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第294話

作者: 十一
凛はふと真奈美の言葉を思い出した。B大学の近くに変態がいて、特に夜中になると、女子学生をつけ回すのが好きだという。

すでに一人の女の子が猥褻行為を受けたが、警察に通報しても犯人は捕まっていない。

それを思い出すと、凛の呼吸が速くなり、思わず足早になった。

しかし、後ろの足音もつられて速くなった。

彼女は無意識に手をカバンに伸ばした。

いつもは陽一と一緒に通勤することが多いが、たまに二人が忙しい時は出入り時間が完全にずれてしまう。

一人暮らしなので、勇気づけと護身のために、いつも防犯スプレーをカバンに入れて持ち歩いている。

まさか、それを今日使うことになるとは。

足音がますます近づき、その人の影も凛の影を覆い尽くように追いかけてきた。

彼女は無意識に息を止め、全身が硬直し、カバンの中に手を伸ばして、冷たいボトルを握った。

凛が勇気を出して防犯スプレーを取り出し、先手を打とうとしたその時——。

懐かしい声が響いた。「凛!」

凛は顔を上げた。

傘を差した時也が少し離れたところに立ち、片手をポケットに入れていて、鋭い視線で凛の後ろを睨んでいる。

足音が急に消えた。

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