Masuk【先生、勉強することも他人を救えるのだ】【私は小さい頃から勉強が嫌いだったが、成績の良い人たちが羨ましかった。彼らはあんなに努力して、あんなに遠くまで来て、ようやく国内最高の大学に辿り着いたのに、誰も教えてくれなかった――そこには深淵が待っていたなんて!】【俺は三流大学の落ちこぼれだ。言いたいことがあるのに言葉にできない。でも何かを書き込みを残すべきだと思う】【一度でいいから勝たせてあげたい。僕はダメでも、彼は違う。彼は小さい頃からずっと羨ましいと思っていた、勉強ができるタイプの人だ。彼の失敗を見たくない】【内藤さん、君には前途洋々たる未来と、輝かしく壮大な人生がありますように】【少年よ、書き終えなかった詩集になるな。禁書の中で最も世間を震わせる一章となれ!】……正午12時、一の2つ目の投稿が公開される――10分ほどの音声ファイルだ。一は耕介の件で奈津のオフィスへ向かったが、ドアの外で彼女と真由美の会話を耳にしてしまった。一切の編集も加えず、叔母と姪の会話をそのまま投稿し、システム自動生成の字幕だけを添えた。午後1時、#B大学生実名で指導教員を告発#のタグがTikTok、XなどのSNSや動画プラットフォームでトレンド1位になった。大量のネットユーザーがB大公式サイトに殺到し、告発窓口を検索したため、B大学のサーバーがダウンしてしまった。B大学の公式アカウントも次々に炎上し、コメント欄は一のために、正義を求める熱心なネットユーザーで埋め尽くされた。休暇中だった学長たちは夜を徹して帝都へ戻り、学校に集まった。「上条め!上条奈津め!」彼女の名を口にするたび、偉い人たちはみんな歯軋りが止まらない。B大学の百年にわたる名誉も、最高峰の大学の栄光も、この一つの腐ったミカンで台無しだ!「責任を追及しろ!徹底的に追及しろ!学内掲示板で問題になった時、なぜ報告してこなかった!?今回の大学生コンテストも徹底的に調査しろ!はっきりさせられないなら、関係者全員が責任を取れ!」高齢の偉い人たちは、一晩中議論を続け、声が枯れるほど激しく言い争った。そして翌朝、ようやく正式なお知らせを発表した――「本校教員・上条奈津の学術不正等問題に関する調査処理進捗の報告」2月5日にネット上で本校教員上条奈津の学術不正等の
パチパチパチ――奈津が拍手する。「でも忘れてない?私はあなたの指導教員よ。私に何があったら、あなたは卒業できると思う?!」「師弟の縁があるから、今あなたがこれらのことは全部自分で仕組んだことだと宣言して、公開で私に謝罪すれば、もう一度チャンスをあげてもいい。何もなかったように、普通に卒業させてあげる」一は口元を動かした。「やると決めた時点で、後悔することなんて考えていない」彼の目は血走っている。明らかにここ数日は苦しかったのだろう。しかし今、彼の奈津を見る視線は鋭いものだ。「それに、心に手を当てて言える?告発資料に書かれたことが事実ではないと?」奈津は冷笑し、軽蔑の眼差しを向けた。「事実だったら?どうなるの?」「せっかくチャンスをあげたいと思っているのに、これじゃ私も師弟の情けなどを考慮しないからね」一は可笑しく思った。師弟の情けだと?奈津はいつだって彼を、呼べば来る犬のように扱ってきた。情けなどあったのか?彼女の目には、自分は人間に見えてすらいない。もちろん、彼は黙って耐え続けることもできる。6月まで耐えて、学歴証明書と学位証明書を手にしたら、奈津から完全に逃れられる。しかし耕介のような人はどうすればいい?耕介は最初の犠牲者ではないし、最後でもない。奈津に学生を指導する資格がある限り、被害者は次々と現れるに違いない。彼は耐え抜いて、ようやく自由になれるが、万が一残された人たちが耐えられなかったら?講義棟の最上階に上り、身を投げるしかないのか?そろそろ何かをすべき時だと、一は思った。自分のためでもあり、これから無数の人たちのためでもある。かつて、彼は凛の勇気に感服した。今、自分もあのような人間になれると思う!この会話は結局、不穏な空気のままに終わった。去り際、奈津は憎々しく一を警告した。「私がいつまでも我慢できると思うなよ。早く言う通りにしなさい。さもないと――時機を逃したら、跪いて懇願しても無駄よ!」……その夜、一は寝ていなかった。翌日、あるTikTokアカウントが投稿した――『B大学生命科学研究科生物情報学専攻上条〇津教授の学術不正行為を実名告発』(本文は125ページあり)著者:B大学生命科学研究科生物情報学専攻上条〇津教授研究グループ修士課程学生・内藤一。本
学而が眉を吊り上げた。「やれないこともないが、具体的なやり方は……まだ相談が必要だ」凛は思案している顔をする。急に、二人が同時に彼女を見る。「いや……」凛は笑った。「二人して私をじっと見つめて、どうしたの?」「凛さん、何か方法を考えてよ。一を助けよう。これは力に力を借りるってことで、早めに上条奈津を片付けて、後輩たちに迷惑をかけないようにするの」学而が頷いた。「あの女は今まで何度も僕たちを陥れたんだから、今回は借りを返してもらう番だ」凛の目がかすかに動いた。「早苗、一に電話して、こう伝えて……」……凛と学而の予想通り、スレッドが掲示板に上がった当初は、確かに話題になっていた。その後も噂は冷めず、書き込み数は10万を突破した。しかし学校側が反応せず、奈津側も沈黙のままで姿を見せない。新たなネタが出てこないから、騒ぎを見ていた人々は散り始めた。それに伴い、この件への注目もだんだん減っていく。予想通り、あと数日もすれば、この騒ぎは完全に静かになって、やがて忘れ去られるだろう。「ふん」奈津は事態の行方に注目していたが、まるで告発などされていないかのように、ずっと平然としている。さらに今、軽蔑混じりに笑い声を漏らした。逆に、真由美はそれほど冷静ではない。一の告発が出てから、彼女の精神はずっと崩れかけている。三日間、涙が止まることもなかった。頬は濡れては乾き、乾いては濡れ、常にスマホで掲示板を更新し続けた。自分への罵詈雑言の書き込みを見て、また涙が堪えきれなくなり、最後は泣き崩れて気を失った。奈津はそれを見て、思わず罵った。「情けない奴め!私はまだ死んでいないのに、何泣き喚いてる?!私を呪っているのか、それとも嫌がらせなのか?!」そう言うと、ソファに歩み寄って、気を失っている真由美を掴み上げる。髪が引っ張られた真由美は「いたいっ――おばさん」と声を漏らした。「痛いのがわかるの?もう死んだか思ったわ!」「だ、だって怖いのよ……一が、実名で告発して、私たちがやったことを全部バラしちゃった……おばさん、私たち、学校にクビにされるじゃない?!」「ふん……クビ?教授である人間がそう簡単にクビになると思う?三日も騒ぎが続いてたのに、学校側から何か動きでもあったか?」「……どういう意味?」
「難しい?」早苗は理解できなかった。「告発するのは難しくないでしょう。証拠さえ揃っていれば、世論を利用して、そのまま奈津を制裁できるし。正式な法律の手続きよりずっと早いんだから」世論が大きく広げれば、学校側は放っておけなくなる。校内のみんなが見ているんだから!学而は言った。「効率から言えば、告発が確かに最も早い方法だが、その投稿をもう一度よく見てみて」「見たよ。何度も見たけど、何か問題でもある?」「一は実名で告発していた」早苗は言った。「実名で告発したことがどうかした?」学而は複雑な表情で彼女を見たが、早苗は無邪気な顔で彼を見つめている。彼は諦めたようにため息をついた。「学生が指導教員を告発する場合、結果は二つしかない――告発が成功して教員が罰せられるか、失敗して教員がのうのうと続けるかだ。だがどちらの結果であれ、学生にとっては、その後待ち受けるのは必ず地獄レベルの難題だ」早苗は眉をひそめた。「告発が失敗するのは理解できる。教員はきっとその生徒に嫌がらせをして、いろいろ難癖をつけるでしょう。でもなぜ成功してもダメなの?」学而は逆に問い返した。「告発が成功したら、その後はどうなると思う?」「もちろん問題のある教師は解雇され、場合によっては刑務所行きじゃない!」「そう、教員が解雇されたら、その学生はどうなる?特に一のように修士3年で、卒業間近の学生は、どうすればいい?」早苗は言葉に詰まり、ようやく理解できた。教員が解雇されれば、一が予定通りに卒業できなくなることを意味している!たとえ学校が指導教員の変更を認めたとしても、一つの分野を深く研究してきた者にとって、指導教員の変更は研究方向や主要テーマの変更を意味する。そうなれば、これまでの3年間の努力はすべて水の泡になる。卒業できない大学院生は、学部生と何の違いがある?いや、むしろ学部生よりも下かも。なぜなら同期の学部生は若く、さらに競争力があるからだ。早苗はしばらく黙り込んだ後、ぼそっとつぶやいた。「……あと数ヶ月我慢すれば卒業できたのに……」そう、あと数ヶ月我慢して、学歴証明書と学位証明書を手にすれば、それこそ思うままにしたいことをすればいいのだ。なのに……なのに……一がこんな時期に奈津を告発するなんて……「だから――」いつの
スレッドは10ページもあって、内容はかなり衝撃的だ。告発者は上条奈津の直弟子である内藤一で、彼は上条奈津の学術不正、縁故採用、学外企業との共謀、姪の論文代筆依頼などの罪状を告発した。スレッドの最後にはPDFファイルが添付されており、開くと30ページ以上にわたり、奈津の罪状一つ一つが詳しく記録され、確たる証拠が付けられていた。例えば――学生に不正労働や贈り物の強要、精神的にハラスメントなど!中でも最も衝撃的なのは、一の研究成果を横領し、長年にわたり姪の上条真由美のために、代筆を強要していた事実だ。しかも画像証拠付きで。B大学の掲示板は一気に騒然となってしまう。「うわっ、たった30ページなのに、震えが止まらない。これ全部本当なの?」「長いから読んでないんだけど、簡単に説明してくれる人いる?」「説明するまでもないだろう?教授の学術不正と不品行が明らかで、我慢の限界を超えた学生が告発したってことだよ!」「まさか……なんと、上条真由美の高校時代から続いていたのか!じゃあ、彼女の大学入学試験の加点と推薦入学も全部不正だったってこと?」「天才少女もなにも、ただの詐欺師だろう!」「確か一って、上条奈津の直弟子じゃなかったっけ?告発はよく聞くけど、直弟子が師匠を告発するなんて初めて見たぞ!弟子が極悪人か、師匠が自業自得かのどっちかだ」「読み終わった……文字一つずつが泣き喚いているようなもんだ。毎日指導教員の道具にされている身として強く共感する。ただ俺には勇気がないな……とにかく内藤一を応援する。自分ではできなくても、勇気ある人を応援する!」「一先輩、本当に可哀想だ」「上条奈津が学生に自宅の掃除までさせてたって読んだ時は仰天したよ!学生を奴隷扱いかよ?」「奴隷も命ある人間だろう?」「生命科学研究科の上条教授って、かなり威張ってるって聞いたよ?学術的な成果も多いし、人も目立つ存在だったのに、結局全部盗んだものなのか?しかも自分の教え子からばかり盗んで、最悪……むかつく!」「まだ事実が確認されていないのに、PDF一つで何がわかる?」「上の書き込みは上条奈津側の者じゃないの?まだ擁護してるのか?もう証拠が山ほど出てるのに!」「……」冬休み期間中にもかかわらず、このスレッドの書き込みはますます盛り上がってい
「おばさん?」真由美は理解できない顔をした。「仕事をさせておきながら、最後に名前を消したんだから、耕介が納得するわけないでしょう?」「納得できなくても、彼を恐れると思う?!」真由美は顎をしゃくった。「恐れる必要なんてないわ。田舎から出てきた貧乏人なんて何の価値もない。でも考えたことある?もし彼が不公平に感じて、みんなが賞をもらっているのに自分は何も得られなかった。たまたまこの裏事情に気づいたら、全てを晒すかもしれないわよ?」「そ……そんな?あの馬鹿が気づくはずないでしょ?馬鹿正直ですぐ騙されるもの、そう賢くないわ」奈津はそれほど楽観的ではなかった。「忘れてないよね?耕介には一がついているのよ」真由美は冷ややかに言った。「一と言えば腹が立つわ。おばさん、知ってる?あいつは今や公然と学外でフルタイムでアルバイトしてるの。朝早くから夜遅くまで、まともな学生ではないわ」「先週、私は早く論文を用意してくるよう言ったら、電話を切られちゃったのよ!最近ますます図に乗ってきて、おばさんという指導教員が全く眼中にないわ」奈津の表情が少し曇る。真由美はそれを見て、さらに油を注いだ。「聞くところによると、一は凛たち三人とつながりがあるらしいわ」「それ、誰から聞いた?」真由美は言った。「わざわざ聞かなくても、見ればすぐわかるのよ!もしつながりが浅いか、あるいは何もないなら、なぜ凛の実験室の落成儀式に、彼だけ特別に招待状が送られたの?」「何て言った?!一に招待状がある?!」「あら!おばさん、まさか知らなかったの?!」真由美はわざと驚いたふりをした。「この話はもう研究科で広まってるわ。みんな一先輩はすごい、一先輩は顔が利くって言ってるわよ!」「一の野郎!」真由美は薄ら笑いを浮かべる。「さっき、耕介の名前を消した話だったけど、今のところ騒ぎにはなってないよね?」「ないわ。文句一つできやしないんだから、今はたぶんどこかに隠れて、こっそり泣いてるんでしょう!」「それならいい。とにかく気をつけてね。何か弱みを握られるようなことがないように」奈津が念を押した。「安心してください、おばさん。耕介にはそんな勇気がないから」「それと」奈津はまぶたを上げて真奈美を見た。「私もずっとあなたを助け続けるわけにはいかないの。あなた自身で早







