死んだと思ったのに、男子大学生として生きることとなったじいさん。しっかしまぁ、難しい世の中だと嘆きつつ、それなりに生活をしていくのです。果たしてじいさんはうまいこと大学生になじめるのか?
View More「じーちゃん!目ぇ開けろよ!!」
ん?孫よそんなに私を乞うのは幼稚園児くらい以来か?
あぁ、川の向こうから死んだばーさんが手を振っている。若い時は美人だったなぁ。そんなことを直接言うのは恥ずかしいが。
その時、声が響いた。
「佐藤悟朗さん。109才。ご臨じゅ……」
私の体が変化したのを感じた。死を感じるはずだったのに。
「佐藤悟朗さん?!あの……佐藤悟朗さんですよね?」
何を言ってるのか?死にかけてたのに。
「えー、色々検査をしますが、かいつまんで言いますと……」
何だ?
「見た目は若返っています。内臓なども検査をしたいのでこのまま入院……」
それはいいが、冷静だな。ん?はぁ?私の体が若返った?
そういえばまわりの人間が動揺のためか固まってるな。
「あー!!じーちゃんが俺みたいになってる」
「静かにお願いします。非常にレアなケースなので、表に出さずに処理したいと思っています」
虎太朗……愛を注いだが、私が虎太朗みたいなのは不満なのか。似ているのは嫌なのか……。私ショック。
「内密にというのならば、父をどこかの大学に入れて下さい。ニートが家にいるのは不審でしょう?」
息子よ……。大学云々はいいが、私をニートとな。ニートって何だ?
「わかりました。では、そのように手配します。悟朗さんはしばらく検査入院となります」
大学の夏休みは長い。私は息子の家に居る。 息子にもその嫁にも「アルバイトをしたら?」と言われた。 “あるばいと”とはっと、すまほもだいぶうまく使えるようになってきたと自負している。 ダイからのLIMEはくだらない話題が多いので“既読スルー”というやつをしている。「親父はパソコン使えるだろう?」 そういえば、昔やってた気がする。昔の技術で大丈夫だろうか?「事務系のバイトすれば?俺が斡旋しよう」 息子の上から目線がちょっと腹立つ。 さてバイトの初日 女子社員の品定めをするような視線を感じた。「佐藤悟朗と申します。大学1年でバイト初めてです。若輩者ですがよろしくお願いします」 きゃー、お姉さんが手取り足取り教えちゃうー!というような声が上がった。男性社員は白けている。私だって元はサラリーマンだしなぁ。 そういえば……この会社って……息子の会社じゃ?あの青二才が社長ってちょっと笑えるな。 事務系の仕事……。打ち込みかぁ。 パソコンの電源どこだ?取って食われそうなお姉さんに教えを乞う事になる。あ、男性社員に聞けばいいのか。 私は、電源から打ち込み画面にいけばこっちのもの。打ち込みはドーンと与えられた分はすぐに終わった。 息子よ……記憶違いは罪だ。私が使っていたのはパソコンではなくワープロだ。
はぁ、この間の墓参りで久しぶりにばーさんに話しかけたなぁ。大学は忙しすぎて考える暇もなかったからなぁ。「おはよー、ごろーっち!」とダイが現れた。 だから、昼だから“こんにちは”だろう?「ごろーっち、よくわかってないかもだけど、今日で前期終了だぜ?ごろーっちに会えなくなる夏休みさみしー!」 私はさみしくない。「成績表は、学生証でプリントアウトされるみたいだね。いやー機械化ー。それはいいんだけど、ごろーっち機械の操作苦手じゃん。だから一緒に行こうと思って」 女に誘われるよりいい。どうせ学食も行くんだろうから私は了承した。「あれ?」とダイは言った。 レシートのような成績表が短い!「ダイ、お前はろくに講義に出てないだろう。そして何だ?ほぼギリギリで単位を取っているではないか!綱渡りか?」「ごろーっちはどうなの?」「私か?」と、ダイとは違うタスキのような成績表を見せた。「ごろーっち、マジで?成績もチョーいいじゃん。こんなに長い成績表なのに」 お前と一緒にするなよ。私は学費(病院に払って頂いている)を一円たりとも無駄にはしたくない。 そんな思いで日夜勉学に励んでいるのだ。 昼から登校するようなお前と一緒にされるのは心外だ。墓参りの際に会った、親御さんにも申し訳ないだろう?「ごろーっち、学食行こーぜ」 やっぱりな……。
Side ダイ 大学デビューの俺は、正直マジでこの私大の事を調べつくし、流行も調べつくし、ミスター私大も狙っていた。 しかし、まさかのことが起こるとは……。 入学式、誰もが2度見をしてしまうようなイケメンが現れた。内心というか俺の頭に浮かんだのはRPGの敵出現画面。『チョウ ガ ツクホド ノ イケメン ガ アラワレタ』だ。 ここは敵として接するのではなく、付きまとうのが吉であろうと俺は思った。イケメンの周りには美女が集まる……と。 しかし、こいつはことごとく俺を裏切る。“自分は死んだ女一筋で他の女に興味はない”と。 イケメンだから合コン三昧と踏んだんだが合コンにはいかないし、まぁ死んだ女一筋だからナットクだが、スマホは持ってないし。 講義は朝から晩まで。食事は残さず食べるように言われた。基本的に説教臭い。俺が説教されやすいのか? それにしても予想外。予定外だったなぁ。 そんなんだから俺は彼に付きまとうんだけど。面白いじゃん。イマドキそんなキャラ。 スマホは持つことにしたみたいだけど、使い方がわからないらしくて俺に使い方を聞いてきたり、俺の想像の斜め上を行くなぁ。 イケメンはなんでもできるイメージだったけど、総崩れ。 でもだからこそ一緒にいて楽しいと思う。
今日は家族総出で墓参りだ。 なぜだ。虎太朗がいない!大学で“論文発表”らしい。 理系なのか?比べたくないが、ダイとは月とスッポンだな。 ばーさん、私はなぜか若返って(体が)元気してるから心配無用だ。この間、大学でばーさんとのこと聞かれて答えた。ダメだったか?嫌だったか?私はちょっと誇らしかった。恥ずかしくもあったんだがな。 大学で私はイケメンという二枚目らしいが、ずっとばーさん一筋だ。心配せずにいつか私がそっちに行くのを待っててほしい。 などと久しぶりの語らいをした。私は満足。 ふと、隣の墓石を見た『柊家代々之墓』とある。嫌な予感……。「ごろーっち!いやだ、きぐぅ」 嫌なら話しかけるな。面倒だから。「親戚の墓参りは当然だろう?そんなお前も家の墓参りだろう?」「あらあら男前ね。うちのダイがお世話になっています」 本当にな……。「こちらこそ。初めまして友人の佐藤悟朗と申します。本日は親戚の墓参りで来ています」「ダイ、ずいぶんしっかりした友人いるのね。お母さん安心したわ」 まぁ、大学でびゅーならなぁ……。 せっかく久々にばーさんとの語らいを楽しんだというのに、ダイとの会ったことでなんだかなぁ。 ばーさん、大学というところにはダイという男のような輩もいるのだ。 昔は帝国大学といって難関大学・エリートという代名詞のようなものだったのに、随分変わったものだよなぁ。
週明け、合コンに行ったダイが絡んでくるだろうなぁと憂鬱な気分だった。私は午前の授業を受けた。なんだか午前からの女子受講生が増えた気がする。様々な香水(化粧品か?)の匂いが混ざったような変な匂いが教室に充満しているが、いいのか教授よ。「ごろーっち、おはよー!」とダイは来た。もう昼だから“こんにちは”だろう。「今日も一緒に学食行こー?」 うーん、謙虚に明るいな。まあいいだろう。「残さず食べろよ」と言うと、ダイはラーメン(大盛り)を選択した。ラーメンスープは飲まない方が体にいいんだが……。「いやぁ、合コンサイコー!」 とダイが言うから「何だいきなり。気持ち悪い」と私は一刀両断した。 ダイは私の言葉を遮るように続けた。「合コンに俺の好みドストライクの娘がいて、いやぁさすがに受付嬢だよね。レベル高いわー」 私はそんなの興味ない。「その娘、お持ち帰りしちゃった」私は憤慨した。「こらダイ!男女交際は清くなければ。結婚でも見据えてるのか?それならばよいが、軽い気持ちで体を合わせるなど言語同断!」「ごろーっち。イマドキそんなじーさんばーさん世代の思想の人間いねーよ?それに体の相性だって重要じゃん?」 とダイに言われた。 イマドキ……虎太朗よ。可愛いままでいて欲しい。「ん?ごろーっち、なんか遠い目してたけど、アヤシイナァ」 まさか孫の貞操を気にしていたとも言えずにいたら、ダイに質問攻めにあって面倒だった。「ごろーっち……」とダイが珍しく神妙な顔をして話を切り出した。「ごろーっちだから話すけど……。俺大学デビューで週末にお持ち帰りしてDT卒業したんだ」と高校時代の写真までみせてくれた。確かに、今のダイとは違うな。陰の気を放っている感じがする。 私は反応に困った。私も大学でびゅーは同じだが、証拠が……うーんDTではないだろう。この体だけど息子も可愛い虎太朗もいるわけだし。 説明するわけにいかないし、しかし嘘はダメだ。「私はもうDTではない。愛した女性がいたが、その女はもう亡くなってしまった」 と説明。嘘はまるで言っていない。「ごろーっち、苦労してるんだな。悪い!俺ばかり浮かれて」 ダイが浮かれているのはいつものことだから正直慣れた。「なぁ、ごろーっち?その女はどんな女だった?」 はぁ、ばーさんについて赤の他人に言うのか。若い頃のばーさ
「で、じーちゃんはわざわざ実家に電話したと」 ちょっと虎太朗が怒ってるー。「虎太朗しかじーちゃんには頼れる人がいないんだよ!めーるの返事がなくて不安だったんだよ!」 ああ、虎太朗がため息ついてる。「まぁ、じーちゃんがその体になったの知ってるのは一部の人間だけだし、それで大学生って俺だけだし、仕方ないけど」 わかってくれたかな?「メールはいつ返事がくるかわからない。他のLIMEとかもそうだけどLIMEは既読マークがつくから、読んだら返事よこせよってなる。それを無視するのが“既読スルー”ってやつだね」 確かにダイからくだらない文がLIMEで届いたら無視するなー。「で、今回じーちゃんが俺に聞きたいのって何?」 私はきちんとメモ帳にメモをしてきた。「合こん・お持ち帰り・ぎゃっぷ萌え・あぷり・だうんろーどって言葉の意味が分かりません!」 虎太朗は少し考えた。「じーちゃん、スマホをもう少し使えるようになろう。辞書がスマホの機能にあるの」 この1キロにも満たないだろう機械に?「ちょっと貸してねー」と虎太朗は言うと、手際よく辞書のアプリを悟朗のスマホにダウンロードした。「このアイコン……このマークのところ触って」「おお……」「で、ここに知りたいことを書き込む。あ、鉛筆とかじゃない!例えば“アリ”」 虎太朗の言葉の選択がわからないな。“アリ”を書き込むと……アリについて色々出てきた。「ほら、虫のアリもあるし、人物名のアリもあるじゃん。で、選んで……ってのを繰り返したら出てくるから」「はー、便利なもんだ」「これでよほどの事がないと俺は呼び出されないでしょ」 あ、そうだ私と虎太朗の関係。「虎太朗、私と虎太朗の関係は周りにどう言おう?」「親戚じゃない?年が近いから昔から親しかった。とか」 まぁ、そうだよな。なんだかちょっとじーちゃんガッカリ。「そういえば、私にも虎太朗のすまほの番号などを教えてください」「電話には出ない場合もあるからね!しつこいと着信拒否するから」 着信拒否……早速辞書で調べた。 何と!?これは絶縁宣言のような……。じーちゃんはあまりの衝撃で死んでしまうやも。
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