LOGIN友人たちにはよく、私・篠原澪(しのはら みお)のことを「男を見る目がない」と言われていた。 佐伯慶吾(さえき けいご)、相沢浩介(あいざわ こうすけ)――続けて付き合ったふたりは、どちらもどうしようもないろくでなしだった。 だからこそ、桐谷怜司(きりたに れいじ)だけは違うと信じたかった。 穏やかで優しく、いつも気にかけてくれる彼は、これまでの不運を埋め合わせるために現れた人なのだと、本気で信じていた。 だが、その思い込みは呆気なく崩れた。 ある晩、彼は友人たちと酒を飲みながら、笑ってこう言った。 「澪の元カレ二人って、あの界隈じゃかなり遊んでたって有名だろ。そう考えたら俺だけ真面目に付き合ってるの、馬鹿みたいじゃない?」 その場にいた友人たちは面白がって、すぐに七瀬香楠(ななせ かなん)という女を呼んだ。 そのまま怜司は、朝まで戻ってこなかった。 胸が張り裂けそうな痛みの末に、私は彼への感情をすべて失った。 愛もない。憎しみもない。ただ、何も感じなくなった。
View More会場には、澪を迎えに来た男が二人いた。最後に、澪は一度だけ俺を見た。それからドレスの裾を持ち上げ、振り返ることなく去っていった。その背中を見送った瞬間、ふと思った。澪がこれまで付き合ってきた男たちの中で、俺はきっと一番目立たない存在だった。それでも澪は、俺と婚約までしてくれた。俺を選んでくれていた。もしあの夜、馬鹿な真似をしなければ。婚約したその日に、自分の醜い感情に負けていなければ。澪は本当に、俺の妻になってくれていたのかもしれない。失って初めて、自分が何を手にしていたのかを思い知った。それからしばらく、俺は半分おかしくなっていた。後悔してもしきれなかった。どうにかして、澪にこ
私はもう、誰かの裏切りに、自分の人生を預けたりしない。……怜司視点澪は、俺の初恋だった。本当に愛していた。それなのに、ふとした瞬間、どうしようもなく暗い感情が胸の奥で膨らむことがあった。澪が俺と一緒に笑った場所。俺の手を取った時の表情。俺にだけ向けてくれると思っていた甘えた声。そのすべてを、彼女は過去の男にも見せていたのだろうか。一度そんなことを考え始めると、止まらなくなった。友人たちは面白がって言った。「お前が一人の女で満足するタイプかよ」「桐谷が結婚したくらいで落ち着くとか、冗談だろ」笑って聞き流しているふりをした。けれど本当は、その言葉が少しずつ胸の奥に溜まってい
「それくらいの意地は見せて。これ以上、私に軽蔑させないで」怜司は追ってこなかった。ただその場に立ち尽くし、床をじっと見つめていた。本社で一年、各部署を回った。ようやく父が、私に会社を任せてもいいと言い出した。その夜、ささやかな祝賀会が開かれた。ささやかとはいえ、篠原家の本社で行われる会だ。会場には次々と客が訪れ、私のもとへ挨拶に来ては、グラスを掲げた。私はグラスを手に、落ち着いて笑い、ひとりずつ言葉を返していった。父は少し離れた場所から、その様子を見ていた。隠しきれない誇らしさと安堵が、その顔に浮かんでいる。その時だった。賑やかだった会場が、不意に静まり返った。入口のほうへ
私は唇の端を少しだけ上げた。「ほら。浩介だって、そんなに寛大じゃない」悔しそうに眉が寄る。何か言葉を探しているようだった。けれど私と目が合うと、やがて浩介は小さく息を吐いた。「……分かった」その声には、ようやく諦めに近いものが混じっていた。怜司のことは、確かにしばらく私を沈ませた。両親に半ば強引に海外旅行へ送り出され、見知らぬ街の景色を眺め、その土地の料理を食べた。何日もかけて、少しずつ呼吸を取り戻していった。そうしてようやく、私は帰国した。家に戻ると、リビングのテレビでは、桐谷家が経営する会社が破産手続きに入ったというニュースが流れていた。画面の中の怜司は、ひどく憔悴して見え