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第823話
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交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第824話
あの頃の彼女はまだ彼のことを好きになっていなかったので、どうでもよかった。それが今、彼のことを愛してしまい、真実を知ってしまうと、どうでもいいなどとは言えなくなった。心がズキズキと痛かった。特にここ暫くの間は、彼がいつも一緒にいて溺愛してきていたので、唯花はさらにつらく、怒りも倍になっていた。彼からの愛も実は偽物で、騙しているだけではないのか？首の後ろもまだ少し痛む。あのバカ野郎！結城理仁は大馬鹿者だ！大川たちは返事に困っていた。若旦那様が初めから若奥様を騙していたことは、彼らも知っていたからだ。「どなたかアップルの充電器持っていませんか？私の携帯切れてしまって、ちょっとお借りしたいんですけど」大川は返事をしようとしたが、隣にいた同僚に突かれて、彼女はハッとし急いで言った。「若旦那様がアップルの携帯をお使いです。若奥様、彼に言って借りられたら良いかと思いますよ」唯花は彼女たちのちょっとした動作に気づいていた。心の中で、結城理仁の同意がなければ、彼女は携帯の充電器すら貸してもらえないのだとわかった。あの男は完全に彼女をこの屋敷に閉じ込め、外とは連絡を取れないようにするつもりか？あいつはこのようにすれば、彼女をここに留めておけるとでも思っているのか？空間的に人を留めておくことはできるだろうが、彼女の心まで留めることはできないのだぞ！唯花はそれ以上使用人たちと話をすることはなく、あの書き終えた離婚協議書を手に下へとおりていった。まだ階段の上にいる時に、下でソファに座っている理仁が見えた。彼は携帯を使い、誰かに連絡をしているようだった。そして彼女の足音が聞こえると、彼はすぐに携帯をズボンのポケットへと戻し、急いで立ち上がり彼女を迎えにいった。「唯花」「私を馴れ馴れしく呼ばないで！」唯花の表情はまた真っ暗闇の夜空のように暗くなった。今の彼女はこの某結城氏を一目でも見てしまうと、耐えられず不機嫌になってしまうのだからどうしようもない。「唯花さん」理仁はそう言い直した。「お腹が空いたでしょう、食事にしよう」彼は彼女の機嫌をうかがいながら、手を伸ばし唯花の手を引こうとしたが、それを拒否されてしまった。唯花は彼を素通りし、まっすぐにソファの前まで来ると、書き終えた離婚協議書をテーブ
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第823話
一人客間に閉じ込められている唯花は何をしているかって？彼女は今、部屋の中でペンと紙を見つけ、ソファの前でその紙をテーブルの上に置いて両腕をつき、真剣な様子で離婚協議書を書いていた。結婚してから、夫婦は他に家を買ってもいないし、別に財産分与するものもない。彼は以前、離婚したらトキワ・フラワーガーデンの部屋とあの車を彼女にくれると言っていた。しかし、唯花はそれもいらなかった。あれは彼が彼女を騙すために買った家だから、あんなもの要るものか！車だって、彼のものなら要らない。彼女が今乗っているあの車は理仁がお金を出して買ったものだ。離婚する時に、彼女は車の代金も一円も漏らさず彼に返してやるつもりだ。彼の財産は分けてもらわなくていいし、結婚している間の時間や感情に対する賠償も別にいらない。もともと自分の物だったものはお互いにそれを持っていればいいだけで、ダラダラと無駄に時間を過ごさず、ただ彼に離婚の同意サインをしてもらえればそれでいいのだ。もし逆に彼のほうが、その結婚している間に失った時間やら精神的苦痛やらに責任を取ってもらいたいと言うのなら、彼女は喜んで少し出すつもりだった。なんといっても、相手はあの財閥家の御曹司であり、彼女のためにいろいろと我慢して本意ではないことまでしていたのだろうから、それに対してなんらかの賠償をするのは当然だと思っていた。しかし、彼が無理な要求をしてこようものなら、彼女は拒否をするつもりだった。ただ、彼女ができる範囲で、彼に少しお金を渡すくらいならできる。「トントン」その時、ドアをノックする音が聞こえた。「唯花さん、ドアを開けてくれ、中に入れてくれないか？」結城理仁だ。唯花は無視した。今彼を見たら、怒りしか湧いてこない。「唯花さん、ずっとこの中にいたら、気分が悪くなるだろう？出ておいでよ、一緒に庭を散歩しよう。うちの庭にはたくさん花があって、とても綺麗なんだ。下までおりて見に行かないか？あの庭は君のために、人に頼んで整えてもらったんだよ」唯花は依然として声を出さず、ドアも開けることはなかった。「唯花さん、お腹空いただろ？君が好きな料理をたくさん作らせたんだ。少しドアを開けてよ、料理の匂いがしてくるから。もう日も沈む時間だ、絶対にお腹が空いてるだろう」理仁はまた美味しい
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第822話
「あいつは今内海さんを失うことを怖がっているのではなく、自分が彼女を騙し続けていたことに面と向き合うことにしたんです。ただ、今は少し臆病になって、ちょっと間違った方向に行ってるだけで」明凛はふうっとため息をついた。「私たちが理解を示せるのは、当事者じゃないからですよ。私たちには唯花の辛さや、怒りがわかるわけないでしょう。どちらにせよ、私は唯花を説得するつもりはありません。説得するにしても今じゃなくて後からです。今、彼女は押しつぶされそうになるくらい辛い思いをしているんですよ。どうして私が結城さんの味方をしないといけないんです？そんなことしたら、唯花はもっと追いつめられちゃいますよ。あの子は一番近くにいた夫からここまで騙されたんですよ。彼女の味方じゃなくて、結城さんを許すよう説得するなんてこと、私にはできません。もしできるものなら、唯花に代わって結城さんを殴ってやりたいくらいですよ。神崎社長はご存じなんですかね？今や親戚のお兄さんなんですから、彼に出て来てもらって結城さんに一発お見舞いしてもらいたいですね。それが見られたらスッキリできそう」悟「……」理仁はたった一人で多くの人間を怒らせてしまったようだ。「ああ、それと姫華。あの子はあと二日したら帰ってくるって言ってました。彼女が帰ってきたら、結城さんが結城社長だったってことを知るでしょう。彼女は以前結城社長に相当熱を上げていたし、彼が唯花のスピード婚相手だって知ったら、あの子はどうすると思います？」明凛はこのことを考えただけで頭が痛くなってきた。「これって一体どういうことなの。小説の中のストーリーが現実に起こるなんて。なんと小説の元ネタって現実世界のことだったんですね」悟は急いで尋ねた。「どの小説にこのような話が出てきたんですか？主人公は最終的にどうやってヒロインから許してもらったんです？理仁に教えて勉強させます」明凛は正直に話した。「連載中の小説ですけど、作者はまだ書いてる途中ですから、ヒロインが最終的にどう主人公を許すのかわかりませんよ」悟はがくりと頭を落とし、彼女を見つめ言葉に詰まってしまった。「そんなふうに私を見つめても意味ないですよ。私が書いた小説じゃないし。私を見たって顔に答えは書いてないでしょう？結城さんのためを思うんだったら、私が言ったように彼に唯花を自由
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第821話
「理仁、ちょっと静かに考えさせてくれ。何か良い方法が思いついたら、また君に連絡する。だけど、これ以上もう内海さんを傷つけるようなことは絶対にするなよ。じゃなきゃ、もう彼女を取り戻せなくなってしまうぞ」悟は理仁のせいでイライラしていて、すぐにでも電話を切ってしまいたかった。まずは自分も冷静になることで、明凛の前でも口調を乱さず「九条悟」というイメージを保つことができるのだ。理仁と同じ轍を踏まないように、悟は心から明凛には誠実に接しようと決めた。絶対に理仁みたいに嘘をついて騙したりしない。悟も理仁の返事を待たず、すぐ電話を切った。「どうしてもう電話を切っちゃうんですか。私も結城さんにちょっと話したいことがあったのに。彼が言うようにやったら、唯花は苛立ちをつのらせるだけです。もしかしたら、恨むほど彼に怒りを溜めてしまうかも」悟は言った。「明凛さんはあいつが言った話を直にはっきりとは聞いていないでしょう。俺はもう正直呆れて本当にイライラさせられましたよ。ちょっと頭を冷やさなくちゃ。なんで俺はこんなに精神年齢が低い奴が上司にいるんでしょうね。上司ガチャ大ハズレでしょう？ああ、本当についてない野郎なんですよ、俺は！」悟は長いため息をついた。ずっと理仁のために面倒事を処理し続けてきたが、悟は一切悪態をつかなかった。しかし、理仁が感情面で何かあって、彼に助けを求めるのは、悟にとって頭痛の種だった。主に理仁は生まれつきの俺様気質なのだが、それがまた表にあらわれ、今ではそれを大いに発揮し始めた。「数か月かからなければ、元通りにならない気がします」明凛も同じように感じていて、こう言った。「私が知る唯花だったら、きっと離婚しようと言ってくるでしょうね。だけど、彼女はこの問題から目をそむけることはないです。きっと結城さんときちんと離婚について話し合うはず」もしかしたら、唯花は今まさに離婚協議書でも作成中かもしれない。明凛の話を聞いて、悟は急いで言った。「明凛さん、内海さんを説得してもらえませんか。理仁と離婚はしないでくれって。じゃないと、かなりの死人を出すことになりますよ。そして、その一人目となるのはこの俺です。俺は今あなたにアプローチしている最中ですよ、そんな俺に死んでほしくはないでしょう？こんなタイミングで俺が死んでしまえば、明凛さ
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第820話
明凛はまた口を開いた。「私は結城さんより唯花と長い付き合いだから、彼女のことをよく知っています。保証します、唯花は絶対そんなことしませんよ。彼女を帰らせてください」「君は彼女じゃない。だから君の保証なんか信用できない」明凛「……」本当に石のように頑固で、話が通じない人だ。何を言っても聞き入れてくれないらしい。悟はすぐ自分の携帯を取り戻し、明凛をなだめた。「彼の言うことを間に受けないでください。こいつ今まともな状態じゃないんです。こんな経験がないから対処できないのも無理もないです。本気で彼を説得するなら、最終的に頭が痛くなるのはあなたの方ですよ」明凛は口を開いたが、結局何も言えなかった。普段の理仁はまともで落ち着いていて、いつも厳粛な様子をしていたものの、人当たりは悪くなかった。それがまさか、唯花を自分の傍に軟禁して、帰らせないとは。「結城さん、唯花は今どうしてますか？」悟は心配そうに代わりに尋ねた。「奥さんに何かしたか？」「何もしてないよ。彼女が出て行こうとしたけど、正門は鍵がかかっていたから、鍵を寄越せって言われて、俺は鍵を外へ投げた。それと、脚立で塀を越えようとしたから、その脚立も一緒に外へ捨てた。それで、彼女がカッとなって、今部屋に引きこもっているんだ。悟、俺はどうしたらいい？お前の方が俺より冷静だろう。だから教えてくれよ、今何をすればいい？何も考えられなくて、頭の中がぐちゃぐちゃで、全く落ち着かないんだ」理仁は一度誰かを愛したら、一生深く愛し続ける人なのだ。唯花はもう彼の人生の中で最も重要な女性になっている。彼女を失う苦しみに耐えられない。だから今まで打ち明けられなかった。彼女を失うことを恐れていたからだ。蒼真が特別な日に、唯花の機嫌がいい時を選んで、別の方法で彼女に真実を打ち明けたらどうかとアドバイスしてくれた。彼はそのアドバイス通りにしたのだった。しかし、恐ろしい嵐はやはり吹き荒れた。ずぶ濡れにされただけでなく、前方も見えず、進む道さえ見失ってしまった。この無力さは、理仁の三十年の人生で初めてのことだった。彼はいつも自信に満ち、処理できないことなど存在しないと思っていた。悟は少し考えて、忠告した。「理仁、牧野さんが言ったことは確かだと思うぞ。お前らは夫婦だけど、知り合って
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第819話
怒りと悔しさで頭がいっぱいになった唯花はどうしても出て行けず、結局部屋の中に戻り、客間に閉じこもった。姉と親友に助けを求めようと携帯を取り出したが、すでに電池切れだった。唯花「……もうまったく！」唯花が部屋に閉じこもってる間、理仁は彼女の邪魔をしに来なかった。彼も助っ人を探していたのだ。そしていつものように悟に連絡した。悟はちょうど明凛を店まで送ったところだった。明凛は充電器を持ってきて、電動バイクを充電していった。「九条さん、結城さんが唯花に何かをしたりしてないか聞いてくれます？」明凛は無理やりに連れて行かれた唯花のことが気になって仕方なかった。悟は頷いた。「今電話して二人の様子を聞いてみます」そう言いながら、悟の胸には嫌な予感が過った。彼は理仁のことをよく知っている。この件に関しては、理仁は恐らくうまく対処できないだろうと思っていた。ああ、妻を騙すなら、遅かれ早かれその報いは訪れるのだ。もちろん、それは理仁の自業自得に過ぎない。最初は正体を隠して、唯花の人柄を確かめるというのは理解できないわけでもないが、その後打ち明ける機会ならたくさんあったのに、これもそれも心配でうじうじしていて今になってようやく打ち明ける勇気を出したのだ。唯花が怒らない方がおかしい。悟が電話をかけようとした時、携帯が先に鳴った。着信を確認しながら、明凛に言った。「理仁からだ」「早く出てください」明凛はそう言いながら、今すぐにでも携帯を奪い取りたいほど焦っていた。悟が電話に出ると、明凛は彼の傍に寄り、耳を澄ませた。「悟、助けてくれ」電話の向こうの理仁は疲れ切った声で言った。「唯花さんはすごく怒ってる。どうなだめていいか全然わからないんだ。俺、どうしたらいい？悟、教えてくれよ。彼女はきっと俺から離れてしまう。俺は彼女の性格をよく知っている。間違いなく俺のことを蹴り飛ばして、一生許してくれないだろう。それに、もし最初から俺が結城家の御曹司だと知っていたら、金城琉生に頼んで一緒に義姉さんを騙す方がマシだって言い出したんだぞ。俺を捨てて、金城琉生のところへ行くんじゃないか？そんなことは絶対に許さない！もし本当にあいつに会いに行こうとしたら、屋敷に閉じ込めて、一歩も外に出さないからな！」悟「……」明凛「…
