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第356話

Author: 十一
食事を終えると、すみれは電話で呼び出され、凛は両親を連れて家へ帰った。

一日中歩き回ってさすがに疲れたものの、慎吾はスマホの写真をめくりながら、まだ興奮冷めやらぬ様子だった。

「……これ見てよ。このカップと皿……それからこの銀で縁取った珊瑚のネックレス……」

彼の声は廊下いっぱいに響き渡っていた。

敏子は、そんな彼の子供みたいな姿を珍しく感じ、思わず口元を緩めた。

凛は最初から最後まで、聞き役に徹し、必要なときだけ軽く相槌を打っていた。

三人は笑いながら七階まで上り、凛が鍵を取り出し、玄関のドアを開けようとしたそのときだった。

その時、向かいのドアが開いた。

「え?庄司くん、出かけるのか?」慎吾が親しげに声をかけた。

凛は無意識に振り向き、思いがけず、微笑みを湛えた男性の目とばっちり目が合ってしまった。

彼は白い半袖のシャツに、カーキ色のカジュアルパンツという、シンプルながら清潔感のある落ち着いた装いをしていた。

これは、前回お酒に酔って以来、二人が初めて顔を合わせた瞬間だった。

慎吾から酔っぱらって陽一に絡んでいたと聞かされたことを思い出し――

凛は気まずそうに視線をそらした。

陽一は口元の笑みをほんの少し深め、慎吾に軽く頷いた。「ええ、研究室まで」

「こんな遅くまでお仕事?」

「データの処理がまだ残っているものです」

「そうか……それではお忙しいところごめんね、今度チェスでも!」

「ぜひ」

……

一方、美琴はようやく理子親子の相手から解放された。

いや、正確に言えば、彼らが遊び疲れてホテルに戻ったおかげで、ようやく自由になれたのだった。

家に帰りつくと、彼女はソファにぐったりと身を沈め、全身の力が抜け、頭もぼんやりとしていた。

「お母さん!いい知らせがあるわ——」

那月が階段を駆け下りてきて、美琴の隣にちょこんと座った。

彼女は今日、ついにB大学の合格通知を受け取ったのだった。

専攻はバイオインフォマティクス。

指導教授は上条奈津。

どうやら、このところ上条に贈り続けた高級栄養品が無駄にならなかったらしい。

これらはもともと大谷に渡そうとして、断られたものばかりだった。

再利用、ちょうどいい。

さらに那月は、仲介人を通じて上条に高級な翡翠のブレスレットを贈っていた。ほぼ二千万はかかった品だ。

自分で
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涙が出る程に笑わせて頂きました、毎日、更新楽しみにしています。
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