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第1058話

Auteur: 木真知子
白露は鼻をすんと鳴らし、目の奥に冷たい光を宿した。

「......あのこと、全部お母さんが高原に命じたんでしょ?私には関係ないわ。巻き込まないで」

「この、出来損ないの娘が!」秦の怒声が部屋に響く。

「こんな時に自分だけ逃げようっての?母親が危険な目にあってるのに、手も貸さずに隠れる気?私が捕まったら、お前も無事じゃ済まないんだからね!」

その目の険しさに、白露は背筋が凍った。

――もう、この二人の関係は母娘じゃない。同じ泥にまみれた『共犯者』だ。

「それで、どうするつもり?また何か企んでるの?」白露は歯を食いしばって、吐き捨てるように言った。

秦の顔から血の気が引き、冷気のような声が落ちた。「――高原を殺す」

「か、殺す?でも今あいつ、警察に捕まってるのよ?どうやって?」白露はもう『殺す』という言葉に怯えもしない。

母に育てられた年月が、彼女の良心を鈍らせていた。考えるのは恐怖ではなく――方法だった。

「刑務所の中にはね、人の命を金で扱う者がいくらでもいる。金さえ渡せば、簡単に『事故』を起こせるわ。あの男を消すのなんて、造作もない」

そう言って、秦は机の引き出しからカードを取り出し、白露に放り投げた。「この中のお金、全部使いなさい。早く片をつけて。私を待たせないで」

白露はそのカードを握りしめた。手の中にあるのは、金属でも権力でもない――鋭い刃だった。

「......お母さん。この件は私がやる。でも条件があるの」

「条件?あなた、母親に取引でも持ちかける気?」秦は腰に手を当て、怒りで震える指を白露の鼻先に突きつけた。

白露は落ち着いた声で言い返した。「母さん、正直に言うけど――お父さん、もう母さんを見限ってる。

初露のあの小娘は、優希といちゃついてるし、桜子とも仲良し。あの子は使い物にならない。母さんに残された味方は、私だけよ」

その冷笑に、秦は眉をひそめた。

......この娘、私にそっくりだ。だからこそ、怖い。

「それで、何が望みなの?」

「優希はもう私を嫌ってる。どうやっても一緒になれない。だったら――初露も、絶対に優希と結婚できないようにしてやる」

白露の声は、牙をむいたように鋭かった。「今夜、優希は初露を連れてお父さんのところに来たの。

三人で仲良くおしゃべりしてた。あの様子じゃ、お父さんも二人の仲を認めたも同
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