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第212話

Author: 小円満
私は足を止めた。ようやく目の前に小さな希望が見えた気がして、口を開く。「実は……私はもう結婚しています。夫は黒澤グループの社長、黒澤時生です」

高司の整った顔には、特に驚いた様子もなかった。軽く顎を上げ、続きを促す。

私は、時生がどうやって私を騙したのか、そして娘を愛人に育てさせていること――その一連の経緯を、できるだけ簡潔に話した。

「お話では、高司さんのところにはとても精度の高い調査システムがあって、極秘のことまで調べられると聞きました。私……心菜が本当に私の娘なのか、知りたいんです。証拠が必要なんです」

そう言い終えると、私は緊張で彼を見つめた。心臓が胸の中で激しく鳴っている。

高司は話を聞き終えても、表情をほとんど変えず、淡々と口を開いた。「悪い、昭乃さん。身内同士のいざこざには、興味はない」

その言葉を聞いた瞬間、全身が凍りつくような気がした。

胸の中で必死につないでいた希望が、一瞬で消えていく。

断られるかもしれないとは思っていた。それでも、実際に言われると、胸の奥が詰まったように苦しくなる。

私は無理に、泣くよりもつらい笑顔を作った。「……わかりました。
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