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第348話

Author: 雪吹(ふぶき)ルリ
司は彼女の小さな手が自分の体を這い回るのを感じた。真夕はあまりに焦っていたため、彼のシャツのボタンを一つ弾き飛ばしてしまった。

男の喉仏が上下に動いた。司は彼女の手を押さえ、囁いた。「落ち着け。ここに替えの服はない」

ボタンが壊れたら、着るものがなくなってしまう。

しかし真夕は聞く耳を持たない。ただただ温まりたい一心で、抑えられていた手を引き抜くと、小さな顔を彼の首筋に埋めた。「やだ……寒いよ……」

病み上がりの彼女の声は甘えん坊のように聞こえた。

仮に彼女が病気でなくとも、ベッドの上ではいつもこうして甘えてきたのだと、司はよく知っている。

もともと彼女は小悪魔のような女だから。

ただ離婚してからは、久しくその味を忘れていた。

司は一瞬ためらったが、結局耐えきれず、手を彼女の服のボタンに伸ばし、その服を脱ぎ始めた。

すると、すべてが混乱に包まれた。司は身を翻して彼女を押し倒し、お互いの服を剥ぎ合うように脱いでいった。

彼の白いシャツは半分ほど剥がされ、背中の天使の羽のような肩甲骨と、その間のくっきりとした背骨の溝が露わになった。真夕の冷たい指がそこを這い回った。

司が身を乗り出すと、二人の肌が密着した。

まさに最も原始的な暖の取り方だ。彼女の冷たい肌と、彼の熱い体が交わる氷火のコントラストだ。

刺激的で、秘密めいた行為だった。

この小さな村のベッドの上で、まるで火花が草原に広がるように、全ての情熱に火がついた。

身下の真夕が「んっ」と声を漏らした。火傷しそうな熱さに驚いたようだった。

司はその小さな顔を見下ろした。どこへ行っても男を魅了するこの顔は、彼でさえ心を揺さぶられた。

小さな顎を摘まみ上げると、唇を重ねた。

真夕は、自分が巨大な炉の中に放り込まれたような感覚に襲われた。周囲が熱すぎて逃げ出したいが、押さえつけられている自分がいた。

何かが口の中に押し込まれ、彼女は眉をひそめて耐えきれない嗚咽を漏らした。

小さな両手で男の胸を押し、「やめて……」と拒絶しようとした。

村は静まり返っており、この部屋が安全かどうかもわからない。春菜や他の者がいつ闖入してくるかも知れない。

司はすぐに布団を引き寄せて二人を覆い、「声を出すな」と囁いた。

彼の唇は彼女の頬や耳たぶを這い、膝で彼女の足を開いた。

真夕の眉間には「川」の字が
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