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第745話 私だけど、何か?

Author: 花崎紬
「肇は見てはいけないものを見た」

森川晋太郎は答えた。

「小林さんは、ゆみのその道は険しいものになると言っていた」

「私にはその道がどれほど険しいものになるか知らないけど、小林さんの話から、ゆみは将来、大変な道を歩むことになると感じた」

入江紀美子はため息をついて言った。

晋太郎はその話を続けようとしなかったが、小林さんが言った、ゆみがよく熱が出ることや、霊眼を開いたことを紀美子に教えた。

それを聞いた紀美子は複雑な心境になった。

暫く沈黙してから、紀美子は長く息を吐いた。

「今私ができるのは、ゆみを支えることだけだわ」

「そうだな」

晋太郎は話題を変えた。

「戻ってきた?」

「うん、朔也が迎えに来てくれて、これから夜食にいくところ」

「腹壊すなよ」

晋太郎は注意した。

それを聞いて、紀美子は吉田龍介のことを思い出した。

「串焼きは別に汚くなんてないわ。ただ調味料をたくさん使うだけ。あなたも試してみたら?」

「君はそんなものを滅多に食べないはずじゃないか?いつから変わったんだ?」

晋太郎が眉を寄せながら聞いた。

「……人の好みは変わるものなの」

2人は暫く雑談をしてから、紀美子は電話を切った。

携帯をしまおうして、彼女はとあることを思い出した。

「あなたはもう運転しないと言ってなかった?」

紀美子は朔也に聞いた。

「君の為じゃなかったら、俺は運転したくなかった」

朔也は無力に答えた。

「ほら、今めっちゃゆっくり走ってんだろ?」

紀美子は言われてメーターを確認すると、時速は40キロだった。

「こんなスピードで走ったら日が暮れるわ、やっぱり私が運転しようか」

翌日の朝。

紀美子が会社に行こうとした時、杉浦佳世子から電話がかかってきた。

「紀美子、今日午前中ちょっと付き合ってもらえるかな……」

「何だか落ち込んでるに聞こえるけど、どうかしたの?」

佳世子の声が変だと気づいて、紀美子は焦って尋ねた。

「会ってから説明する」

佳世子は答えた。

「分かった、今からそちらに向かうわ」

20分後。

紀美子は佳世子が住んでいるマンションの下に来た。

佳世子は車に乗り込んですぐ、紀美子の腕を掴んだ。

「紀美子、私は今すごく落ち込んでいるの」

「子供の状況が良くないの?」

紀美子は心配して尋ねた。

「違
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