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第2話

مؤلف: 一時
俺は彼女の後についてマンションに入った。

見慣れた内装、落ち着いた色調のシンプルなデザインは、気高く人を寄せ付けない彼女自身をそのまま表しているかのようだった。

ただ今は、かつて感じていた胸のときめきは、微塵も湧いてこなかった。

彼女は冷蔵庫から水を取り出して俺に投げ渡し、自分はフランス窓の前に立って、スリムタバコに火をつけた。

青白い煙が立ち上り、まるで濃い霧のように、俺たち二人の間を隔てた。

「要、あなたが納得いかないのは分かってる」

彼女が口を開くと、煙越しに届く声はどこか沈んでいた。

「身元の件は、私のやり方が悪かったわ。でも今、勲の精神状態がすごく不安定なの。彼は……これ以上の刺激には耐えられないわ」

また、勲か。

俺は目を伏せ、キャップをひねり、水を一口飲んだ。

冷たい水が喉を通っていったが、心の奥底で渦巻く苦味を抑え込むことはできなかった。

前世でも、彼女は同じことを言った。

勲は幼い頃から自傷癖があり、精神が脆いから、宮本家に戻ったあとは彼のことを大目に見てやってほしいと。

俺は言う通りにした。

恵美からの愛情も、すべて彼に譲った。彼が何度理不尽な挑発をしてこようとも、俺はただ身を引き、沈黙を貫いた。

それなのに彼は、「自殺」という手段を使って、俺と恵美の結婚生活に10年も及ぶ地獄を背負わせた。

俺が黙っていると、恵美はまだ俺が宮本家に戻れないことを拗ねているのだと勘違いし、ため息まじりにタバコを消した。

彼女は振り返って俺の前に歩み寄り、ソファに座る俺を少し見上げながら、宥めるような視線を向けてきた。

「もう怒らないで、ね?」

彼女はひどく優しい声を出し、俺がペットボトルを握っている手に自分の手を重ねた。

「認めるわ、今日は私の確認不足で、あなたをぬか喜びさせちゃった。

お詫びに何が欲しい?何でも言って、私にできることなら、全部叶えてあげるから」

一度言葉を切り、彼女の声がわずかに強くなる。「でも今は、宮本家のことは一旦忘れましょう、ね」

彼女は下手に出て、その瞳からは溢れんばかりの愛情が注がれていた。

痛いほどよく分かる。彼女は本気で俺が怒るのを、俺が離れていくのを恐れているのだ。

だがその愛情は、俺が「本物の御曹司」であることを手放す前提の上に成り立っている。

顔を上げ、彼女と視線を交わした瞬間、ふいに笑いがこみ上げてきた。

「欲しいものなんて、何もないよ」

俺は静かに自分の手を引いた。その瞬間、彼女の瞳がわずかに濁った。

「安心しろ。たとえ宮本家が全財産を積んで俺に戻ってきてくれと土下座しようが、俺は見向きもしない。

君が謝る必要もない。君は俺に何も借りはないんだから。俺たちの関係も、これで終わりにしよう」

恵美の眉がキツく寄せられ、彼女は勢いよく立ち上がった。その顔が瞬時に氷のように冷たくなった。

「終わり?要、私に意地を張ってるつもり?宮本家に戻らせてあげなかったからって、そんなやり方で私を脅す気?」

彼女は身を乗り出し、俺の両脇のソファに手をつき、その気配ごと俺を包み込んだ。

「私はただ、宮本家に戻るなって言っただけで、別れるなんて一言も言ってない!私は今まで通り、ううん、今まで以上にあなたを大事にするから!」

彼女を見つめていると、ひどく疲れを感じた。

彼女は、俺から「宮本家の実の息子」という身分さえ引き剥がせば、俺たちは何事もなかったかのように愛し合えると思っているのだ。

だが彼女は、悲劇の根源が俺が宮本家に戻るかどうかの問題じゃないことを分かっていなかった。

「恵美」俺は彼女を押し退けて立ち上がり、距離を取った。

「疲れた、帰るよ」

そう言うと、俺は彼女を見ることなく、まっすぐドアへと向かった。

今回、彼女が引き止めることはなかった。

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