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last update publish date: 2026-08-22 19:53:28

第6章

「あ……あんた、ディランの恋人じゃないの?」

私は眉をひそめ、片方の肩を気だるげにすくめた。「彼の恋人に見える?」皮肉を込めて言い放つ。私の答えに彼女の表情が険しくなるのが分かったが、そんなことはどうでもいいとばかりに無視した。

「ダニエル、言ったはずだ……それはブリエルじゃないって」と、もう一人の女性がたしなめた。人違いでなければ、彼女はモーリス・フォンタニジャだ。以前に一度会ったことがある。彼女の母親とは親しい間柄だった。

ダニエルは不機嫌そうに舌打ちをした。「どうやって見分ければいいのよ! 似てるじゃない!」

その言葉に私の眉が跳ね上がった。私は喉を鳴らして注意を引くと、背筋を伸ばし、自分自身を指さした。「私がブリエル・クラークソンに似ているっていうわけ?」信じられないといった口調で問いかける。

「ディランの恋人が誰だか知ってるのか?」アイヴァソン・フォンタニジャが、まるで私をじっくり観察するかのように尋ねた。私は怯むことなく彼の視線を受け止めた。

私は再び肩をすくめた。「当然よ。あなたの一族は有名だし、ブリエル・クラークソンも実業家の家系だもの。誰だかくらい知ってるわ」そう言って視線をそらした。

「も――申し訳ありません、お嬢さん」モーリスが緊張した面持ちで話し始めた。「従兄弟が激昂していたもので、彼女がブリエルだと思い込んでしまって。ちょっと雰囲気が似ていたものですから――」

「何ですって?」私は大げさに話を遮り、彼女に鋭い視線を投げ返した。「私がブリエル・クラークソンに似ている? まさか、絶対にありえないわ」

私は髪をかき上げ、大げさにため息をついた。そんなことを言われたのはこれが初めてではない。同僚たちメセも時々そう口にしていた。確かに、少しは似ているかもしれない。でも、いやだ。絶対に御免こうむる。

「私の方が彼女よりずっと美人だもの。ちょっと、みんな目でも悪いの?」私は目を回した。

彼らは顔を見合わせた後、声を殺して笑い出した。私の眉間が寄る。「私を笑ってるわけ?」止める気配のない彼らに、私は食ってかかった。

意外なことに、さっきまで私を睨みつけていたダニエルが、まるで私がコメディアンのステージでもやっているかのように笑いながら私の肩を叩いた。いったいどういうこと?

「いや、いや……気を悪くしないで」彼女は笑いながら言った。「その通りだわ。私の視力が本当に落ちてるみたいね」

せめてその言葉で、少しだけ気分がマシになった。

私は咳払いをし、姿勢を正した。「当然よ。今の発言は侮辱なんだからね」

あの女に対して激怒していなければ、私のことをうぬぼれ屋だと思っただろうが、私はただ真実を言っているだけだった。ブリエル・クラークソンとは高校時代からの知り合いだ。私が一年生で、彼女は三年生だった。当時から彼女がどんな人間だったか知っているし、これまでの様子を見ていても、彼女は少しも変わっていなかった。

私は首を振った。ディラン・フォンタニジャは信じられないほど不運だ。恋人の性格は最悪で、そのうえ浮気までされたんだから? やれやれ。不運が降ってくるとき、彼はよっぽどその直下に立っていたに違いない。

「とにかく、行かなくちゃ」私はさっきから彼らが呼び鈴を鳴らし続けている家を一瞥して言った。「あいつ、あなたたちを中に入げる気はないみたいよ。中にいるわ。おそらくあなたたちを避けてるの。今朝、ジョギングをしているときに彼女が帰ってくるのを見かけたから」

全員がその家の方をに向き直った。

「ドアを開けないなら、窓に石でも投げつけて――」ダニエルがそう言いかけた。

「ダニエル」他のメンバーが同時に遮った。

私はため息をついて腕を組んだ。「裏口があるわ。今朝そこを使っていたもの。一番小さな植木鉢の下に合鍵が隠してあるはずよ」

モーリスが眉をひそめた。「こんなこと聞くのは申し訳ないけど……どうしてそれを知っているの?」

「ジョギング中に見かけたのよ。誰も周りにいないと思って油断していたんでしょうね」私は冷静に説明した。「安心して、泥棒じゃないわ。私もこの近所に住んでいるもの」

近所に住んではいたが、ブリエルとまともに話したことはほとんどなかった。彼女は滅多に外出しない。偶然鍵を見かけただけだった。

「それなら、どうして僕たちを助けるんだ?」アイヴァソンが尋ねた。「僕たちが何か悪いことをしたら、君も面倒に巻き込まれるかもしれないのに」

私は彼を見上げた。彼の表情が変わり、まるで真剣に、何か意図を持っているかのように見えた。本当に理由を知りたがっているような。もしかして、急に私に興味を持ったの?

私は肩をすくめた。「彼女があなたの従兄弟を裏切ったんでしょ? 何をするにしても、彼女には相応の報いを受ける資格があるわ。浮気者にはお灸を据えなきゃ」

私は甘い笑みを浮かべた。

それきり彼は何も言わず、視線をそらした。私は思わずくすりと笑った。

「それじゃ、行くわね。何をする気かし知らないけど、がんばって」と私は言った。「彼女にふさわしい報いを受けさせてあげてね」

私はウィンクをして背を向け、歩き出した。

遠くへ行かないうちに、ダニエルが後ろから声をかけてきた。「待って! あなたの名前は? 自己紹介もまだだったし。今度一緒に遊びましょうよ」

ふっと柔らかい笑い声が漏れた。そんなことを言われるとは思っていなかった。

私は振り返らずに肩をすくめた。「ううん、私の名前なんてどうでもいいわ。秘密にしておきましょうよ」

その直後、私はタクシーを拾って止めた。彼らがこれから何をしようとしているのか興味はあったが、そこにとどまるほどではなかった。それに、私にはもっと大きな問題があった。これからの数日間、どこに泊まるのかという問題だ。

まるでタイミングを見計らったかのように、スマートフォンが震えた。アジエルから、現在地からそう遠くない住所が送られてきていた。歩いて行こうかとも考えたが、あたりは暗くなりかけており、私は一人だった。

車に乗り込む前、クラクソン家の裏手へと向かう従兄弟たちの後ろ姿が目に入った。気にかけているわけではない……ただ、彼らが違法なことだけはしないでほしいと願うばかりだった。余計なことに巻き込まれたくはなかったからだ。少なくとも、彼らは私の名前を知らない。

運転手に住所を見せ、シートに深く腰掛けた。そこでようやく、私は大きく息を吐き出した。

シートにもたれかかり、窓の外をぼんやりと眺める。

フォンタニジャ家の人々まともな人たちだとは思っていたが、私の周りでは決して居心地良く過ごせないだろうことは分かっていた。アイヴァソンの父親であるデイモン・フォンタニジャ検事は、私の父親の事件の担当検事だ。先月会ったが、親切そうに見えた……もっとも、それが本心なのか、それとも私に証言させるためだけの演技なのかは分からなかったけれど。

どちらにせよ、そんなことはどうでもよかった。

重要なのは、父親が刑務所に行くことだ。

そして、最年長の従兄弟であるディラン・フォンタニジャは、この事件を担当している警部補だった。

私は首を振って、思考を断ち切った。

ブリエルが彼を裏切ったということが、どうしても信じられなかった。いったいどんな理由で? 彼はほとんど完璧だったというのに。彼の従兄弟たちが激怒するのも無理はない。

「お客さん、着きましたよ」

私は考え事から現実に戻り、外を見た。アジエルが言っていたバーだった。なかなか……いい雰囲気の店だった。

料金を支払い、車を降りる。夜にもかかわらずすでに賑わっており、店は明るくライトアップされていた。私の眉がひそめられた。

本当にここで寝るっていうわけ?

私は背筋を伸ばし、エントランスに向かって歩き出した――が、警備員に制止された。

「申し訳ありません、お嬢さん。未成年の方の立ち入りはご遠慮いただいております」

私は無表情で彼を見つめた。「私、未くさいに見える?」

信じられないことに、彼はうなずいた。

私の目が丸くなった。私? 未成年?

「二十六歳だし、大学も卒業してるわ。未成年なんかじゃないもの」私はできるだけ落ち着いたトーンで言った。

彼はそれでも私をスキャンするように見つめてから、首を振った。「身分証明書を見せていただけますか?」

私はため息をつき、バッグを開けた。そして、動きを止めた。

「最悪」私は呟いた。

「生年月日を確認させてください、お嬢さん」

私はゆっくりとバッグを閉じ、申し訳なさそうに彼を見上げた。「あの……身分証明書を家に忘れちゃって」

「申し訳ありませんが、お持ちでないと通すわけにはまいりません。仕事を失いたくないもので」

苛立ちから軽く足を踏み鳴らし、髪に指を通した。家に帰るなんてことになれば、また説教を食らうことになる。アジエルのところに行くわけにもいかない。

「若いって自覚はあるけどさ」私は必死に頼み込んだ。「未成年じゃないの。ただ忘れちゃっただけなのよ。オーナーのことも知ってるし――ええと、名前は何だったっけ?」

私は記憶をたぐり寄せようと顔をしかめた。「うっそ、忘れちゃった」

どうしてさっきちゃんと聞いておかなかったんだろう?

「彼女なら知っている」

その声。

私は即座に振り返り、目を見開いた。

彼だった。

「彼女は未成年だ」と彼は冷たく言い放った。「中に入れるな」

「は? 未成年なんかじゃないわよ!」私は食ってかかった。

彼は片方の眉を持ち上げた。「そうは見えないけどな」

それだけ言うと、彼は私の横を通り過ぎ、群衆の中に消えていった。

完全に姿を消す直前、彼はほんの一瞬だけ振り返った。その瞳には何かが宿っていた。怒り? それとも私の気のせい?

私の唇が開いた。

彼は私に怒っているの?

「あ、そっか」私は呟いた。「浮気されたんだっけ」

私は拳を握りしめながら踵を返した。

「ディラン・フォンタニジャ」私は苦々しく呟いた。「あんたって、本当に厄介な男ね」

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