ログイン幸せな結婚生活を送っていた結葉は、ある出来事をきっかけに夫・偉央の愛が歪み、DVに苦しめられるようになる。耐えきれず幼なじみ・想のもとへ逃れた彼女は、夫との結婚が間違いだったのではないかと思い始める。一方、結葉を守り続ける想にも、長年胸に秘めてきた想いがあって――。ヤンデレDV夫と溺愛幼なじみの間で揺れる、切ない略奪愛。 ※表紙絵は市瀬雪様に有償依頼しました。(作品紹介以外での使用、固くお断り申し上げます) ※現行の法律では女性も【再婚禁止期間】は撤廃されていますが、本作では執筆当初の法律の基準が採用されて書かれています。あらかじめご了承下さい。
もっと見る「あっ、やだっ、
「
言いながら、
ラテックス越しの夫の
濡らされないままにそこへ挿入されることの苦痛を、
「お願っ、
抱かないで欲しいと懇願しても無駄なことは知っている。
だから、それはもう諦めた。だったらせめて、痛くないようにして欲しい。
「僕を裏切っておいて……優しくされたい?
フッ、と鼻で笑うなり
膝を抱え上げられ、必死に抵抗しても、両腕を縛られてベッドに
「や、ぁっ、
力任せ。強引にこじ開けられた
「無理矢理犯されてもすぐ濡れてくる、とかっ。……
「僕がっ、どんなにキミのことを愛しているかっ、
彼女の汗と涙で首筋や背中に張り付いた髪の毛が、何とも
大きくて黒目がちの瞳からポロリと涙がこぼれ落ち、シーツを濡らしたのが背後から垣間見えたけれど、それすら
涙目で振り返り、
「いっ、――あぁ!」
途端
(――もっと苦しめばいい)
そんな激情にかられながら、
「僕を悲しませたらっ、こう言う目に遭うって、
「
「口で言っても……
「想ちゃん。私、今日はちょっとだけ街へお買い物に出てみようかなって思ってるの」 朝。 いつものように想にお弁当を手渡しながら結葉が言った。 想は思わず「……平気なのかっ?」と差し出された弁当の包みごと結葉の手を握ってしまっていた。 そのことにハッと気づいて慌てて想が手を離したら、結葉も驚いたように手を引いた。 ――ゴトッ! 鈍い音を立てて二人のちょうどド真ん中に、支えを失った弁当が垂直落下した。「お弁当っ」「俺のっ」 二人同じように言って、慌てて手を伸ばしてかがみ込んだら、額同士をゴチンッとぶつけてしまう。 結果、今度こそ二人同時に「痛っ!」「痛っ!」と声が出た想と結葉だ。 結局弁当は想が拾い上げて、結葉は髪の毛の下、ほんのり赤くなった額をさすりながら「想ちゃん、ごめんね」と眉根を寄せた。「バーカ、お互い様だろ」 前髪が短めだからだろうか。 想の額がほんのり赤くなっているのが見えて、結葉は自分も見えないだけで同じだろうなぁと思った。「うん、頭もなんだけど……お弁当も」 想の手にした包みを指差したら「ああ、中身の心配?」とククッと笑われた。「多分大丈夫だろ」 想がそう太鼓判を押すのには、ちゃんと根拠がある。 結葉が作る想のお弁当は、想にたくさん食べさせたいという思いが一緒に入れてあるみたいに、中身が結構みっちり詰まっているからだ。 恐らく垂直落下したぐらいでは寄り弁になんてなっていないだろう。 それでもやっぱり作り手としては、中の様子が気になるらしい。「でも……一応どうだったか教えてね」 言い募るように
最初は離婚届と小切手だけを入れて山波想宛に送るつもりだった偉央だ。 だけど結局、未練がましく結葉宛の手紙まで添えてしまった。「結葉……」 結葉がマンションを出て行ってからずっと、偉央は家で眠れなくなってしまった。 あれから何度か自宅に着替えを取りに行ったりしたけれど、本当にそれだけ。 マンションの玄関扉を開けた時、「お帰りなさい、偉央さん」 そう言って、ぎこちなく微笑んでくれる結葉が家にいないことが、こんなにも堪えるとは思わなかった偉央だ。 足枷で無理矢理家に繋いでいた時でさえ、結葉は偉央が戻れば今にも消えてしまいそうなギリギリの淡い笑顔を一生懸命作って……それでも震える声で「お帰りなさい、偉央さん。お仕事お疲れ様でした」と労ってくれた。 玄関を開けた時に香る暖かな夕餉のにおいと、華奢な体躯を抱き寄せた時、結葉自身から仄かに薫る甘やかな芳香。 それは彼女が使っていたボディソープやシャンプー由来のものだったのかもしれないけれど、偉央は結葉から立ち昇る、女性らしいその香りが大好きだった。 本来ならば、偉央自身、家事をするのは嫌いではなかったはずだ。 なのにどうだろう。 ――家に結葉がいない。 ただそれだけのことで、こんなにも何もする気になれなくなるなんて、思いもしなかった。 結葉が望んだように、子供でももうけておけば、良かったのだろうか。 〝子は鎹〟とよく言うけれど、もしかしたら子供を作っていれば、足枷なんかより強力な枷になって、偉央の元へ結葉を繋ぎとめてくれたんじゃないかと、今更のように思ってしまう。 愛する女性との二人きりの生活を乱されるのが嫌で、結葉からの〝子供が欲しい〟という願いを、再三に渡って無下にし続けてきた偉央だった。 けれど、こんな風に結葉を失って一人きりにされてしまうくらいなら、子供に乱されながらも彼女がそばに居てくれる生活の
結葉が偉央と本当に離婚するつもりならば、想との同棲は、結葉にとって不利にしかならないだろう。 いくら幼馴染みで、小さい頃からお互いの家を行き来している仲とは言っても、若い男女が一つ屋根の下にいて、世間一般の人が何も思わないわけがないのだから。『……たっ、確かに想ちゃんのお世話にはなってるけど……住んでるのは想ちゃんのアパートじゃない……』 結葉の言葉はまるで要領を得なくて。 美鳥は娘をそばで見守れない焦燥感に「じゃあどういう……」 つい次々に畳み掛けるように自分の思いを話してしまいそうになる。 さっきから結葉が何かを言おうとするたびに、それを遮って質問を投げかけてしまっている自分に気が付いた美鳥は、グッと堪えて言葉を飲み込んだ。 ダメだ、マシンガンみたいに一方的に話してしまって、娘の言葉を聞いてあげられていない。 これが、日本にいる頃にも結葉の異変に気づけなかった理由かもしれない。 今更だけど、そんな風に思った美鳥だった。***「美鳥さんに、思ってることちゃんと話せたか?」 結葉をすぐそばで見ていて、彼女が通話口に向かって「でもっ」とか「違うの」とか、そんな言葉ばかりを言っているように思えた想だ。 結葉は決して無口な方ではないけれど、熟考して話すところがある。 相手から余りにも矢継ぎ早に畳み掛けられると、上手く話せないところがあるのを知っているから、ちょっと気になってしまった。「うん。最初はなかなか聞いてもらえなかったんだけど……途中から私のペースに合わせてくれて。――ちゃんと話せた……と…&helli
『ごめんなさい、お母さん。私、偉央さんと……離婚することになると、思う……の』 ゆっくりとこちらの様子を窺うように。 美鳥になるべく衝撃を与えないように。 結葉がひとつずつ単語を選ぶようにしながら投げかけてきた言葉に、美鳥はそれでも頭を鈍器で思いっきり殴られたような衝撃を覚えてしまう。 別れたりせずに、どうにかならないのだろうかと思って。 でも、と思い直した。 幼い頃から我慢強くて大抵のことは飲み込んで受け入れてしまうところのあった娘だ。 その子が、「別れるしかない」と判断を下したのだとしたら、それはもう本当に無理だったからに違いない。 いや、我慢強い結葉だからこそ。 もしかしたら離婚を切り出してきたのは偉央の方かもしれないと、思い直す。 だとしたら結葉にはどうしようもないではないか。「そっか。ゆいちゃん、辛かったね。お母さん、鈍感で何も気付いてあげられなくてごめんね」 別れを切り出したのはどっちから?と聞けなくて、思わずどっちとも取れる当たり障りのない言葉を返したら、『そっ、そんなこと、ないっ!』という声とともに、カサカサという音が聞こえてきた。 きっと結葉のことだ。 音声通話だから見えないのに。 結葉はきっと、必死になってフルフルと首を横に振ってくれているんだろう。『お母さんのお陰でっ、私、辛かった時、すごく救われてたっ。こっちにいるときは……沢山他愛もないお話に付き合ってくれてっ、本当にありがとう』 勢い込んだように言われて、美鳥は自分が日本にいた時にはすでに結葉の苦しみは始まっていた?と気付かされた。「ゆいちゃん、お別れを切り出したのって……」 結局、聞かずにはいられなかった美鳥だ。
レビュー