそ、今の会社がある。

この異郷の地で、これほどまでに志を同じくする仲間たちに出会えた幸運を、安奈はひしひしと感じていた。

その晩、祝宴も終盤に差し掛かった頃。他のテーブルへ挨拶に回っていた良子が戻ってくると、安奈の隣に腰を下ろし、その腕に甘えるようにしがみついてきた。「明日、母国へ帰るんでしょう
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