地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした

地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした

last updateآخر تحديث : 2025-12-03
بواسطة:  新矢識仁مكتمل
لغة: Japanese
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十五歳。それはコアを見、宿すことができる年。同化したコアの色によって異能を使えるようになり、それによって将来が決まるこの世界で、僕が手に入れたのは何にも使えそうにない色だった。 しかし、この色、実は裏があるようで……? 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

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الفصل الأول

第1話・十五歳、春。

 十五歳。

 僕は、今日、十五歳になった。

 地球のどこかで生きている生きる全ての子供たちが、十五歳になる日を待っている。僕もそうだ。物心ついた時から待って待って、待ちわびていた。

 何故かって?

 ··が見えるようになるからさ。

 ··を宿せるようになるからさ。

 なのに。

 待って待って、待ちわびた、今日この日。

 何で僕はこんな外れくじを引いちゃったんだ!?

     ◇     ◇     ◇     ◇

 コア。

 それがいつ頃から地球にあるかは、誰も知らない。

 見た目は小指の爪くらいの大きさで、色は様々。触るとフニフニしている。お菓子のグミが一番近いかもしれない。自分では動かないし人間と意思疎通も出来ない。そもそも意思疎通ができるのか、生きているかすら分からない、謎の物体としか言いようがない。そんなのが、地面に、木陰に、日向に、海の中に、ビルの狭間に、ひっそりと落ちている。

 ただ、地球中の人間が知っているのは、··が人間が十五歳になった時に見えるようになり、自分と相性のいい··に触れることで肉体に宿せるんだってこと。

 もちろん、みんな面白がって宿してるんじゃない。その後の人生を変えるほど重要な、成人儀礼って言ったって過言じゃない。

 コアは人間に大きな恩恵をもたらしているんだ。

 コアは色々な色をしているって言ったろ。

 コアをその身に宿した人間は、その色にまつわる力を操れるようになるんだ。

 例えば緑だと木々や草を操れる。青だと水を操れるとか。

 原理は分からないけど、この色はこれに使える! と思って念じれば、それが使える時も……ある、らしい。使えない時もあるから、普段から色々な使い方をして慣れておかなきゃならないけど。

 色の濃いコア程、強い力を持っている。

 特に基本色と呼ばれるコアは皆の憧れ。混じりっけない赤、青、緑、紅、藍、黄。そして黒と白。これらのコアは持ち主に莫大な力を約束する。もし十五歳で基本色コアを宿せたら、高校をすっ飛ばして国からスカウトが来るほどだ。十五歳になる子供は皆、基本色のコアを宿せたらと胸を弾ませてる。

 そして、コアの色と数はその人間の能力の高さを示す。

 コアは、コアとの相性と本人のコアキャパシティが組み合わされば一人で三つも四つも宿せるし、色を組み合わせて力を使うこともできる。つまりたくさんの色を持っている人間が優秀ってこと。

 つまり、どんな色のコアを宿すかで、将来が決まってくるんだ。

 そう、僕だって。

 ……基本色とは言わないけれど、濃い色のコアを手に入れて、いい高校行って、いい大学入って、いい就職先見つけて。

 コアで人生が決まる。コアを得ることで未来が決まる。

 な、の、に。

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第2話・悪夢の誕生日に
 いやいや、僕だって一生懸命探したんだよ? 十五歳の朝、家族のおめでとうも言葉もそこそこに外に飛び出て、それまで気づかなかったコアの姿に興奮した。 色の強いコアに次々触った。 でも、コアは相性で決まるって言ったろ? ふにっという感触はしても、どれもこれも僕の中に入ってくるものはなかった。 もしかして、僕に合うコアはないのかと思い始めて、緑系コアを持つおばあちゃんが僕の誕生をお祝いして庭に植えたって言う木の根元に座り込んだ時。 むにゅ、とお尻に柔らかい感触。 あ、何か踏んだかな、って思って立ち上がろうとしたその時、ズボンの布地を、下着の布地を、そして皮膚をすり抜けて入ってくる。 両親や先に十五になった友達に散々聞かされた不思議な感覚。 まさか。 もしかして。 コア? 期待と、不安の入り混じった、この感触。 やがて、右手の甲が熱くなってきた。 宿ったコアは人間の皮膚のどこかに浮かび上がる。おばあちゃんは眉間だったし、父さんは左の太もも、母さんは右の鎖骨の上だった。 ……お尻じゃなくてよかったって思った。 右手に、発光しながらゆっくりとコアが浮かび上がってくる。 この光が落ち着くと、コアの色が定着し、めでたくコア定着完了、となる。 お尻で踏んだから色は分からない。どんな色だろう。 右手の甲に完全に浮かび上がったコアは、最後の光を出し終えて。 僕が希望した、何の色にもならなかった。 丸く浮かび上がるコアに、色はない。 ……って言うか……。 もしかして、ベージュ色? これ。 肌に紛れて色が分からない程、淡い淡いベージュ。 火の赤でも、空の青でも、木々の緑でもない、ベージュ色。 いや、色としては好きだよ? 無難だし、なんにでも合わせられるし。 だけどさ。 ベージュって色で何かすごい力を想像できる? ああ、これは友達に笑われる。「よりによってベージュかよ!」って笑われる明日が目に見える。 どうせならお尻に出れば見られずに済んだのに……と思って、悪友が見せてみろと制服のズボンを脱がそうとする構図が浮かんで、クラスメイトの前でお尻を出すよりはマシか、と、明後日の方向で自分に納得させようとしたけど、全部うまく行かなかった。 笑顔で待っていた家族は、しょぼくれた僕に不思議そうな顔をしたけど、コアの色を見てすぐに分かった。
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第3話・広がる噂
 どんなに嫌だ嫌だと思っていてもバレる日は来る。特別に嫌な事なら絶対に。 誕生日の次の日が月曜日で、僕は友達に取り囲まれ、どんなコアを手に入れたのだと聞かれ。 僕……丸岡仁のコアが、限りなく無色に近いベージュだったってことは、学校中に知れ渡った。 翌日には、ひそひそ声があちこちから聞こえてきた。「あいつのコア、ベージュだったんだってよ」「ベージュ? マジかよお」「嘘だと思うなら見せてもらえよ。俺、笑えるどころか泣けて来たよ」「何か使える力とかあんのか?」「ベージュで何か連想できるかよ」「あ、美白とか」「それB組の武田が言ったらしいけど、何にも起きなかったとか」「それどころか、別のコアも手に入らないんだぜ? あのコア一つで一生送るんだぞ」「高校受験、どうすんだろな……」「職に就けるかどうかわかんねーしな……」 みんな、一度は笑い、その後、気の毒そうな表情で僕を見た。 何せ、コアは将来に大いに関わってくる要素なんだ。 コアの色で職の向き不向きも出てくるし、特定の職業では色が違ったら採用されない場合もある。コアの色や、コアの力で将来が決まってくる。 なのに僕のコアは色は死ぬほど地味で、三日目の現在、何の力も発揮していない。日焼けに悩んでいるB組の武田さんにどうにかならないかと言われてコアの力を使えないかと努力はしたけど、武田さんの小麦色の肌は薄れもしなかった。美白の力が使えればまだ女の人相手の仕事をできたかも知れないのに。そうすればまだ僕の将来も……。 はあ、と大きくため息をつく。 僕の第一志望高校は日本弧亜学園高等学校。日本で数ある高校の中でも、コアの使い方を教えるのが一番うまい高校と評判だ。 学力は問題ない。内申書にも問題はない。 ただ、弧亜高校には秘密の試験がある。 どんな内容かは知られていない。 合格者は固く口留めされる。落第者は恐らくコアの力で試験の内容を忘れてしまい、思い出せない。コアを使うとしか知られていない秘密の試験と呼ばれるそれが、学力より面接より重要なのだという。 僕の、何ができるかすら分からないコアで、そんな試験を突破できるんだろうか。 去年部活の先輩が弧亜を受けて落ちていた。 赤色に近い黄色と言う色合いで、太陽の光を強めたり弱めたりしようと訓練もしていてある程度うまく行
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第4話・将来性
 僕は、ごくごく普通の中学生だった。 平凡の中の平凡、キング・オブ・平凡。 勉強はできる。 でも、勉強ができるかどうかは平凡にはあんまり関係ない。 影が薄い。気が弱い。陰キャラ。テスト前だけ思い出したように友達が増えて、僕のノートをコピーして、去っていく。 これで目立つ存在だったらびっくりだ。 でも、そんな地味な人生をひっくり返せるのが、コアって存在だ。 色のはっきりしたコアをゲットできれば、それだけで人生は上昇気流。 少なくとも周りの見る目は変わる。 日本だったら、それまで最低ラインをうろうろしていた成績の中学生がいきなり最難関の高校を受験できることになるのがコアってやつだ。 僕も、思ってたんだ。そんな一発逆転を。 明日、目が覚めたら、僕の人生が変わる。 誕生日の前の晩、僕はそう確信して、嬉しくて眠れなかったんだ。 そうして、人生は変わった。 マイナスの方に。 コア一つで。 色なら他に色々あるだろ。何で、淡いベージュなんだ。これならまだピンクとかの女子色とかならよかった。それならまだ発揮する力を想像することができる。 ベージュなんて、僕が真っ先に想像したのが自分の肌の色だった。 そして、これまで様々な色のコアがついた場合のシミュレーションをした頭の中に、このコアがどんな力を発揮するか、思いもつかなかった。 右手の甲にくっついてるコアは僕の肌の色に紛れて、おできでもできたかのように膨らんでいる。 どんなに努力しても、コアの色は変わらない。そして、新しいコアを手に入れることはできない。このコアと一生付き合っていくしかない。 高校受験はあと九ヶ月。 何とかそれまでに、このコアで発揮できる能力を見つけないと。      ◇     ◇     ◇     ◇ うん、まあね。 努力はしたよ? 例えば、怪我を治すとか、痣を消すとかの皮膚系とか。 心を落ち着かせたり、穏やかにさせたりする精神系とか。 とにかく、色の意味を調べて、いけそうなワードを念じてコアに意識を集中させ、その力を発揮しろ、と念じた。 けどね、どれもダメだったんだよ。 ベージュ色、というだけなら、まだ前例はいくつかあった。 だけど、肌に紛れてしまうまでに淡くて薄いコアは、今まで、何の力も発揮しなかった。 コアの発動させ方は、コアを宿した人間が本能
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第5話・道交法違反中学生
 僕は、当初の志望通り弧亜学園高校を受験することにした。 記念受験ってやつだ。 せめて筆記試験だけでも合格点を取りたい。 もしかしたら受験中にコアが何が起こすかもしれない。 そんな、コアの色より淡い期待を持って、受験会場に向かった。 親は、受験費がどうとか何も言わなかった。 家を出る時、お父さんは僕の肩を叩いて一言、「納得するまでやってこい」と言った。学校の先生みたいに、無駄なことを、とか、諦めろ、とかも言わなかった。 それが、本当に、嬉しかった。     ◇     ◇     ◇     ◇ 弧亜学園高校の受験会場は、当然ながらその学校。 時間にはかなり余裕をもって出てきたので、自分の淡いコアを見ながら、何か力は出ないかと、意識を集中して見たり、本能的に知っているはずなのに僕には分からない力の発動方法を考えたり、とにかく最後のあがきをしていた。 その時、背後から空を切る気配がした。 振り返ると、ものすごい勢いで飛んでくる……人間がいた。 コアの色と力の使いようによっては、空を飛べたり自動車より速く走れたりする。そう言う能力の持ち主は、コアの使い方、移動能力の安定、交通法規などを学んで、車道を地面または地面から二メートル以内の低空飛行で移動できる免許を持てる。 だけどあれ、どう見てもスピード違反だぞ。 車道の法定速度は五〇キロ。これは車も走者も飛行者も同じ。 あの飛行者は……ちょっと待て、自動車よりだいぶ早いぞ。警察がいたら捕まるんじゃ。 飛行者は歩道の横を歩く僕の横を飛びぬけて、急停止。いや、急停止もアウトなんじゃ。 そして、歩いて僕の所に近付いてきた。 そこで気付いたけど、相手も制服を着ている。見たことない制服だ。「あの……何か用ですか」「制服着てるってことは、この道歩いてるってことは、弧亜の受験生だな」「はあ」「俺は那佐中のスピードスター、彼方壮!」 彼方なる中学生は胸を張った。「今年の試験に合格するのはこの俺だ!」「……それじゃ、どうも」「待て待て待て」 面倒そうな相手だ、離れるに限ると道をそれて進もうとした僕の前に回り込んで、那佐中のスピードスターなる彼方壮は話しかけてきた。「お前も弧亜受けるってことは、相当なコア主ってことだよな。色はなんだ? 俺は白に近い青! 文字通り風
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第6話・コア、発動(?)
 そこへ、車のブレーキ音が聞こえた。 黒い高級車が止まっていて、後部座席から女の人が顔を出していた。「そこのあなた!」 女の人が彼方壮に向かって叫んでいた。「往来での理由ない他人へのコア攻撃は傷害罪になるわよ! やめなさい!」「安心しろ、このナマイキなヤツを吹っ飛ばすだけさ、怪我なんてさせねぇよ!」 慌てて振り向いた先で、目に見えないけど空気が塊になっているのが分かった。空気を塊にしているのは彼方。「ふっとべええええええ!」 風の渦が、僕を取り囲むように飛んできた!「飛んで消えな!」 咄嗟にカバンで頭を庇った僕の右手に、何か熱いものがあった。「ん?」 一瞬、掌を貫くような感覚が走り。 次の瞬間、風の渦は彼方壮めがけて飛んで行った。「うわっ」 彼方壮はもう一つ風の渦を作って、渦で渦を受け止めた。 何が起きたか分からない。 だけど、今がチャンスとばかりに、僕は前を向いて走り出した。     ◇     ◇     ◇     ◇  ばしゅうん! 二つの風の渦が潰れて消えた。「え?」 壮は、必死で中和しようとしていたコアを止めて、すぐわきに止まった車を見る。 若い女性が、高級車の後部座席窓を開けて、手を突きだしていた。「特別に、見逃してあげるわ」 女性は壮に向かって言った。「ただし、二度とこんなことをしたら、高校には入れない」 女性は窓を閉める。 何か叫んでいる壮を無視し、運転手に車を出すように告げる。「驚いたわね」「確かに」 運転手は相槌を打つ。「あの年であれだけの風を操れるとは……」「あら、私が驚いたのは、彼じゃないわ」「え」 運転手は運転しながら問い返してきた。「もしかして攻撃された側の少年のことですか」「そうよ」「私はてっきり貴女があの少年を守ったと」「あの少年は間違いなく自分の身を守ったわ」 女性は車窓を流れる景色を眺めながら続ける。「やっと見つけたのかもしれないわね……最後のピースを」     ◇     ◇     ◇     ◇ あれだけのエネルギーを無力化するには結構時間がかかるはず。 少なくとも僕が学校に辿り着くまでの時間は稼げる! 彼方壮が追いかけてくる前に学校近くまで辿り着けるはずと、僕は走った。 走りながら、僕は右手の甲を見る、 何もなってない。 た
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第7話・本気の記念受験
 辿り着いた弧亜学園は、そりゃあ立派な校舎だった。 先代の学園長が私費を投じて建てたって言うこの学園は、コアの強さだけでなく、扱いに長けた卒業生を大勢、政治や法律や上級公務員、もっと夢のある所で言えばアイドルやスターなどの芸能界、エンタメ系にも、とにかく色々な方面に送り出している超名門校。 記念受験だけでも人気者になれる。 だけど。 僕は本気だったんだ。 コアをゲットする前から、高校は弧亜って決めていて、その為に筆記試験も頑張った。模試でも合格圏内に入り、後は強いコアをゲットするだけだった。 はあ。 校舎を見上げてため息が漏れ、地面に目を向けてため息がまた漏れる。 せめて、記念受験だと思われないよう、一次試験……筆記試験だけでも頑張ろう。 受験票を提示して、僕は案内されるまま、憧れの高校に足を踏み入れた。 午前中に行われた筆記試験は、よかった、と思う。 自己採点で十分合格点は取れてた。 でも、筆記じゃない。本当の試験はここから……昼から行われる二次試験、いわゆる秘密の試験だ。 休憩時間、学校の食堂に集められた受験生はピリピリしていたけど、僕は食欲もなく、お母さんの作ってくれた弁当を箸先でつつくだけだった。 時間も終わりそうになって、結局ぐちゃぐちゃにしただけの弁当箱を片付けている時、後ろから声が飛んできた。「おい、そこの……貴様!」 誰だよ、中学生で貴様なんて人のことを呼ぶのは……。 と思って。聞き覚えのある声だと顔を上げる。「コアを使っておきながら自分だけ逃げ出すなんて、最低の男だな」 やっぱり。交通違反の。 名前は、確か。「彼方、壮、くん?」「フン、最低でも最低なりに人の名前は覚えてたか」 そりゃあね。 受験日に交通違反とコア使用法違反に引っかかりそうな知り合いなんてそうそういないし。 相手の顔を初めてまともに見る。 背も高くて顔もいいのに、切れ長の三白眼が彼を威圧的に見せてる。うん、なんて言ったらいいかわかんないけど……僕の正反対の位置にいる? みたいな外見。 こんな性格だから三白眼なのか、三白眼だからこんな性格になったのか。「貴様が合格することは、ない! 俺が合格するんだ!」「うん、君は合格するだろうね」 警察にバレなきゃ、と心の中で付け加える。「そして貴様が落ちることもな!」 好きにしてくれ
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第8話・秘密の二次試験
 連れて行かれたのはだだっ広い階段教室。 三段目と五段目に、僕らは番号順に二列に並ばされた。 一番下の教卓には、何人もの試験官が座っている。 何をしろって言うんだろう。「えー、では、二次試験を開始します」 大人の一人が声を上げた。「これから、私の言うとおりにコアを使ってみてください」 あ、こりゃダメだ。これ僕落ちるヤツ。「まず、コアの色を全身に行き渡らせるようにしてください。イメージとしては、自分がコアの色に染まっているような感じで」 あはは、普段からコアと同じ色だよ……。 チラリと受験生を見る。 浅緑に染まっている人もいれば、目だけが紫になっている人もいる。髪の毛が群青になっている人もいる。「一六五番、一九〇番、失格!」 うまく全身染まっていない人が、容赦なく切られていく。「一五三番、一六六番、一五一番、一七九番、失格!」 どんどん落とされていくけど、何色にもなっていない僕……一八三番は、何故か、呼ばれなかった。     ◇     ◇     ◇     ◇「一八三番は何をやっているんだ」 受験会場から離れた、会議室。 受験会場に失格の指示を与えながら、試験監督の和多利は、何故か何色にもなっていない一八三番の失格許可が下りないことに、自分の後ろを見た。 判定役は、まだ、と首を振る。 そして、監督に告げた。「それは……本気、なのですか?」 判定役はもう一度頷く。「分かりました」 試験監督はマイクで会場の試験官にひっそり指示を与えた。     ◇     ◇     ◇     ◇ 呼ばれた人間が試験官に連れられて泣きながら教室を出て行くのに、僕はまだ呼ばれない。 もしかして、今の状態で染まっていると思われてるのか。いや、それはないな。コアの色は受験届を出す時に申請してるんだから。 まあ、こんな試験だったら確かに練習すればできそうだから、秘密になってるのかな……。 ぼーっと突っ立っていたら、急に右手が跳ね上がった。 僕の意思を無視して。「え?」 はっと顔をあげると、目の前に、水が。 誰かの出した水が、僕めがけて飛んできた。 避けるか。いや無理。 濡れるのを覚悟した時、また右手の甲を上から下まで貫く感覚が襲った。  ぎゃんっ! 僕に向かっていた水が、真っ直ぐ跳ね返って、試験官の一
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第9話・どうして?
 残された二人で、案内されて教室から出る。 部屋から出された失格者の姿は何処にもない。 信じられない。 コアを操ることが上手く行っていなかったのに、どうして合格したのか。 僕に向かって飛んできた水がどうして僕じゃなく反対方向にいる試験官に浴びせられたのか。 合格者は五十人中二人。……僕よりずっとはっきりした色を持っていた受験生もいたのに、どうして。 どうして、どうしてと頭の中で繰り返しながら、別室に通された。  別室にいたのは、五人だった。 僕たちを合わせて、二百人中七人になる。 この調子だと、千人は受けるって噂だったから、二次試験を通るのは三十五人くらい……? その中には、あの彼方壮もいた。 一番端の席に座っていたヤツは僕の顔を見るなり立ち上がってやってこようとしたが、案内の人に止められた。「自分の席から動いてはいけません」「んだよ、立ったら落ちるってわけじゃねーんだろ?」「落ちます」 その一言に、教室中が静まり返った。「試験官の指示に従えない受験生は、受験資格を剥奪されます。それでも、と言うのであれば止めはしませんが」 彼方は舌打ちして椅子に座り直した。「怖い人だね」 僕と一緒に合格した一七四番の女の子が、こそっと話しかけてきた。「なんか、あった?」「関係ねーだろ貴様はよぉ!」 小さな声を彼方壮は聞きつけたらしく、椅子の向こうから威嚇してくる。……僕に無免許飛行の上コア使用法違反をバラされたらヤバいと思ったんだろうな。 んー、と女の子はあごに指を当てて少し考えて、言った。「私、渡良瀬瑞希。北谷中学。あなたは?」「丸岡仁。鹿子木中学」「女には名乗るのか貴様はよぉ!」「彼方壮さん」
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第10話・言いたかった言葉
「すごい試験だったね」 顔を近づけてきた渡良瀬さんは、なんか甘い、いい匂いがした。 あ、ヤバい。心臓がばくばくしてる。 女の子と話すなんて、テスト間近のノートを貸してくれって時しか話したことなかったから。しかもこんなに可愛く、僕に笑顔を向けてくれる女の子なんて、今までいなかったから。 落ち着け……普通に、普通に返事するんだ……。「……うん」 一言。なのに、その一言を言うのにどれだけ緊張したか。「すごかったね、君のコア」「……え?」 予想外の言葉に、今度こそ僕の声はひっくり返った。「ど、どこが?」「すっごく青く染まって、水を跳ね返してたじゃない。あの一瞬だけだったけど、本当に、綺麗な青だったよ」「……青?」 彼女には僕が青く染まって見えたんだろうか。 聞いた僕に渡良瀬さんは笑って頷いた。「そう、青。基本色の青に近かった。深い海みたいな。いいなあ、基本色のコア……」「ちょ、待って待って」 僕は右手を突き出した。「僕のコア、これなんだけど」「え?」 今度は渡良瀬さんの声がひっくり返る番だった。「……ベージュだね」「うん。淡いベージュ」 渡良瀬さんが髪をかき上げてコアを覗き込んでくる。ヤバい、近い。「そ、それに、今まで、力らしい力は、発揮したことがない」「実は別コア持ってるってのは?」「ない」 僕は吐き出すように彼女に言った。ずっと吐き出したかった言葉を。「だって、コア医に言われたんだもん、このコアにキャパ食われて、新しいコアは宿せないって」「本当、に?」 本当だと頷く。 僕の右手の甲を見て、渡良瀬さんは首を傾げた。「でも、確かに見たよ。そのコアが青く光って、丸岡君の全身がすっごく青になって……ああ、こりゃ私落ちたって思ったもん」「そんな……」「……ていうかさ、そんなコアで受験したの? 記念受験?」「このコアを宿すまでは本気だった」 九ヶ月の無駄な努力を思い出して、僕は項垂れた。「筆記も頑張った。どんなコアを手に入れても操れるようにってイメージトレーニングも散々やった。でも、淡いベージュなんてイメージの範囲を越えてた。何をしてもうまく行かなかった。ここを受けたのは、せめて筆記だけでも、頑張ったって証を残したかったんだ」 ああ、ずっと愚痴りたかったんだな、僕。 家族は僕に色々やってくれたから、言え
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