クズ事務所に捨てられた元子役Vtuberですが、最古参のニートが石油王でした

クズ事務所に捨てられた元子役Vtuberですが、最古参のニートが石油王でした

last updateLast Updated : 2026-06-21
By:  辻野幸枝Updated just now
Language: Japanese
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元人気子役でYouTuberの相沢ひまりは、事務所から契約を打ち切られ、恋人にも捨てられてしまう。 そんな彼女の前に現れたのは、「働きたくない」が口癖の無職系配信者・神崎蒼。 だが彼の正体は、日本有数の財閥の御曹司だった。 さらに蒼だけが、ひまりの隠された天才的な画力に気付く。 どん底から始まる逆転劇。 ざまぁと恋が交差する、痛快現代ラブストーリー!

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Chapter 1

第一話 「オワコン元子役とニート御曹司?!」

「働きたくない、働きたくない、働きたくないな〜……」

ソファに寝転がった男が、だらしなく天井を見上げながら呟く。

ボサボサの黒髪。

ジャージ姿。

テーブルにはコンビニ弁当の空容器。

どう見てもニートだった。

だが、その男――神崎蒼が、日本有数の財閥の御曹司であることを知る者は誰もいない。

一方その頃。

東京都内の動画スタジオ。

「はい、今日は元子役あるあるをやっていきまーす!」

カメラに向かって笑顔を作るのは、YouTuberの相沢ひまり。

かつて国民的人気子役として活躍した彼女も、今は二十四歳。

登録者数は三十万人。

決して少なくない。

だが伸び悩んでいた。

撮影終了後。

ひまりはスマホを開き、コメント欄を見る。

『また昔話?』

『元子役って肩書しかないじゃん』

『オワコン』

『再生数落ちてて草』

「……はぁ」

思わずため息が漏れる。

慣れているはずだった。

それでも傷つかないわけではない。

かつては違った。

「ひまりちゃん、かわいい!」

「天才子役だ!」

「将来は絶対に大女優になるぞ!」

幼い頃のひまりは、テレビ局へ行けば誰もが笑顔で迎えてくれた。

CM、ドラマ、バラエティ。

毎日のように仕事があり、街を歩けば声を掛けられた。

サインを求められたこともある。

だが成長とともに仕事は減った。

子供だから求められていたものは、大人になれば通用しない。

気付けば「人気子役」ではなく、「元子役」になっていた。

そして今では。

『オワコン』

たった四文字で片付けられてしまう。

スマホを閉じたひまりは、小さく唇を噛んだ。

事務所へ戻ると、マネージャーが神妙な顔をしていた。

「ひまりさん、社長がお呼びです」

嫌な予感がした。

案の定だった。

社長は資料を机に置きながら言う。

「相沢くん。正直に言う」

「はい」

「君との契約を更新しない」

ひまりの顔が固まる。

「え……?」

「最近の数字を見れば分かるだろう?」

淡々と告げられる。

「うちは利益を出さなければならない。君はもう旬を過ぎた」

旬を過ぎた。

その一言が胸に突き刺さった。

事務所を出る頃には、空はすっかり暗くなっていた。

さらに追い打ちが来る。

夜。

交際中の俳優・桐谷優斗に呼び出された。

高級レストラン。

そこで彼はワインを口にしながら言った。

「別れよう」

ひまりは言葉を失った。

「どうして?」

「俺、今度ゴールデン帯のドラマ決まったんだ」

「本当? おめでとう」

心から祝福した。

だが優斗は笑わなかった。

「だからこそ足を引っ張られたくない」

「……え?」

「SNS見たことある?」

「あるけど」

「君、結構叩かれてるよな」

胸が冷たくなる。

「それが何?」

「俺、これから売れるんだ」

優斗はため息をついた。

「オワコンYouTuberと付き合ってるって知られたらイメージ悪いだろ」

ひまりは何も言えなかった。

この人はもう恋人ではない。

自分のことしか見ていない。

「だから私は邪魔なの?」

「そういうことだ」

優斗は席を立った。

「ごめんな」

謝罪の言葉だけを残して。

帰宅後。

ひまりは机に向かった。

涙が止まらなかった。

悔しい。

悔しい。

悔しい。

子役時代から必死だった。

大人たちに振り回されながらも頑張ってきた。

それなのに。

最後に残ったのは、

「オワコン」

という評価だけ。

ふと机の引き出しを開く。

中にはスケッチブックが入っていた。

誰にも見せていない。

子供の頃から描き続けてきた絵。

本当は演技より好きだった。

誰よりも好きだった。

ひまりは無意識にペンを握る。

さらさらと線が走る。

描き始めると時間を忘れる。

嫌なことも忘れられた。

線を重ねるたびに心が落ち着いていく。

気付けば朝になっていた。

翌日。

事務所最後の仕事。

企画名は、

「底辺YouTuberコラボ企画」

だった。

「最後にこれか……」

苦笑する。

スタッフが説明する。

「相手は無職系配信者ですね」

「無職?」

「働きたくないが口癖らしいです」

なんだその人。

そう思った瞬間。

スタジオのドアが開いた。

入ってきたのは長身の青年。

ひまりは一瞬言葉を失った。

顔だけなら俳優でも通用しそうだった。

身長も高い。

スタイルも良い。

整った顔立ちに黒髪がよく似合っている。

だが。

第一声が最悪だった。

「働きたくない、働きたくない、働きたくないな〜……」

全てが台無しだった。

「あ、ダメだこの人」

思わず心の中で呟く。

イケメンなのに残念すぎる。

ひまりは吹き出した。

「何なんですか、その挨拶!」

青年は顔を上げる。

そして少し笑った。

「初めまして。神崎蒼です」

「相沢ひまりです」

二人の視線が交わる。

その瞬間。

ひまりにはまだ分からなかった。

この男が日本有数の財閥の御曹司であることも。

自分の人生を大きく変える存在になることも。

そして。

神崎蒼の目が、机の端から覗くスケッチブックを見ていたことも――。

第一話 完

次回

「君、この絵を自分で描いたの?」

神崎蒼だけが、ひまりの秘めた才能に気付き始める――。

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第二話 「君、この絵を自分で描いたの?」
コラボ撮影は思った以上に順調だった。というより、隣にいる神崎蒼という男が予想外だった。撮影中も、「働きたくないな〜」「帰りたいな〜」「ゲームしたいな〜」などと好き勝手なことばかり言っている。スタッフも呆れていた。それなのに、不思議と場の空気は悪くならない。むしろ視聴者受けしそうな天然キャラだった。休憩時間になり、ひまりは控室でペットボトルの水を飲んだ。すると、「あ」蒼がテーブルの端を見つめる。ひまりは嫌な予感がした。そこには昨夜描いていたスケッチブックが置かれていた。慌てて手を伸ばす。だが一歩遅かった。蒼がスケッチブックを開いてしまう。「見ないでください!」ひまりは思わず叫んだ。しかし蒼は真剣な表情のままページを見ている。「……これ」一枚目は女性アイドルのイラスト。二枚目は街並みの風景画。三枚目は少年の横顔。どれも写真と見間違うほど繊細だった。「君が描いたの?」「そうですけど」「本当に?」「だからそうだって言ってるじゃないですか」ひまりは顔を赤くする。絵を見られるのは苦手だった。演技は見られる仕事だったのに、絵だけは違う。誰にも見せたことがない。秘密の世界だった。蒼はさらにページをめくる。幼い頃の落書き。学校帰りに描いた風景。仕事の待ち時間に描いた俳優たち。十年以上積み重ねてきた時間がそこにあった。やがて蒼は静かにスケッチブックを閉じた。「すごいな」「え?」「本気ですごい」ひまりは目を瞬かせた。褒められると思っていなかった。「お世辞なら結構です」「お世辞じゃない」蒼は即答した。その声には迷いがなかった。「少なくとも俺は、こんな絵を描ける人を知らない」ひまりは思わず視線を逸らした。嬉しいはずなのに、素直に受け取れない。今まで何度も否定されてきたからだ。「でも仕事にはなりませんよ」ぽつりと呟く。「どうして?」「絵で食べていける人なんて一握りですから」そう。ずっと言われ続けてきた。子役時代。撮影現場で落書きをしていた時も。事務所で絵を描いていた時も。『そんな暇があったら台本を覚えろ』『絵なんか仕事にならない』『将来の役に立たない』『時間の無駄だ』誰も絵を褒めてくれなかった。だから趣味として続けるしかなかった。蒼はそんなひまりを見つめ
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第三話 「オワコンじゃない。君は天才だ」
『イラスト制作についてご相談があります』スマホの画面を見つめたまま、相沢ひまりは固まっていた。何かの間違いではないだろうか。差出人は誰もが知る有名企業の公式アカウントだった。フォロワー数は百万人以上。名前を聞けば、子どもからお年寄りまで知っている大企業である。「……え?」思わず声が漏れる。もう一度画面を見る。だが何度見ても内容は変わらない。『弊社の新規プロジェクトにて、イラスト制作をご依頼できないかと思い、ご連絡いたしました』本物だ。ひまりは慌ててスマホを置いた。いやいやいや。無理無理無理。自分の絵を知っている人なんていない。SNSにも投稿したことがない。仕事として描いたこともない。どう考えてもおかしい。「……ドッキリ?」そう呟いてみる。だが公式認証マークも付いている。偽物ではない。頭を抱えていると、再びスマホが震えた。今度はメッセージアプリだった。送り主は――神崎蒼。『起きてる?』「……何でこのタイミング?」ひまりは恐る恐る返信した。『起きてます』するとすぐに既読が付く。『じゃあ、今から電話していい?』『えっ』返事をする前に着信が鳴った。早い。早すぎる。慌てて通話ボタンを押す。「も、もしもし?」『こんばんは』のんびりした声だった。いつもの蒼だ。ひまりは少しだけ安心した。「どうしたんですか?」『DM来た?』「……え?」ひまりは目を見開く。『有名企業からイラストの依頼』「何で知ってるんですか!?」数秒の沈黙。そして。『俺が紹介したから』「…………はい?」思考が止まった。「え?」『だから、俺が紹介した』「えええええっ!?」思わず立ち上がる。「な、何してるんですか!」『何って、紹介』「何で!?」『君の絵がすごいから』あまりにも当然のように言われた。ひまりは頭を抱える。「いやいやいや! 意味分かりません!」『分からなくていいよ』「よくないです!」蒼が小さく笑った。『でも、あの絵は誰かに見せるべきだと思った』ひまりは言葉に詰まった。『もったいないよ』優しい声だった。責めるでもなく、押し付けるでもない。ただ、当たり前のことを言うように。『君、自分の絵を低く見積もりすぎ』「……そんなこと」『ある』即答だった。『少なくとも俺は、
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