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第320話

Author: 玉酒
天翔は場所を告げたあと、念を押すように言った。「気をつけろよ。あいつは妙にずる賢いところがある。騙されるな」

美穂は軽くうなずき、それ以上何も言わなかった。

三人は食事を終えると、そのまま解散した。

最近、天翔は美羽に強引にミンディープAIプロジェクトへ押し込まれ、何日もまともに寝ていない。疲れが体に滲み出ている。

美穂や芽衣は帰宅して休めるが、彼はまだ会社に戻って残業だ。

天翔は全身からサラリーマン特有の苦労がにじみ出ていて、思わず尋ねた。「水村社長、私が辞職したら……そっちで雇ってくれたりする?」

美穂は一瞬驚いたが、すぐに唇に笑みを浮かべた。「いつでも歓迎します」

翌朝早く、美穂は律希を連れて警察署へ向かった。

警察署の前に着くと、律希には車で待つように指示し、自身だけがドアを押して降りた。

――面会室の鉄扉が開いたとき、美穂は壁の時計をぼんやり見つめていた。

同じ頃、面会室の扉が突然開いた瞬間、深樹は壁を見つめたまま、ぼうっとしていた。

物音に反応してゆっくりと振り返る。来たのが美穂だと気づくと、灰色に沈んでいた瞳が一瞬大きく見開かれ、驚愕がはじけた。

オーバーサイズの服は彼の細くなった体をよりいっそう貧相に見せた。

髪はほこりを帯び、顎には無精髭がうっすら浮き、かつて清流のように澄んでいた目は、今は泥水に濁ったように混乱と警戒が滲んでいる。

「……なんで来たのです?」彼は条件反射のように肩をすくめ、服で手をこすってから恐る恐る椅子を引いた。当惑と怯えがそのまま顔に出ている。

美穂は保温容器をテーブルに置いた。容器にはまだ温かみが残っている。「食べ物を持ってきた」

彼女の立場なら、そういった品を持ち込むのは難しくない。

深樹の視線が保温容器に数秒とどまり、ふいに彼女の顔へと戻った。

何かを思い出したのか、その目がかすかに赤く染まり、まつ毛に涙の粒が揺れた。唇を硬く結び、涙が落ちるのだけは必死にこらえている。

彼はただ美穂を見つめた。目の奥には、濡れた子犬のような、信じてもらえずに怯える理不尽な悲しみが満ちている。

「……僕、やってません」

たった一言。声は弱く、急いていて、語尾は震え、静まり返った面会室の中で異様なほど鮮明に響いた。

「分かってる」美穂の声は水面のように静かで、揺れがない。「ただ、事件の前に触った資
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