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第767話

作者: キラキラ猫
ブランドの担当者たちは皆、なるほどと合点がいったような顔をした。

先ほど遥と潤が、親しげな会話はおろか、ただ会釈を交わしただけだったのも、そのためか。

彼らはてっきり、九条家の人間だから身内贔屓を避けているのだと思っていた。

まさか、本当に仲が悪かったとは。

だがそれも分からない。

もしかすると、これすらも周囲の目を欺くための彼らの「芝居」である可能性もゼロではないのだから。

皆ビジネスマンである。そう簡単に騙されたりはしない。

たとえ仲が悪かろうと、結局は同じ九条家の一族だ。

金儲けの邪魔になるような真似を、本気でするはずがないだろう?

遥が自分の席に座っていると。

湊からメッセージが届いた。

【コンペは終わったか?】

【まだよ】

【お前たちの作品を見た。すごくいい出来だな】

遥は口角を上げた。

「縁結び」シリーズのことは、湊には全く見せていなかったのだ。

遥は文字を打って返信した。

【あなたみたいなセンスの持ち主に素晴らしいなんて言われると、逆に不安になるわね】

【……健太たちも、お前たちの作品が一番いいと絶賛していたんだ】

どうやらブラインド
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    外に出ると、健太が待っていた。「立花社長、社長からお迎えにあがるよう申し付かっております」「分かったわ、少し待って」遥は隣にいる二人、特に明らかに肩を落としている真理の顔を見つめた。「もう、気にしないで。もし落札してたら、毎日翔と顔を合わせなきゃいけなかったのよ。あなたはそれでいいの?」「……」それは嫌だ。翔が自分たち兄妹を陥れようと企んでいることを思うと、真理は怒りで歯噛みしたくなる。遥は優しい声で言った。「今日は帰ってゆっくり休みなさい。特別休暇をあげるから」健太が軽く咳払いをした。「コンペの件は通りませんでしたが、グループ社内の多くの従業員から『縁結び』シリーズの注文が入っています。ついでに申し上げますと、社長がご覧になった際、会議中だったんです。これから、お二人はお休みにはなれないかもしれません。実は、取引先のクライアントが『縁結び』シリーズに大変興味を持たれ、社員へのプレゼントとして、百セット以上の注文を入れたいとのことです」真理は目を丸くした。「百セット!?なんて太っ腹な会社なの?」「ウェディングプロデュースの会社です」健太はニコニコしながら言った。「今回の価格設定も、そこまでラグジュアリー路線というわけではありませんので、ある程度資金力のある会社であれば十分に手が届きます」真理は途端に顔を輝かせた。「ゴールドは少し重めに作れば、それだけで価格も上げられるわ!」九条グループのビルを出る前に、こんな大口の注文が舞い込んでくるなんて。 真理の先ほどの落選による落ち込みは、完全に吹き飛んでいた。彼女はすっかり有頂天になり、凛の腕を引っ張って「今すぐ会社に戻って仕事しなきゃ!」と騒ぎ始めた。ちょうどその時、翔が出てきた。 彼は真理の姿を見つけると、声をかけた。「真理、今回は残念だったな。俺も身内だからって特別扱いはできないんだ。結局、実力がある者が勝つ。ただそれだけだ。」真理は振り返って翔を睨みつけた。彼は会議室の前に立ち、片手をポケットに突っ込んでいた。その顔にはいかにも心配そうな、白々しい笑みが貼り付いており、真理をじっと見下ろしている。真理はギリッと歯を食いしばり、翔の顔面に向かって、思い切り中指を突き立てた。翔は一瞬呆気に取

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    ブランドの担当者たちは皆、なるほどと合点がいったような顔をした。先ほど遥と潤が、親しげな会話はおろか、ただ会釈を交わしただけだったのも、そのためか。彼らはてっきり、九条家の人間だから身内贔屓を避けているのだと思っていた。まさか、本当に仲が悪かったとは。だがそれも分からない。もしかすると、これすらも周囲の目を欺くための彼らの「芝居」である可能性もゼロではないのだから。皆ビジネスマンである。そう簡単に騙されたりはしない。たとえ仲が悪かろうと、結局は同じ九条家の一族だ。金儲けの邪魔になるような真似を、本気でするはずがないだろう?遥が自分の席に座っていると。湊からメッセージが届いた。【コンペは終わったか?】【まだよ】【お前たちの作品を見た。すごくいい出来だな】遥は口角を上げた。「縁結び」シリーズのことは、湊には全く見せていなかったのだ。遥は文字を打って返信した。【あなたみたいなセンスの持ち主に素晴らしいなんて言われると、逆に不安になるわね】【……健太たちも、お前たちの作品が一番いいと絶賛していたんだ】どうやらブラインド投票のシステムは、社内ネットワークを通じて秘書室のメンバーにも共有されているらしい。湊もそこで見たのだろう。【でも、どうしてそれがうちの作品だって分かったの?】【あまりにも群を抜いて美しかったからな。分からないはずがない】遥はそのメッセージを見て、深く息を吐き出した。心の中に、じわじわと喜びが満ちていく。しかし、それ以上に緊張していた。彼女にも、今回の九条グループのコンペを勝ち抜けるかどうかは分からなかった。潤が立ちはだかる以上、一筋縄ではいかない。彼が「àl'aub」や「アンサンブル」を、ジュエリー市場でやすやすと羽ばたかせるはずがないのだ。それにしても、湊がブランドロゴを隠し、全従業員にブラインド投票をさせたのは、実に先見の明があったと言わざるを得ない。真理は緊張で手汗をびっしょりとかいていた。彼女は遥の手をぎゅっと握りしめた。「義姉さん、もし今回落札できなかったら、絶対に私のせいだわ」「そんなこと言わないで。あなたのデザインは何も問題ないわ」デザインに関しては、確かに完璧だった。しかし、それを決定するのは翔なのだ。真

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