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第296話

Auteur: タマタツ
景は背筋をまっすぐ伸ばし、隙なく仕立てられたスーツを身にまとっていた。

長年、人の上に立ってきた者だけが放つ凛然とした威圧感が全身から漂っている。

その余裕に満ちた落ち着きは、騒ぎ立てて苛立ちをあらわにする健二たちを、存在感だけで圧倒していた。

目の前にある端正で冷淡な顔を見上げた健二は、「格の違い」と「畏れ」という名の大きな手に、心臓を強く握り締められたように感じた。

これまで、さまざまな場所で景を遠くから眺めるたびに抱いてきた羨望と劣等感が、今は巨大な圧力となって押し寄せてくる。

景の立つ場所は、健二が生涯をかけて渇望しながら、決して手の届かない高みだった。

健二は口元を引きつらせ、媚びるようなぎこちない笑みを浮かべた。

声の勢いも一気に弱くなる。

「つ......築山社長。なぜ......こちらにいらっしゃるんですか?」

景は目を伏せ、健二を静かに見下ろした。

その眼差しには、わずかな波もない。

「森川健二さん」

景は冷えた低い声で呼びかけた。

「これほど大勢の人間を連れて騒ぎを起こし、療養中の患者さんたちの静かな環境を乱すのは、いかがなものでしょうか?
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