Share

第8話

Penulis: こころの栄養ドリンク
今のこの気持ちを、私はどう言ったらいいのかわからない。

理屈で言えば、似たような経験は前にもあったはずなのに。

あのとき拓也したみたいに駆け寄って、ひっぱたけばよかったのだが、でもなぜか、足に鉛が詰まったみたいに重くて、前に一歩踏み出す勇気さえなかった。

ただ、のどの奥がツンとして、胸がぎゅっと苦しくなった。

父が亡くなってから、私はめったに泣かなくなった。

涙の味なんて、もうずっと忘れてたくらい。

私、たぶん本当に蓮のことが好きだったんだろう。

そして、彼も私のことを好きでいてくれてると、信じたかった。

だがどうやら、彼が好きなのは私一人だけじゃなかったみたいだ。

蓮がその女の人を強く突き放すのが見えた。

でも女の人はしつこくて、すぐにまた彼の腕に絡みついた。

ロビーで揉み合う二人に、ほかの宿泊客たちも足を止めて見ていた。

でも、私はもう二人の見物人でいたくなくて、くるっと背を向けてその場を離れた。

蓮がようやく女の人を振りほどいて、追いかけてきた。

しかし私は振り返らずに、急いでタクシーを捕まえて、別のホテルへ向かってもらった。

ホテルへ向かう途中も、チェックインを済ませるまでずっと、私のスマホは鳴りっぱなしだった。

それでも蓮は諦める様子がなかった。

だから、私は彼の連絡先を全部ブロックした。

なのに、蓮は他の人のスマホを借りてまでかけてくるのだ。

おかげで私のスマホは、ついに充電が切れてしまった。

こうなったからにはもう充電する気にもなれず、そのまま放置した。そして私はベッドに倒れ込んで、ただぼーっと天井を眺めていた。

そして結局、一睡もできなかった。

翌朝、私は始発の便で家に帰った。

目がまだ少し腫れていたから、ずっとサングラスをかけていた。

家に着いて、ようやくそれを外すと、

腫れあがった目でリビングに座っていた蓮と、不意に目が合った。

蓮は昨日と同じ服を着ていて、目は真っ赤に充血していて、髪も少し乱れていた。

こんなにやつれた彼を見るのは、初めてだった。

蓮は足を引きずりながら近づいてくると、私の両肩に手を置いた。「美咲、説明させてくれ。彼女は……」

私はその手を振り払った。「何も聞きたくない。あなたの顔も見たくない」

「だめだ!」蓮は私を行かせるどころか、ぐっと抱きしめてきた。「訳も分からな
Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terbaru

  • 元彼の親友と、まさかのハッピーエンド   第10話

    蓮は逆に嬉しかったみたいで、ご飯をほおばりながらも、にこにこしていた。帰りの飛行機で、蓮が突然、時間を見つけて両親に挨拶に行こうって言いだした。私はちょっと緊張した。私は母が早くに亡くなってて、父が男手ひとつで育ててくれたんだ。父は仕事が忙しくて、私と一緒にいる時間はあんまりなかった。だから一緒にいてあげられない分は、お金で埋め合わせをしようとしていたようで、私は甘やかされたし、わがままな性格に育った。はっきり言って、年上の人に好かれるタイプじゃない。それもあって私は、蓮の両親に気に入ってもらえないんじゃないかって、すごく心配だった。でも、蓮は、「君を好きにならない人なんていないよ」って言ってくれた。蓮の両親に会う当日。私は事前に選んだたくさんのプレゼントを持って、そして、使用人が「絶対に彼らに良い印象を与えますよ」と言っていたおしとやかなワンピースを着ていった。蓮の両親は会うなり、彼らはすごく喜んでくれて、綺麗でかわいいってほめてくれた。蓮の言ったとおりだった。私はそれですごく得意気な気分になった。でも、まさか食事の合間にトイレから戻ってきたら、二人が蓮に元の婚約者とヨリを戻すように説得しているのを聞いてしまうなんて。「いくら綺麗でも、何になるって言うの?調べたけど、あの子のお父さんが亡くなってから、実家の会社はずっと経営が傾いてるじゃない」「そんな身寄りのない女と結婚したって、何の助けにもならないさ」二人は息ぴったりで、まだ何か言おうとしたけど、そのとき蓮が突然お箸を置いた。「これ以上、ほかの人との結婚を進めるなら、俺はもうこの家には帰らないから」すると蓮の両親は黙り込んで、すごく気まずそうな顔をしていた。私は使用人から言われた、「礼儀正しく、わがまま言っちゃだめですよ」っていう言葉を思い出していた。だから、何も聞いてないふりをして、自分の席に戻った。結局食事は、なんだか変な空気のまま終わった。井上家を出るとき、私は胸がぽかんと空いたような気持ちだった。彼の両親の言葉が頭から離れなかったのだそして、あれから彼らの態度をみるとどうやら私は気に入られてないようだった。でも、別に悲しくはなかった。だって、私も同じように、彼らのことが気に入らなかったから。蓮の両親

  • 元彼の親友と、まさかのハッピーエンド   第9話

    それを聞いて、私は蓮の胸からそっと体を離して、彼をソファまで支えてあげた。ズボンの裾をめくってみたら、やっぱりすごく腫れていたのだ。私は思わず眉をひそめて、言った。「ねえ、病院に行こうよ」「見た目がちょっとひどいだけで、大したことないよ。スプレーしとけば治るって」「でも、やはり病院へ行ってレントゲンを撮ってみたほうがいいですよ。骨のことは蔑ろにしないほうがいいですから」いつの間にか使用人が部屋から出てきて、真剣な顔で口をはさんできた。どうやら、こっそり聞き耳を立ててたみたい。そんなわけで、私は蓮を病院に連れていくことになった。検査の結果はすぐに出て、幸いただの捻挫だった。しばらく安静にしてれば治るみたい。でも、蓮にはやらなきゃいけない仕事がたくさんあった。徹夜で飛んで帰ってきたのも、私に直接、ちゃんと説明したかったからなんだって。そんなこと言われたら、私も彼を放っておくわけにはいかないから、蓮についていくことにした。一緒にいた5日間で、私は蓮のまた違う一面を知ることになった。仕事モードの彼は、とにかく仕事が早くて、決断力もすごい。正直に言うと、蓮はどこからどう見ても、すごく魅力的な人だ。あんなにクールで人を寄せ付けない雰囲気なのに、彼に言い寄る人が後を絶たないのも納得できる。あっという間に一日が過ぎて、やっと忙しい時間も終わり。夜ごはんを食べた後、私と蓮はそれぞれの部屋に戻った。ベッドに横になった途端、彼からメッセージが届いた。【急に足がすごく痛くなってきた】【?】【ここ数日、無理して動き回ってたから、捻挫が悪化しちゃったのかも】【ちょっと待って、すぐそっち行くね!】そう返信すると、私は大急ぎで蓮の部屋のドアの前まで走った。ノックしようとしたら、ドアがすっと開いた。何が起きたか分からなくて呆然としてたら、ドアの隙間から伸びてきた腕にぐいっと中に引きずりこまれた。蓮は私をドアに押し付けて、ぎゅっと抱きしめたまま離してくれないのだ。「あ、あなたは足が……」してやったり、って顔で笑う蓮を見て、やっと自分がだまされたことに気づいた。呆れかえった私は彼の怪我してない方の足を軽く蹴って言った。「ちょっと、離してよ!」「やだ」蓮は体をかがめて、とろけそうな甘い目つき

  • 元彼の親友と、まさかのハッピーエンド   第8話

    今のこの気持ちを、私はどう言ったらいいのかわからない。理屈で言えば、似たような経験は前にもあったはずなのに。あのとき拓也したみたいに駆け寄って、ひっぱたけばよかったのだが、でもなぜか、足に鉛が詰まったみたいに重くて、前に一歩踏み出す勇気さえなかった。ただ、のどの奥がツンとして、胸がぎゅっと苦しくなった。父が亡くなってから、私はめったに泣かなくなった。涙の味なんて、もうずっと忘れてたくらい。私、たぶん本当に蓮のことが好きだったんだろう。そして、彼も私のことを好きでいてくれてると、信じたかった。だがどうやら、彼が好きなのは私一人だけじゃなかったみたいだ。蓮がその女の人を強く突き放すのが見えた。でも女の人はしつこくて、すぐにまた彼の腕に絡みついた。ロビーで揉み合う二人に、ほかの宿泊客たちも足を止めて見ていた。でも、私はもう二人の見物人でいたくなくて、くるっと背を向けてその場を離れた。蓮がようやく女の人を振りほどいて、追いかけてきた。しかし私は振り返らずに、急いでタクシーを捕まえて、別のホテルへ向かってもらった。ホテルへ向かう途中も、チェックインを済ませるまでずっと、私のスマホは鳴りっぱなしだった。それでも蓮は諦める様子がなかった。だから、私は彼の連絡先を全部ブロックした。なのに、蓮は他の人のスマホを借りてまでかけてくるのだ。おかげで私のスマホは、ついに充電が切れてしまった。こうなったからにはもう充電する気にもなれず、そのまま放置した。そして私はベッドに倒れ込んで、ただぼーっと天井を眺めていた。そして結局、一睡もできなかった。翌朝、私は始発の便で家に帰った。目がまだ少し腫れていたから、ずっとサングラスをかけていた。家に着いて、ようやくそれを外すと、腫れあがった目でリビングに座っていた蓮と、不意に目が合った。蓮は昨日と同じ服を着ていて、目は真っ赤に充血していて、髪も少し乱れていた。こんなにやつれた彼を見るのは、初めてだった。蓮は足を引きずりながら近づいてくると、私の両肩に手を置いた。「美咲、説明させてくれ。彼女は……」私はその手を振り払った。「何も聞きたくない。あなたの顔も見たくない」「だめだ!」蓮は私を行かせるどころか、ぐっと抱きしめてきた。「訳も分からな

  • 元彼の親友と、まさかのハッピーエンド   第7話

    って私、いったい何を考えてるんだろう。自分の部屋にいるのに、私は急に恥ずかしくて死にそうになった。次にビデオ通話が繋がった時、私はもうお出かけ用の服に着替えておいた。なのに蓮は、上半身裸だった。ビデオ通話の衝撃は、写真と比べ物にならないほどだった。とっさにどこを見ていいか分からなくなって、私はどもりながら聞いた。「な、なんで服、脱いでるの」「今、シャワーを浴びてきたところ」「ふーん」「美咲」彼はまたあのセクシーな声で呼んできた。「なによ」「さっき、すっごく辛かったんだ」蓮の表情は嘘じゃなさそうだった。「どうにも我慢できなくてさ、仕方なく冷たいシャワーを浴びたんだよ。でも、いつも冷たいシャワーを浴びるわけにもいかないし……」蓮は言葉を途中で切って、私の返事を待った。私は素直に応じて、すぐにうなずいた。「確かにそうだね」蓮はぱっと目を輝かせた。「だから……」「だから、いっそのこと切り落としちゃえば!」そう言って私は彼の返事を待たずにビデオ通話を切って、そのままふかふかの枕に顔をうずめた。蓮が帰ってくる日、私はちょうど時間があったから、空港への迎えを引き受けた。せっかく迎えに行くんだから、ちょっとした演出もいるかなって思ったから。花屋の店主に勧められて、トルコキキョウの花束を買った。そして、すぐに後悔した。蓮が花を見てあんなに喜ぶなんて、思ってもみなかったから。彼はなんと感激のあまり、空港で大勢の人を前にして、私を抱き上げてくるくると回ったのだ。傍らから彼の部下たちが囃し立てて、周りからも歓声がやまなかった。そんな状況に恥ずかしくてたまらなくなった私は、蓮の胸に顔をうずめることしかできなかった。それは、ちょうど蓮の思うつぼだったみたい。彼は何も言わずに私を横に抱きあげて、ゆっくりと駐車場の方へ歩いていった。蓮と正式に付き合い始めてからの二ヶ月。私たちが会えた回数は、それほど多くなかった。蓮は会社を継いだばかりで、しょっちゅう地方へ出張していた。だから連絡はほとんど、メッセージかビデオ通話だった。ほかの恋人たちと同じように、私たちのメッセージには、いつも他愛のない話だった。毎日、【今日何食べる?】【疲れてない?】【会いたいな】って、そんな話の繰

  • 元彼の親友と、まさかのハッピーエンド   第6話

    私が呆然としている間に、拓也はもう蓮に殴りかかっていた。二人は人目もはばからず、路上で殴り合いをはじめたんだ。拓也はガタイがよく見えるけど、実は見かけ倒し。すぐに蓮に押さえつけられて、一方的にやられていた。すると周囲を群がるやじ馬がどんどん増えていった。これ以上、事が大きくなるのが心配で、私は蓮の肩をぽんぽんと叩いた。「もうやめて。家に帰りたいの」その言葉を聞いて、蓮はぴたっと手を止めた。それから、車はあっという間に走り去り、拓也は遠退いていく姿をただ見つめるしかなかった。この時、私はまだこれが拓也との最後の顔合わせになるとは、気がついていなかった。それから、蓮は二度と拓也を私に会わせないようにしたからだ。一方で、家まで送ってくれた蓮は、傷だらけの顔で別れを告げようとした。でも、私は彼を行かせなかった。車から降りると、蓮は私のすぐ後ろをぴったりとついてきた。使用人は蓮を見ると、にこっと挨拶だけして自分の部屋に戻っていった。彼女もこういうことには、けっこう気が利くほうなのだ。昔、拓也が来たときは、私が何かされないか心配で一瞬もそばを離れようとしなかったのに。家に入ると、私は蓮をリビングに座らせて、救急箱を取りに行った。救急箱を持ってリビングに戻ると、視界の端で、蓮が私をじっと見つめているのがわかった。その眼差しは、どこか攻撃的だった。でも、私が視線を向けると、彼は慌てて目をそらした。蓮の隣に座ると、その体がこわばるのがはっきりとわかった。そんな彼の様子を見て、私までなんだか気まずくなってしまった。早く手当てを終わらせて、蓮に帰ってもらいたいと思うようになった。実際、私たちがこんなに近くで触れ合うのは、これがはじめてだった。お互いの息遣いが、絡み合うように交差する。ふと目が合うと、体に微かな電気が走ったみたいだった。辺りは静まり返っていた。あまりにもの静かさで、蓮がごくりと唾を飲み込む音まではっきりと聞こえた。どき、どき、どきっ。また、胸が高鳴るあの感覚がやってきた。私は慌てて立ち上がって蓮に背を向け、とっくに片付いている救急箱をいじりながら言った。「手当て、終わったから。帰りは運転気をつけてね」「美咲」蓮はかすれた声で、私の名前を呼びた。

  • 元彼の親友と、まさかのハッピーエンド   第5話

    ちょっと、かわいいかも。でも、そんなことを言われたからって簡単に気持ちが揺らぐほど私もそう単純じゃないのだ。実際のところ口で言うのは簡単だけど、実行するのは難しいこともあるのだから。拓也だって、私にアタックしてたときは甘い言葉ばかり言ってきたのだ。なのに、結局は悲しい結末になったじゃない。もう同じ間違いはしないようにしないとね。そう自分に言い聞かせていると、突然スマホからpaypay送金の受け取り受信音が聞こえた。開いてみるとなんと「1億円」の入金があったのだ。……これが新しいお金持ちアピールってやつ?って、待って。お金といえば、ブレスレットの件もまだちゃんと聞いてなかった。【なんで急に送金してきたの?っていうかブレスレット代だってまだ返してないのに】蓮は少し間を置いてから、さっきの言葉をもう一度繰り返した。【お金はいらない。ほしいのは、君だけだ】……それを見て私が言葉に詰まっていると、蓮はさらに続けた。【もし付き合えたら、俺のお金は全部君が管理していいよ】まっすぐな言葉は、いつだって最強だ。今時、お金をくれるっていうイケメンを断るなんて、どう考えても無理でしょ……10秒ほど悩んだ結果、私は自分の心に正直になることにした。【じゃあ、アタックしてみれば?でも、うまくいく保証はないからね】【うまくいくまで諦めない!】そのメッセージの後には、犬が赤いハチマキを締めているスタンプが添えられていた。画面に映る、ちょっとおバカでかわいいワンコを見て、私は思わずぷっと吹き出してしまった。蓮は行動派だった。アタックすると言ったら、すぐに行動に移したのだ。次の日、二日酔いが少しマシになった頃、さっそく彼からデートのお誘いがきた。今日の蓮はカジュアルな服装で、明るいベージュの服装が、彼のとっつきにくい雰囲気を和らげているように見えた。そして車に乗ると、ふと昨日、彼の腕の中にいたことを思い出した。私は思わす胸が、少しだけドキドキした。でも蓮は私の気持ちに気づいていないみたい。だって、彼自身がすごく緊張しているようだったから。蓮は緊張すると、表情がこわばっちゃうみたい。笑わないでいるとクールに見えて、ちょっと距離を感じてしまうところがあるのだ。でもよく見ると、耳の先が真っ赤に

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status