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第 306 話
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初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん 第 403 話
藤崎家のボディーガードたちは顔を真っ赤にして心の中で叫んだ――ふざけるな！けれど和也は顔色ひとつ変えず、淡々と言った。「明菜さんが戻ったら、あなたたちも入っていいですよ」その言葉が落ちると同時に、エレベーターの方から明菜が姿を現した。記者の群れを見た瞬間、マスクの下の表情が一気にこわばる。母が頼んだワンピースを手に、人混みを抜けて病室へ向かった。「芳江、着替えるの手伝って」雅子がそう言って、芳江を呼ぶ。「お母さん、私が手伝うよ」「いいのよ」雅子は振り返りもしなかった。母の失望が肌でわかって、明菜は拳を強く握った。爪が割れて、痛みが走る。十分ほどして、雅子が出てきた。彼女は自
初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん 第 402 話
明菜は帰っていった。和也は止めなかった。夜も更け、人の気配も静まり返っている。今は報道を呼ぶような時間じゃない。入院しているのは彼女だけじゃないのだ。自分のしたことは自分で責任を取ればいい。他の患者の迷惑になるわけにはいかない。「和也さん、逃げたりしないと思う？」和也はノートパソコンの画面をいじりながら答えた。「逃げるって？どこへ行くっていうんだ。根っこはここにある」逃げたところで関係ない。藤崎家の夫婦が出てきさえすれば、意味は同じことだ。……高瀬家。亜紀は娘のことが心配で落ち着かない。「いったい誰が手を出したの？」彼女は夫のように冷静ではいられない。雅俊は薬を飲み終えると
初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん 第 401 話
卑劣者ども？誰のことか、言うまでもない。明菜はこれほどまでに侮辱されたことなど一度もなかった。しかも、こんな言葉を使われたことも！「和也秘書、これはあくまで私たち二家の問題よ。あなたは……」「あなたにとっては私事でも、私にとっては仕事です。給料をもらっている以上、上司のために働くのが筋でしょう。明菜さんも少し理解していただけると助かります」和也はまるで図太いベテランのようで、どんな言葉も彼の前では通じなかった。背後の若い助手は、そんな彼のやり方を黙って観察している。「それで、どうしろと言うの？」と雅子が問いかける。和也は落ち着いた声で言った。「お嬢さんご本人に、これまでの数々の
初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん 第 400 話
病室があまりに騒がしかったせいか、和也は立ち上がって病室の外へ出て、喫煙スペースを探した。そばにいた若手の助手が小声で言う。「和也さん、こんなことしたら、藤崎家と同じように非難されませんか？道義に反するって言われるんじゃ……」煙草を吸いながら和也は一瞥をくれた。その視線は、愚かな人形を見るみたいだった。「道義？そんな奴らに道義を語る意味があるか？私が雅子さんを気絶させなかっただけでも十分道義的だ。私たちは何をしに来た？同じ手段で返すためだ。社長ができない、やりたがらない、都合が悪いことを私がやる。名誉の汚れは私が背負う。それが私の役目だ」助手は黙って親指を立てた。言ってしまえば、和也
初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん 第 399 話
「和也秘書？」明菜が立ち上がった。入ってきたのは、中村グループの秘書室長・鈴木和也（すずき かずや）だった。普段から忙しく、亮介よりもさらに忙しいと言われている。亮介が手を離せない案件は、すべて彼が代わりに処理しているほどだ。そのため、持っている気迫も申し分ない。――もしかして、由紀子が亮介と話をしたのだろうか？だから彼がここに来た？そう考える一方で、藤崎夫婦の顔色はあまり良くない。明菜はスマホを置き、口元に笑みを浮かべて言った。「和也秘書、外でお話ししよう」和也はゆっくりと病室に入ってきた。全身から冷気をまとい、誰も軽々しく口を開けない。パサッ――透明なカバーに包まれた
初恋を忘れられないあなたへ、継母なんてもうごめん 第 398 話
彩乃さえいなければ、自分が少しずつでも亮介の心の中で、彩乃の代わりになれると思っていた。明菜は目を開け、ダイニングの方を見つめた。もう亮介と一緒になれるなんて幻想は抱いていない。けれど、壊れた夢には、誰かが責任を取るべきだ。だから彩乃……あなたには、消えてもらうしかないの。いいわね？……車の中。五分ほどして、運転手が息を詰めたように言った。「お嬢様、さっき……彩乃さんがあなたの考えていることを察してるって言ってましたよね。それなら……」明菜はそれでも、当初の計画通りに進めると決めていた。病室での彩乃の推測は、すべて当たっていた。でも、それがどうしたというの？わかったとこ
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