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第999話

Penulis: 木真知子
隼人の目のふちがじわりと赤くなる。声は掠れ、ほとんど懇願だった。

「俺がやってるのは、償いだ。命を張ってでも、桜子の『欲しかったもの』を取り返す。

お前たちが俺を許さなくてもいい。ただ――桜子を危険に晒さないでくれ。あの子の性格は、兄のお前が一番わかってるはずだ」

ようやく歩み寄れた関係だ。元に戻るのが怖い。

それでも、彼が一番恐れているのは――桜子の身に何か起こること。

樹は、少し脅すつもりだった。だが、返ってきたのは剥き出しの胸の内。

短い沈黙。そして、真顔で頷く。

「いいだろう。動け。ただし――一緒にやる」

前線で隼人が刃を研いでいる頃、盛京は荒れていた。

今日は宮沢グループと、M国のJグループによる大型提携の要会議。

光景と役員陣は早々に会議室へ。

だが、肝心の社長・隼人がいない。

宮沢家の評判は、秦の一件で地に落ちた。

海外メディアにまで広がり、結局国際的な赤っ恥となった。

株価も三日連続の暴落。胸がざわつく。

財閥として国内案件は耐えるかもしれない。

だが、海外は別だ。

この局面で――海門の高城家、盛京の白石家、さらに本田家。どこも、隙あらば国外シェアを食いに来る。

今こそ社長が腰を据えるべき時。皆の心を繋ぎ止め、場を持たせるべき時。なのに、姿がない。信じ難い。

会議室の最上座。光景の顔は沈み、全身から冷気が立つ。下座では役員・大株主がひそひそ話している。

「もう時間だぞ。社長、来ないんじゃないか」

「いや、まさか......社長は昔から超ワーカホリックだ。宇宙が爆ぜても出社する人だろ」

「それは『昔』の話。今?さぁね」

「どういう意味だ」

「社長は今、高城家の桜子様に夢中。仕事どころじゃないさ。今ごろも忙しいんじゃない?」

忍び笑いが走る。

「でもよ、内憂外患のこの時期に、社長が顔を見せないってのは致命傷だ。Jグループは無礼と取る。交渉、飛ぶぞ」

その囁きが、光景の耳にも刺さる。

机上の手がゆっくり握り込まれ、眉間の溝が深くなる。

その時、携帯が震えた。

画面を伏せ目で見て、光景の目が一瞬止まる。

発信者は長男――隼人の兄の賢一だ。

遠隔会議まで五分もない。

光景は通話を切り、端末を伏せた。

――会議が開始した。

正直、期待している者は少ない。

社長不在。誠意ゼロ。

誰がこんな相
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