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第1138話

Author: リンフェイ
姫華「……つまり、私のことをあなたのお守り代わりだと思ってる?」

善は彼女からそう言われても、冷静にこう返した。「お守り代をお渡ししましょうか」

姫華は笑って言った。「以前は桐生家についてあまり知らなかったんだけど、あなたと知り合ってから、お兄さんに桐生家についていろいろと聞いてみたことがあるの。善君って桐生家ではあまり護身術とかが得意じゃないから、出かける時には常にボディーガードをつけているんでしょう?」

「ええ、僕は小さい頃太っていたんです。太っている人はあまり運動が好きではないでしょう。護身術を習っている時にいつもさぼっていて、結局兄弟たちの中で一番弱い男になってしまいました。仕方ありませんからね、ボディーガードをつけるしかないんです」

彼ら桐生家の若い世代は十人いるのだが、出かける時にボディーガードをつけているのは、確かに善、ただ一人だけなのだ。他はたまに数人のボディーガードを引き連れて登場する程度だった。

彼はボディガードが近くにいないと、どうも安心できなかった。

姫華は車を発進させながら、言った。「私みたいにか弱い女の子だって出かける時にはボディガードをつけないのよ。ショッピングする時だけ数人連れていくの。荷物持ちのためにだけどね」

「姫華さんは護身術ができますか?」

「私たちのような家柄の出身者は多少なりともできるものでしょ。自己防衛のためにもね。だけど、実際にそれを使うような場面にはまだ遭遇したことないわ」

姫華の星城での評判はあまりよろしくない。彼女の性格は少しお転婆で、さらに横柄さが加わり、また神崎家は星城においてかなり地位のある格式高い家柄だ。だから、そんな彼女を怒らせるような人間はいない。彼女がボディガードをつれて出かけなくとも、普通の不良たちは姫華の車を見たら、できるだけ遠く離れて近寄らないのだ。

生活する上で何も危険などないから、ボディガードを連れて出かけないのだ。

星城の上流社会の中では、最も派手な登場シーンをするのがあの理仁である。しかし、理仁のその目的は、ボディガードを配置することにより、自分に言い寄って来る人間をせき止めるということにある。

「姫華さんは頼りになる女性ですね。今度はあなたにお願いして守っていただかなくては」

それを聞いて姫華は、ぷはっと噴き出して笑った。笑いながら彼女はこう言った。「だから
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