LOGIN【北尾二輝✘佐倉愛結】 と 【桜木希樹✘谷村涼】との二組のカップルの愛憎劇。 それぞれが学生時代に知り合い友情を育んできた仲の2組のカップルのお話に なります。 そのような中で起きた、あってはならない裏切り。 裏切りをシタ側は、ほんの軽い気持ちの遊び心で起こした浮気だったけれど、 サレた側からしてみれば、青天の霹靂で到底許せるものではなかった。 ちょっとした遊びでしたことが、パートナーをいかに苦しめることに なるのか、そんな過程を描いてみました。
View More俺《北尾二輝》には学生時代から交際している婚約者がいる。
学生時代から3年間付き合って、社会人2年めの秋に
佐倉愛結《さくらあゆ》と婚約した。それが昨年のこと。
1年以内には結婚することになっている。
婚約者の愛結は、見た目は気が強そうに見えるが、天真爛漫でおしとやか
なところもあり物怖じしない子で、思い遣りのあるいい子だ。一緒にいて飽きないし、気を張ることもなく寛げるそんな存在で。
学生時代に一生を共にする結婚相手に出会えるなんて、なかなか幸運な
ことではなかったかと、しみじ思っている。 出会った頃は若くまだ学生だったため、収入や職業といった条件で 相手を選んだわけでもなく……。持てるもののほとんどない俺たちは、お互いの情熱と想い合う気持ち
だけを支えに、一途に相手を求め合い恋人同士になった。 愛結と出会ったことで学生生活は更に輝きを増し、俺は思いっきり青春を 謳歌した。仕事も順調で俺の周り全てに調和が取れていて、順風満帆だった。
俺はこの先も今と同じくらいのキラキラした幸せが続いていくものと
信じていた。 そんなある日のこと、親友の谷村涼が付き合っている彼女、桜木希樹から 一度親友抜きでふたりで会ってほしいという連絡が入った。親友の谷村涼と桜木希樹たちも婚約していて、結婚を間近に控えていた。
大学の2回生になった頃から、谷村と桜木が先に付き合っていた。
谷村たちがデートする時に何度か奴に付いて行ったのが俺で、桜木に
付いて来ていたのが佐倉だった。ベタな出会いだったけど、こんな形で佐倉と出会えたことを本当に
ラッキーだったと、ずっと思ってきた。 ◇ ◇ ◇ ◇桜木希樹が待ち合わせに指定してきた店は、俺たちが一度も
使ったことのないコーヒーショップだった。しかし、それにしても何故にこの店なんだと、外観を見て俺は息を呑む。
古民家というより、ただただ古い一軒家で、普通に歩いていてもここが
コーヒーショップだとは大概の人間は思わないだろう。中に入ると、長細く四角いだけのシンプルな形状のカウンターの中で、
60代から70代くらいの女性がひとりで店を切り盛りしていた。女性の髪の毛はきっちりとスカーフで隠されている。
外からは分からなかったのだが、可愛いカーテンが窓に掛かっており、
テーブルは丸テーブルと四角いテーブルが置かれており、椅子などは 籐の椅子にチェック柄の座布団が敷かれていて──見た目、温もりのある家庭的で素敵な内装になっていた。
初めての店──
そして、ふたりだけで会いたいと言われたこと……。それらを考え合わせると、どう考えても良くないことしか思い浮かばなかった。
俺は心の準備をして先に店の椅子に腰掛け、神妙に希樹を待つ。
10分ほど待っただろうか、希樹が待ち合わせ時間きっかりに店に顔を出した。
「あっ、二輝、待たせてごめんね」「いやっ、大丈夫だよ。
約束の時間ピッタリだし。 それよりさ、俺たち2人きりで会ったこと今までなかっただろ? だから何事なんだろうって、実は俺、ドキドキしてんだけど……。一体何? 何があった?」
*
「ドキドキさせてごめん。
だけどその二輝のドキドキ、当たってると思う。 ご明察通り、いい話じゃないのよ」 そう言いながら希樹の表情も声音も、どんどん、どぉよぉ~んとした 空気を帯びていった。 それを見ていて、俺の鼓動はますますドクンドクン鳴り始めた。 俺はもう話すことは止め、希樹の次の言葉を待った。言葉が途切れても急かさず、ひたすら彼女の言葉を待った。
あなたや涼が、お互いのことを本当に好き合っていたのなら、私や二輝にちゃんと謝って別れてから、正々堂々と付き合うべきだったのよ。 婚約者がいながらコソコソと乳繰り合うっていうのは、不誠実極まりないことなんだからね。 一時《いっとき》二輝も私もつらい思いはしたかもしれない。 だけどここまでの憎しみは育たなかったと思う。 そして、ただの遊びだったというのなら、それこそ──本当にそれは大罪だよ。 決して許されない行為だわ。 ◇ ◇ ◇ ◇ 愛結は十数年ぶりに再会した希樹から、胸の内に秘めていたであろうこれまでの憎悪と事の顛末を聞き終え、その場にへたり込んだ。 涼と遊びで浮気をしていて見つかった時、彼らが証拠を持っていなかったのをいいことに、キスまでしかしてない、ただの遊びだった──だから大げさにせず許してほしいと嘘を突き通した悪い人間だった。 私が考えていたのは自分のことばかりだった。 だから希樹の動向にまで気がまわらずにいた。 こんなにもこんなにも憎まれていることさえ気付かずに、過ごしてきたのだ。 どこまでも逆の立場で……人の立場で……物事を考えられない自分に笑えた。 子供も取られ、夫になってくれるはずだった人も失くしてしまった。 その裏では希樹と二輝との再婚があった。 子供も私と会えなくさせるため、会うのには物理的に不可能な海外での生活を選んだふたり。 『私はどこで道を間違えてしまったのだろう』って、感傷にも浸れないよね。 はっきりしてるから。 自分の仕出かしたことをあまりに甘く捉えていた。 簡単に人は裏切りを許しはしない、ということを知らなさ過ぎた。
いつの間にか私たちが話しているところに現れた夫が、愛結に言った。「君にそんな当たり前のことを言う資格はないんだよ。友達や恋人に裏切られた希樹と俺の気持ちなんてわかってないだろ」「謝ったじゃない。 それでも許せないならこんな汚い真似しないで結婚できない、親権は渡さないし会わせないって正々堂々言うべきだったんじゃないの?騙すような真似して汚いわよ」 私も彼女に負けてはいなかった。 更に愛結に言いたいことを続けた。「最初に汚い真似したのはどっちよ、まったく。 お礼言ってもらいたいくらい。 子供を引き取らずに済んで、あのあと結婚だってしやすかったはずだし本心では喜んでたんじゃないの? あなた男誑かすの上手いんだからさ。 んで、いい男性《ひと》見付かった? そうでもなさそうね、その様子じゃ。 涼が近くにいれば関係を復活させられたかもしれないけど、お生憎さま。 あいつは遠ぉ~い場所《ところ》で男好きで浮気大好きなぴったりの女と再々婚しちゃってるからねぇ~。 私、とっくの昔にあんたが二輝に振られて結婚してなかったことを、涼にはひとことも言ってなかったの。 あいつ、もしかしたら今でもあんたと二輝が結婚生活続けてると思ってるかもね。 折角離れ離れになってるあんたと涼にくっつかれたりしたら、気持ち悪くてやだもん」 私は、まるであの時から今までのことを復讐するかのように、これまで胸にしまっておいた憎悪をたくさん吐き出した。 私は、愛結に胸の中にしまっていた憎悪を伝えながら、自分は何がしたかっんだろう? と我が身に問うてみた。 ただただ、愛結に過去の大罪を反省して生きてほ
「さてっと、涼のことは今更かもしれないけど、あいつが……あんたの遊び相手が、どんな人間だったのかをぜひとも私は教えてあげたくってたまんないのよっ。 さっきも言ったけどさぁ、涼ったら私と結婚してあっちに行ってからもまた浮気したの。 余所の女に誰彼なしに手を出す、くだらない人間に成り下がっていったわ。 でもね、その時にはあんたと涼が未遂じゃなくて、浮気してた証拠を掴んでいて、離婚することは私の中では決定事項になってたからかな、全然傷つくこともなかったわ。 ヤレヤレまったくぅ~、っていうのが正直な気持ちだったかな。 涼がりっぱな女垂らしになる引き金を引いたのは、愛結、あなただったんじゃないかって私は思ってるの。 浮気を1度経験して、垣根が低くなったのね、きっと。 今言ったようにあなたの次に浮気した青井恵美とも、結局別の女との浮気が原因で別れたみたい。 今はその別の女と暮らしてるみたいだから、その女に涼が飽きたらまた昔のように彼女にしてもらえば? 今度こそ天下晴れて素敵なカップルになれそうじゃない?」 私の素敵な提案を聞いた愛結は、唇を噛み締め、キッと私をねめつけてきた。 「やめてくれる? 私を恨むのはお門違いなのよ。 責めるなら昔の自分自身にだよ、愛結。 友達の夫を寝盗るなんてことする奴に明るい未来なんてあるわけないでしょうに。 それをちゃんと自分にわからせないと、この先ずっと、幸せになんてなれないんだよ? 愛結《あ~ゆ》。 あんたと涼の未遂事件のあと、まだ涼のことを想い結婚生活に夢を持っていた私は、あなたや涼を許してやり直そう、再出発して幸せになりたいってそう思ってた。 だけどなかなか忘れられなかった。 記憶喪失にでもならな
「そっ、そんなこと私がするわけないでしょ。 なに言ってんのよ。 自分のお腹を痛めて産んだ子にもずっと会えなくて、私がどんなにみじめで寂しい生活をしてきたか、あなたになんかにわかるはずないっ! 酷い人ね、あなた。 私から息子を奪って、その上勝手に育てていたなんて酷過ぎる。 ちょっとした出来心だったのよ、涼とのことは。 二輝のことは愛してた……好きだった。 結婚だって考えてた。 あなたから涼を奪おうだなんて微塵も考えてなかったのに。 それなのにあなたが大騒ぎして二輝を唆《そそのか》して、私と息子の人生をめちゃくちゃにしたのよ。 許さない、絶対許さないから。 息子を今からでもあなたから取り返すわ、見てなさい」 ◇ ◇ ◇ ◇ 愛結を痛めつけるつもりで吐いた私の言葉に、愛結がすごく反応してきた。 ぶっちゃけ遠い異国にいて愛結の生活のことなど何一つ知る術のない自分だけど、あまりの反応振りを垣間見て──後日愛結のあれからの様子を調べてみようかなぁなんて頭の隅で考えながら、今までの言い足りない言葉を私は頭をフル回転させながら探した。「愛結《あ~ゆ》そんなにかっかしないで。 図星だったのかなぁ? ははっ。 まぁ落ち着いて。 まだまだあなたには知らせたいことが山ほどあるんだからさ。 今日話しておかないと、次はいつこんなに話せる機会があるかわからないと思うから、聞いてほしいなぁ。 ねねっ、涼があれからどうなったか、知りたくなぁ~い? あなたのお遊びの相手のことよ~」「しっ、知りたいなんて思うわけないでしょ。 あれから何年経ってると思ってるの。 今の今まで希樹と涼がとっくに離婚してたことだって知らなかったんだから。 聞いてもしようがないじゃん。今更」「うん、そうかもね。今更かぁ~ふふっ。 今更だから話せることもあるのよぉ。 私、絶対涼と離婚したこと、愛結にだけは知られたくなかったからねぇ~。 何故かと言・う・と、愛結が涼に連絡取ったりしないように……かな。 愛結にはずーっとひとりで孤独を味わっていてほしかったからね。 ふふっ」「ひっ、酷い人」 私の言葉に、愛結の顔が歪む。「そうそう、さっき聞き捨てならないこと言ってたけども、私が大騒ぎして二輝を誑《たぶら》かしたとか何とかって……。 その