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第6話

Penulis: 小粒キャンディ
一花が車のほうへ数歩近づくと、男が車から降りてきて後部座席のドアを開けた。

その男は前回、一花に名刺を差し出してきた人物だ。しかし、この日彼は制服を着用しておらず、シンプルな黒のスーツにサングラス姿だった。その雰囲気は前回よりもだいぶ和らいだ印象だった。

一花は微笑み、車に乗り込んだ。

相手は恐らくわざわざ彼女を迎えに来たのだろう。車の中には二人しかいなかった。

「すみません、あなたは……」

「私は柊馬様の秘書です。私のことは来栖とお呼びください」

一花がそう言っただけで、相手は彼女が何を聞きたいのか理解した。

「来栖さん、どうして伊集院柊馬さんは私を政略結婚相手として選んだのですか?私は彼と知り合いではありませんよね?」

一花は探るようにそう尋ねた。

彼は口を開いた。「柊馬様のプライベートな事は私も分かりかねます。しかし、彼は帰国したばかりですので、恐らくあなたとはお知り合いではないかと」

「じゃあ……」一花は少し考えて、やはり気になって尋ねた。「伊集院さんはどんなお顔をしていらっしゃいます?」

彼は謎に包まれた人物で、あまり人前に出ないということだ。まさかかなりのブサイクだとか?

政略結婚ではあるが、もし相手の見た目が悪いのであれば、彼女も心の準備が必要だ。

その言葉を聞いて、来栖は思わず笑い出してしまった。

来栖湊(くるす みなと)は柊馬の傍に長年仕えている秘書だ。今まで柊馬の容姿を心配するような女性など現れたことはない。

しかしすぐに彼は真面目な様子に戻った。「柊馬様のお顔に関しましては、私には評価できるような資格はございません。後ほどご自身で会ってご確認ください」

どうやらかなりの確率で彼の容姿はイマイチのようだ。期待しないでおこう。

そして少し経って、車はある豪華な外国風の建物の前に止まった。

そこは市内ではあるが、少し辺鄙なところにあるので人に気づかれにくい。

湊から、ここはある有名な個人レストランであると教えてもらった。会員でないとここに来ることができず、今日のディナーのために柊馬がこのレストランを貸し切ったらしい。

一花がレストランへ入る時、湊が入り口に立っているボディーガードを下がらせた。そして店員が彼女をある静かな個室へ案内した。

「伊集院さん?」

個室の中は、豪華なシャンデリアがキラキラと輝き、スラリと背の高い後ろ姿を照らしていた。

一花が相手が彼なのか確かめるように呼びかけてみると、すぐに一度見れば忘れられないほど魅力的な顔が瞳に映った。

目鼻立ちの整った、まるで彫刻のように端正な顔立ちの男が、そこにはいた。

男の鋭く冷たい声が聞こえるまで、一花は彼に見とれていた。「ええ、西園寺さん。どうぞ座ってください」

「……あ、はい」

その瞬間、彼女はすぐに目線を元に戻した。慌てていて優雅さを保つことなど忘れてしまっていた。

容姿が悪いわけじゃなかったのか?

「どうしました?俺の見た目が悪かったですか?」

一花が顔を下にして自分を見ようとしないので、柊馬は思わずそう尋ねた。

男からは圧倒的なオーラが感じられる。

一花はすぐさま首を横に振った。「いいえ、そんなまさか。とてもカッコイイです。整ったお顔をされています」

今まで彼ほどのイケメンなど見たことがない。

慶は大学で一番のイケメンで、その容姿は俳優やアイドルにも負けないくらいだ。彼は現実世界で最もカッコいい男だった。

一花はそんな慶を長年見続けてきて、だいぶ目は肥えているといえる。

しかし、この伊集院柊馬という男は、この世のものとは思えないほど神レベルの容姿だ。

ここまで自然で完璧な容姿なら、神様でも思わず見とれてしまうだろう。

「どうも」柊馬は少し首を傾げて淡々とした口調で言った。「あなたのほうこそ、とてもお綺麗ですよ。その服はとてもお似合いですね」

「プレゼントしてくださって、ありがとうございます」

一花は微笑んで、顔を上げ柊馬と目を合わせた。この男は想像していたほど付き合いづらい人間ではないようだ。

「ついでに買っただけですから、贈り物とは言えません。もし、あなたが好きな物があれば、今後はいくらでもプレゼントしますよ」

柊馬は相手を考慮した気遣いのある話し方をしていて、聞いていて心地が良かった。

ただ、常に冷たい印象があるから、非常に距離感を感じられるだけだ。

それから二人は少し話をして、柊馬の合図で食事を始めた。

ここの料理は一品ずつ運ばれてくる。非常に綺麗に盛り付けてあり、一品は一口で食べるような少量ずつだった。どれも絶品で、奥深い味わいがあり最高だった。

一花にとっては、一品ずつゆっくりと食べていくスタイルなので、お腹が満たされるのも時間がかかった。

そして、この長い食事の間、柊馬も何も言わず、ただ静かに彼女と向かい合っているだけだった。

二人はこの日初めて会ったので話が少なくても仕方がない。食事をする手は動かしているものの、互いに黙っているから気まずさが流れていた。

気まずいが、勇が言うには柊馬は他人に対して厳しい人間であるらしいから、彼が何も話さなければ、彼女もなかなか口を開くことができなかった。

メイン料理を食べ終え、デザートが出された時に柊馬がようやく口を開いた。「ここの料理はお口に合いますか?」

「ええ、とっても美味しいです」

一花は口に運ぼうとしていたデザートをすぐにまた下ろした。

一花は料理への評価がかなりお子様のように感じて、耳が少し熱くなるのを感じた。そして少し考えて、また付け加えた。

「伊集院さんは美味しいお店をよくご存じなんですね。選んでくださった料理も全て特徴があって、食材本来の味を生かしつつ、深い味わいがあります」

一花の言葉を聞いて、柊馬は顔を下に向けたので、どのような表情をしているのか分からなかった。

さっきの評価の言葉は拙すぎただろうか?

しかし、一花もグルメ研究家でもないし、このように高級なレストランで食事することも滅多にないから、語彙力には限りがある。

「もし、西園寺さんのお口に合わなかったようであれば、次は他のレストランにお連れしましょう。あなたに決めていただいて結構ですよ」

「いいえ、私は好きです……」

一花は慌てて否定するように手を左右に振っていた。しかし、柊馬が本当かどうか疑うような目つきをしているので、また口を開いた。

「ここの料理はとっても美味しかったです。本当に好きなんです。ただ、私はあまりこのような高級レストランには来ないし、初めて伊集院さんとお会いしたので、少し緊張してて。

次回はもう少し気軽に行けるようなお店だったら、私たちももうちょっと話が弾むかもしれません」

彼女はやはり自分の気持ちを率直に話すことにした。

どうせただの政略結婚で、本気で恋愛しているわけではないので、自分の気持ちを伝えることが一番重要だと思ったのだ。

「分かりました」

柊馬は頷き唇を閉じた。相変わらず感情の読めない表情だった。

「ただ、俺は口数が少ないので、あなたと何を話せばいいのか分からないんです」

「そんな感じします」一花は笑った。

この時、柊馬は少しリラックスしたようだった。そのスラリとした長身で後ろにもたれ掛かり、黒のシャツに少し皺ができた。するとそのスタイルの良さがさらに際立った。

「西園寺家の幸雄おじい様から聞きましたが、結婚の件は同意されたそうですね?」

「ええ」

一花は頷いた。

「うちはとても伝統を重んじる家系です。婚約してから結婚するまで、必要な流れは全て行うつもりです。

俺は最近少し忙しいので、そのせいで慌ただしく適当に済ませることはしたくないんです。それで、西園寺さんには数日待っていただかなければいけないでしょう。もちろん、あなたに何か要求があれば俺に言ってください」

「問題ありません。全て、伊集院さんのほうで決めてください」

「分かりました」

一花が迷いもせずはきはきと答えるので、柊馬はとても満足している様子で頷いた。

そして彼は腕時計を確認した。「こんな時間ですか、今日はそろそろ……」

「伊集院さん、私の身の上もきっとご存じだと思います。あの、どうして私と政略結婚することにしたのか、お伺いしてもいいでしょうか?」

「俺は、西園寺さんの財産や西園寺家に関しては全く興味はありません。もうこんな年齢なので、そろそろ結婚すべきだと考えたんです。西園寺家は確かに良い結婚相手だと思いましたので」

柊馬は一目で一花の意味を理解したようだ。

確かに、一花は相手が自分を選んだのは兆を超える遺産と関係していると思っていたのだ。

しかし、ここへ来る前に一花も伊集院家については調べていた。伊集院家の資産も聞くだけで相当驚愕してしまう額だった。それに周りに影響を与える力も持つ一族だ。莫大な資産を持つ多くの企業ですら、彼らと友好関係を築こうとしてもなかなかできないものだ。だから、柊馬がただ利益だけで結婚を決めたとは考えにくい。

「ご家族から催促されたんですか?」

「まあ、そんなところですね。

ただ、俺は言うことを聞いてくれて、何をするのも俺に合わせて支えてくれる妻が必要なだけです」

柊馬のその言葉で一花はどういうことなのか分かった。

慶が当初一花のことを口説いていたのは、彼女が言うことをよく聞く女だったからだ。彼女は孤児で、頼りになる家族はいないから。

一花はいたって冷静に柊馬を直視して言った。「私は西園寺グループの後継者です。西園寺家はここ南関での基盤が厚い。もし、伊集院家がさらに勢力を拡大させたいのであれば、大きな手助けとなるはずです。でも、私は最近になって西園寺家の人間であることが分かった隠し子。たった一人で闘うには脆いでしょう。

私とあなたの政略結婚は、伊集院家にとって利益を増やすための手段でもあり、私にとっては強い後ろ盾が得られることになります。お互いに得られるものがあって、ウィンウィンの関係になれますよね」

それに対して柊馬は返事をしなかったが、微かに頷いていた。つまりそういうことなのだろう。

柊馬は忙しい身だ。二人がレストランから出てくると、彼のもとへある人が近づき、空港へ行く時間だと伝えた。

一花はその場の空気を読んで、すぐに柊馬には自分でタクシーを拾って帰るから、送ってもらう必要はないと伝えた。

柊馬は特に返事をすることはなかった。相変わらず礼節をもって一花をまずは車まで連れていき、彼女が車に乗るのを見届けてから、去っていった。

そして帰る途中で、勇から電話がかかってきた。

彼は一花と柊馬の二人が今夜初対面することを知っていて、どうだったのか状況を尋ねてきた。

一花は正直にありのままを伝えた。二人は、まあ和やかに交流できたはずだ。

何か気になるところがあるか聞かれれば、それは柊馬が圧倒的なオーラを放っていて、彼の傍にいるとどうも圧迫感があるくらいだ。

深夜、一花がちょうど風呂を済ませて出てきた時、携帯が光った。

彼女が電話に出ると、すぐに慶の声が耳に飛び込んできた。「一花、もうこんな時間なのに、どうしてまだ帰ってきてないんだ?何かあったんじゃないのか?電話にも出ないし」

一花は携帯を耳に当ててはいるものの、全く彼の話を聞いていなかった。

この時、彼女の視線は窓の外に映る夜景に釘付けになっていたのだ。自分がここを選んで正解だったと、思わず感動していた。

「一花?」

慶の声はどんどん焦ってきた。

するとようやく一花は我に返った。「ああ、今日は顧客に会いに行っていたの。ちょっと遠くだから、ホテルに泊ってるのよ」

一花は自分が引っ越したことを、慶はすでに知っているものだと思っていたのだが、彼のその口ぶりではきっと綾芽のほうに気を取られていて、まだ気づいていないのだ。

それならば、一花は適当な嘘をついておくことにした。

「ホテルは慣れないだろ?それじゃ、俺が迎えに行こうか。場所を教えてくれないか」

慶はホッとしたらしく、さっきとは打って変わり関心を寄せる声になっていた。

「いいの、今日はとても疲れてるから、動きたくないわ。もうこんな時間だし、私、もう休むわね」

慶はそれを聞いて無理強いすることはできず、ただこう言うしかなかった。「分かったよ。明日会社でな」

一花はそれに「ええ」と一言被せて電話を切ってしまおうとしたが、慶が再び話し始めた。

「一花、君に会いたいよ。君もそう思ってくれてる?」

「……」

電話の向こうが暫く沈黙しているので、慶が再び口を開いた。「一花?」

「もう寝るわ……すっごく眠くて……」

一花はわざと声のトーンを低くして、ウトウトしている様子を演じていた。

慶はどうしようもなく、名残惜しそうに言った。「分かったよ。おやすみ、じゃあね」

「ええ」一花はそれだけ返事し、一秒も迷わずさっさと電話を切ってしまった。

「……」

そのあっさりと電話が切られる音に、慶はなんだか虚しさを感じていた。

ここ数年、彼は一花に甘い言葉をかけ、優しく接してきた。これはかなり前から演じてきたもので、今では常態化している。しかし、今まで一度たりとも、一花になんらかの感情を抱いたことはない。

しかし、この数日、どういうわけか彼は一花のことがどうしても気になりソワソワしていた。

「慶、私のこと、好き?」

慶がハッとした時、細い腕が彼の腰に巻きついてきた。

綾芽だ。

彼女はやわらかい声で、まるで羽根のようにふわりと撫で、一瞬で彼の気持ちを虜にしてしまった。

慶は微かに口角を上げ、すぐに彼女の手をぎゅっと掴んだ。「そんなこと聞くまでもないだろ。君は俺の人生で最も愛する女性だよ。君のためだったら、どんなことでも厭わない」

確かに、綾芽は彼が心の底から愛している女だ。

16歳の時、彼女に命を救われてからというもの、一生彼女には何の憂いもなく幸せに過ごせるよう守っていくと彼は心に決めたのだ。彼女とともに白髪になるまで末永く永遠に。

「だけど、私不安なの」
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Komen (1)
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kozakura hime
またまた良くある命を救われたパターンですか それで男を繋ぎ止めて子供を出しに上流階級に 入り込もうとするババアみっともない
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