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第726話

Author: リンフェイ
唯花はおかしそうに言った。「……姫華ったら人を間違えたのかしら?」

理仁は笑って言った。「間違えたんじゃないかもしれないぞ。神崎さんは叶わぬ恋をようやく諦めて、桐生さんのことが気になりだしたのかも」

唯花も姫華が長年結城社長に恋焦がれていたから、間違えるはずがないと考え言った。「まだ好きになるまでいってないと思うけど、たぶん桐生さんのどこかが姫華の心をちょっと動かしたんでしょうね。

桐生さんは本当にいい人なの?姫華はすごくいい子だから。もし桐生さんと仲良くなれて恋人になれば、みんな安心できるよ。結城社長を好きになって結ばれなくて苦しんだ姫華を見てると、心が痛むわ」

彼女は姫華に恋のアドバイスを一時的にしていたからだ。

結城社長を落とすことはできず役に立てなかったが、姫華が善と結びつくなら、それもよさそうだ。

だた、善の実家はA市にあるのだ。少々遠いが、伯母が許してくれるだろうか?

姫華は彼女の一人娘なのだ。

「見守ってあげればいいさ。もし神崎さんが桐生さんとうまくいきそうなら、俺たちは後ろからひそかに応援してあげればいい。結ばれる縁があるかどうかは、あの二人次第だよ」

前は、理仁は姫華が好きではなく、欠点だらけだと思っていた。

今では、彼女は家族に甘やかされて育ち、わがままで、高飛車な女だが、ちゃんとした価値観の持ち主だと思っていた。それに、唯花にもよくしてくれている。

唯花に優しくしてくれる人なら、理仁はちゃんと尊重するつもりだ。

姫華が唯花によくするのは、二人が従姉妹という血縁関係があるからではなく、本当に気が合うからだ。

「そうね」

唯花も焦ってはいけないとわかっていた。

まずは二人をよく観察してみよう。もし姫華と善が本当にうまくやっていけそうなら、玲凰にも話してみていいだろう。神崎グループがアバンダントグループと提携さえすれば、自然に善と姫華も接するチャンスが多くなるのだ。

理仁はあるスーパーの前に車を止め、唯花に言った。「ちょっと陽君に果物を買ってくるね」

「おもちゃは買わないでね」

唯花も一緒に車を降りた。

「姫華がいつも陽ちゃんにおもちゃを買ってあげてるから、陽ちゃんのおもちゃはもうお店が開けるほどたくさんあるのよ」

理仁は微笑んだ。「陽君がみんなに愛されるのは別に悪いことじゃないだろう?確かに両親が離婚して、父
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