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第 432 話

Auteur: 柏璇
電話の向こうが、ふっと静まり返った。

数秒の沈黙のあと、拓海が口を開いた。

「……失礼ですが、璃音のお母さんですか?」

美穂はすぐに応じた。「はい、私は璃音の母です。拓海さんですね?」

まだ顔を合わせたこともないし、相手は自分の事業を持ち、実力もある人。何の関係もないうちは「拓海さん」と呼ぶのが礼儀だと思っていた。

「おばさん、拓海と呼んでもらえれば大丈夫です」

その言葉に、美穂は思わず笑みをこぼした。「じゃあ、拓海ね。それじゃ、二人で話してちょうだい」

そう言って、美穂は璃音に「優しく話すのよ」と合図し、そっと部屋を出ていった。

璃音はスマホを握ったまま、少し緊張した面持ちで息を整えた。

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