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第 488 話

Auteur: 柏璇
明菜はもう追い詰められて、ようやく幾重にも重ねてきた仮面を捨てたのだろう。

目の前の数人に本性を知られようが、もうどうでもいい。ここまで関係が壊れてしまえば、隠す意味なんてない。

穏便に装って弱々しく振る舞ってみせたのも、結局は人を煽って味方を増やすための卑しい手だった。

けれど,まさか真理がここまで振り切って暴れるとは、明菜は想像もしていなかった。

以前の真理は小心者で、世間体ばかり気にしていたはずなのに!

それなのに、どうして今は恐れないのか?

自分で自分の退路を断って、全員を敵に回したあと、ひっそり隅で縮こまることになるって、怖くないの?

明菜が真理を脅すふりをしていたのは、ただ彼女の本
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