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第166話

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「やった!」陽介の暗い表情は一瞬にして明るくなった。「いくら出してくれるの?いや、全部欲しいわけじゃないんだ。一度にたくさんもらうのは気が引けるから」

「120億円以内なら」と月子は答えた。

端数を切り捨てればちょうどいい。月子も全額を洵に渡すつもりはなかった。

陽介は信じられないといった様子で言った。「マジかよ!静真が鳴に60億円出資したって話だし、森部長なら20億円から40億円かと思ったけど、まさか120億円も――マジ尊敬する!」

核心的な社員を鳴に引き抜かれ、窮地に立たされた陽介は、月子に助けを求めた。何も言わずとも、月子は20億円をポンと出したのだ。その後、会社のデータベースがハッキングされた時も、月子が助けてくれた。

月子は本当に何から何まで助けてくれた。

陽介は興奮を抑えながら言った。「ゲームの開発費は高いけど、洵と俺は最初からコスト削減に努めてきた。だから、そんなにたくさんのお金は必要ないので、半分の60億円で十分足りるはず!」

60億円をまるで60円のように言ってしまった手前、陽介は慌てて付け加えた。「それに、ゲームがリリースされれば、会社も資金繰りもすぐによくなるから、こんなに切羽詰まることはなくなるさ!」

それを聞いて、月子は快諾した。「いいわよ」

二人が話している間、洵は待ちくたびれてイライラしていた。二人が戻ってきた時、嬉しさを隠しきれない様子の陽介は思わず洵に勝ち誇ったような視線を送った。

洵は陽介に尋ねた。「月子は何て言ってたんだ?」

「月子さんは、俺のことを本当の弟みたいに思ってるんだってさ。俺のこと性格が良くて、気が利くって言ってくれたから、そりゃあ、喜ばずには居られないだろ?」

洵はその発言に一瞬言葉を失った。

それから、三人は一緒にレストランへ行った。

月子が洵とこうやって和やかに一緒にいるのは本当に珍しく、もとより二人が一緒に食事をするのですら久しぶりだったのだ。

だが、洵はいたって無表情で、ずっとすまし顔をしていた。

それを見た月子は食欲が失せそうだったので、彼女は陽介に話かけることにした。

しかし、いつの間にか、場の空気はさらに重くなっていた。

週末で店が混んでいたため、個室が空いておらず、仕方なく月子たちはテーブル席についた。すると、鳴が友人と食事をしているのが、洵の視界に入った。

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