第994話

「いいよ」

真司は車のキーを手に取り、出て行った。

真司が去ったあと、佳子は書斎を出て部屋へ戻ろうとした。

そのとき、不意に理恵の声が響いた。「葉月さん、こんにちは」

佳子は一瞬驚き、階下に目をやると、見慣れた二人の姿がある。

理恵と五郎だ。

佳子が問い詰めた。「あなたたち、どうやって入ってきたの？」

五郎が答えた。「指紋認証で入った」

その言葉で、佳子は理恵の狙いをすぐに悟った。まさか理恵が五郎をここまで利用するとは思っていなかった。

佳子「内村君、さっきわざと真司に電話して会社へ行かせて、今度は彼女を連れて入ってきたね。真司が知ったら、あなたたちの親友関係は終わりよ！」

五郎は一瞬ためらったが、理恵が鋭く遮った。「もう人の心を惑わすのはやめなさい。私も五郎も、すべては真司のためよ。真司があなたに壊されるわけにはいかないの！」

佳子は冷たく笑った。「あなたは千代田逸人と手を組んでいる。それこそ真司があなたの手で壊れることになる！」

五郎は硬直した。「何だって？理恵が誰と手を組んでるって？」

佳子「まだ知らないの？林理恵はもう千代田逸人と組んでいるのよ」

「ありえない！千代田は真司の宿敵だ。理恵がそんな人間と組むはずがない！」と、五郎は全く信じられず、理恵を見た。「理恵、本当のところはどうなんだ？」

理恵はすぐに答えた。「五郎、どうして彼女の言葉なんか信じるの。彼女は私たちの仲を裂こうとしているのよ！」

五郎はうなずいた。「もういい！君は人の心を惑わすのが得意だな。俺は真司じゃない。君の言葉には騙されないぞ！」

佳子は沈黙した。

五郎はもはや救いようがない。

理恵は五郎に向き直った。「五郎は会社に戻って。後で真司が会社であなたを見つけられなかったら絶対に疑うわ。ここは私に任せて。彼女としっかり話をしておくから」

理恵は五郎を外に出そうとしている。

佳子が即座に叫んだ。「行かないで。彼女があなたを外に出そうとするのは、絶対に何か企んでいるからよ！」

「五郎は彼女を信じるの？それとも私を信じるの？」と、理恵が直接問いかけた。

五郎「理恵、俺はもちろん君を信じる！今すぐ会社に戻る。ここは任せるぞ」

そう言って五郎は踵を返した。

佳子が大声で五郎を呼び止めようとした。「待って！今日出て行ったら、必ず後悔するわよ！」

五郎の