第173話

先ほどはレースで勝負したが、今度は財力対決だった。

財力で言えば、浜島市一の富豪である司が負けるわけがない。

彩は可愛らしい顔で彼を見上げ、甘えて買ってもらおうとしていた。

司は彩を見たあと、真夕の方に視線を移した。

真夕の澄んだ瞳もまた、彼をじっと見つめていた。

彩が彼の腕に絡みつき、甘えた声で言った。「司、買ってよ、欲しいの」

司は店主に目を向けた。「二倍の値段で買う」

彼は二倍の価格を提示し、彩のためにそのビキニを買おうとしている。

彩は顎を高く上げ、誇らしげな孔雀のように真夕を見下ろした。

まるでこう言っているかのようだった。「見た？司が私に買ってくれるのよ」

和也はすぐさま口を開いた。「司、それじゃ面白くないな。店長さん、俺は三倍で買うよ」

彼は三倍の値段を出し、真夕のために買おうとした。

真夕は彼を見て言った。「常陸さん、やめてよ……」

「やめないさ。それを買って、君に着てもらうんだから」和也は笑って言った。

司は整った眉をわずかにひそめた。「俺は四倍だ」

和也「じゃあ五倍だ」

ついには二人の男の意地の張り合いになってしまった。

司「六倍に」

和也がさらに口を開こうとしたとき、真夕が彼を止めた。「常陸さん、やっぱりこのピンクのは気に入らなくなっちゃった」

そう言うと真夕は白く細い指で、別のビキニ、ローズレッドのものを指さした。「こっちが欲しい」

店主はすぐさまそのビキニを取り出した。「さすが美人さん、見る目がありますね！」

真夕は和也に向かい、いたずらっぽくまばたきをした。「常陸さん、買ってくれるかな？」

和也は眉を上げた。彼は、真夕が自分と司の間で無駄な争いを避けようとしていると悟った。彼女が自分に支払いを頼んだのは、男としてのプライドを守るためで、場の空気を壊さずにすべてを丸く収めるためだった。なんて気遣いのできる、素晴らしい女性なんだ。

「もちろん、喜んで」

和也は財布を取り出し、真夕のために支払った。

真夕はピンクのビキニを手に取り、それを彩の胸元にぽんと投げた。「これ、いらなくなったから、あげるよ」

まさか自分が返り討ちにされるとは思わなかった彩は、顔色をすっかり変えた。

幸子は笑って言った。「変人もいるもんだね。真夕がいらないものを六倍の値段で買うなんて」

彩「……」

「真夕、着替えに