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亡き元夫がくれた祝福のメール
亡き元夫がくれた祝福のメール
作者: 灯ちゃん

第1話

作者: 灯ちゃん
陸川景介(りくかわ けいすけ)と長谷川彩寧(はせがわ あやね)の結婚三周年の記念日。彩寧は彼を待つため、陸川グループ本社ビルの前を訪れていた。

ビルの巨大な屋外ビジョンでは、グループ社長である景介のインタビュー映像が繰り返し流されている。

インタビューの終盤、司会者が「成功への道のりで、最も感謝している人は誰ですか」と尋ねた。

彼はソファにゆったりと背を預けたまま、その端正な顔にふわりと笑みを浮かべ、やがて真剣な眼差しでカメラを見据えた。

「俺が最も感謝しているのは、妻です。

この数年間、彼女はずっと俺のそばで支え続けてくれました。俺の人生において、最も大切な存在です。

俺たちは幼なじみとして育ち、若い頃から心を通わせ、愛し合ってきました。俺の心の中で、彼女の代わりになる人間は誰もいません。

彼女に出会った瞬間、俺の世界からあらゆる暗闇が消え去った。凍てつく冬は終わりを告げ、夜空の星々は永遠に輝き続けるだろう」

その言葉に、司会者は思わず顔に羨望の色を浮かべた。ビルから出てきた従業員たちも自然と足を止め、集まっては二人の仲むつまじさについて楽しげに語り合っていた。

「社長って、本当に類まれなる愛妻家だよね。全国の視聴者の前で、少しも隠さずに愛を語るなんて、羨ましすぎる」

「わかる。あれほどの成功者なら、普通はスキャンダルだらけで、インフルエンサーや芸能人と派手に遊んでいてもおかしくないのに。社長は女の影がないどころか、奥さん以外の女性を一切近づけないんだから」

「奥さん、何年も海外に留学してたんでしょう?帰国してからは社長のほうから猛アタックしたらしいよ!」

「幼なじみ同士の恋なんて、誰もが憧れるわよね。社長が何年も待っていたってことは、それだけ想いが揺るぎないってことだよ!」

彩寧はビルの入口に立ち、従業員たちが自分と景介の馴れ初めが嬉々として語られているのを耳にして、照れくささに頬を赤らめた。

皆が言うように、この数年間、景介はたしかに彩寧を宝物のように大切にしてくれていた。

物心ついたころから、景介は彩寧を実の妹のようにかわいがってくれた。

やがて彩寧が留学を終えて帰国したとき、彼女は長年彼に片思いしていたにもかかわらず、少女のころから胸にしまってきた想いを打ち明けることができずにいた。

そんな彩寧に対し、景介のほうからアプローチをかけ、世間に交際を宣言した。プロポーズから婚約まで、すべてが順調に進み、二人は結ばれたのである。

彼に嫁いでからの数年、この帆波市(ほなみし)において、景介が類まれなる愛妻家であることを知らない者はいなかった。

そんなことを思い返しているうちに、景介は手元の仕事を終え、一階へと降りてきた。エントランスで自分を待っている彩寧を見つけると、彼はすぐに足を速め、彼女のもとへ歩み寄ってその肩を抱き寄せた。

「いつ来たんだ?どうして中で待っていなかったんだ。外に立っていたら疲れるだろう」

彩寧はほほえんだ。

「さっき来たばかりよ。疲れてなんかないわ」

景介は視線を落とし、彼女の履いているハイヒールを見て眉をひそめた。

「どうしてまたハイヒールなんて履いてきたんだ?この前足をくじいたとき、医者に注意されたばかりだろう。どうして言うことを聞かないんだ」

「今日は結婚記念日でしょう?とびきりお洒落したいじゃない」

景介は彼女にはかなわないとでも言うように、愛情を込めて彼女の鼻先を軽くつついた。

それから腰をかがめ、彩寧を軽々と横抱きにすると、そのまま自分の車まで運んでいった。

周囲から羨望のまなざしを一斉に向けられ、彩寧の顔は火が出るほど真っ赤に染まった。

「やめて。私、もう子供じゃないんだから」

景介はふっと口元をほころばせた。

「でも、俺の中では、彩寧はいつまでも子供のままだ」

二人は、景介が前々から予約していた雰囲気の良いフレンチレストランへと向かった。席に着くやいなや、スタッフがワゴンを押してやってきた。

そこには、真紅のバラの大きな花束と、あらかじめ注文されていたケーキ、そして小さなギフトボックスが載せられていた。

箱を開けると、中にはまばゆい光を放つダイヤモンドのネックレスが収められており、照明の下でひときわ目を奪う輝きを放っていた。

彩寧は驚きに目を見張った。それは、以前ファッション誌でちらりと目にして気になっていたネックレスだった。景介は大金をはたいて、わざわざ海外から取り寄せてくれたのだ。

そのネックレスを見つめる彩寧の瞳には、隠しきれない喜びがあふれていた。

景介は優しい笑みを浮かべ、ネックレスを手に取った。

「俺が着けるよ」

彼がネックレスを持ち、やさしく彼女の首に回して留めようとしたそのとき、テーブルに置かれていたスマホが場違いな着信音を響かせた。

景介は画面を一瞥すると、わずかに眉をひそめた。そして、そのまま片手で通話ボタンを押した。

電話の向こうで相手が何を告げたのか、景介の顔色はたちまち一変した。

通話を切った瞬間、彼の手からネックレスが滑り落ち、硬い音を立てて床に転がった。けれど、彼はそれに気づきもしなかった。

景介は慌てて上着をつかみ、彩寧に一言だけ残した。

「彩寧、急用ができたから先に行く。あとで運転手に迎えに来させる」

そのまま彼は、足早にレストランから立ち去ってしまった。

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