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10話. 蓮雨庵、深まる二人の夜

ผู้เขียน: YuIm
last update วันที่เผยแพร่: 2026-10-05 00:10:53

世田谷区成城。

蓮雨庵の深夜。

障子の外では、晩秋の風が竹林を大きく揺らしていた。

室内には沈香と蓬の香りが漂い、灯りの揺らぎが壁へ淡い影を落としている。

綾香は布団の端へ座り、ゆっくり呼吸を整えていた。

昼間、取締役会で鷹城家の親族たちと向き合っていた毅然とした姿は消え、今はただ一人の男を前にした女として緊張している。

心臓が速い。

この三年間、凍ったままだった感覚が、彼の足音一つで目を覚ます。

からり。

遼真が障子を閉め、内側の鍵を掛けた。

羽織を脱ぐと、薄い着物越しに鍛えられた身体の輪郭が浮かぶ。

手には温めた器と、灸の道具、鍼ケース。

「奥様」

遼真は寝具のそばへ片膝をついた。

大きな手が、綾香の震える手首を包む。

寸・関・尺に触れる指先。

脈はひどく速かった。

「昼の戦いは終わりました。ここでは、何も演じなくていい」

低い声が耳元へ届く。

遼真の指が、綾香の帯をゆっくり緩めた。

絹が肩から滑り、白い鎖骨が灯りの下へ現れる。

「遼真さん……私、三年間あの家で薬を飲まされて、身体も心も汚れてしまった気がする……」

「汚れていません」

遼真が指先で綾香の唇をそっと塞いだ。

「一度も」

心配と、隠し切れない熱が、その目に同居していた。

遼真は綾香の腰を支え、布団へ横たえる。

熱い胸が近づく。

手のひらが下腹部と鳩尾へ触れ、ゆっくりと圧をかけた。

熱が身体へ広がる。

綾香は目を閉じた。

彼の唇が首筋へ落ちる。

ずっと抱えていた悲しみも、怒りも、抑え込んだ声も、少しずつ溶けていくようだった。

それは、誰かに『治してもらう』だけの夜ではない。

綾香自身が、誰かに触れられてもいいと選んだ夜だった。

「もう、誰かのために我慢しなくていい」

遼真の声が胸に落ちる。

夜明け前。

遼真は綾香を抱き寄せたまま、薬指へそっと口づけた。

「僕の前では、鷹城家の嫁でも、会社の代表でもなくていい。ただの綾香さんでいてください」

綾香はしばらく黙っていた。

それから小さく笑う。

「その言葉、あとで撤回しないでくださいね」

「記録しておきます」

「そんな冗談も言えるんですね」

遼真の口元が、ほんの少し上がった。

その小さな変化が、どうしようもなく嬉しかった。

綾香は初めて、この家で『明日』を考えた。

追い出されることのない明日。

黒い薬椀を見て怯えなくていい朝。

嫌なものを嫌だと言える生活。

大げさな勝利より、今の綾香にはそういう日々が必要だった。

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