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第626話

作者: 春さがそう
武雄の殺害と現場の偽装を完璧に終えた蓮は、舞台を降りる役者のように、何一つ痕跡を残さず、静かに、優雅に、罪悪に満ちた入院棟を後にした。

彼はあの隠れ家であるセーフハウスへと戻った。

ドアを開けた瞬間、濃厚な赤ワインの香りが鼻をついた。美琴はとっくに彼を待っていた。艶めかしいシルクのネグリジェを纏い、ソファに斜めに寄りかかり、ボルドーワインの入ったグラスを優雅に揺らしていた。まるで凱旋する将軍を待つ女王のように。

蓮が入ってくるのを見ると、彼女はすぐに立ち上がり、隠しきれない切迫した期待を顔に浮かべた。

蓮は彼女に向かい、ゆっくりと「OK」のハンドサインを送った。その顔には、抑えきれない得意と残忍さが張り付いていた。

「片付いたぞ」

彼の声は興奮で少し嗄れていた。

「あの老いぼれは、今頃……冷たい死体だ」

その知らせを聞き、美琴の喉元までせり上がっていた心臓は、ようやく完全に、どっしりと元の位置に落ち着いた。彼女の顔に、瞬時にして燦爛たる、それでいて無比に悪毒な笑顔が咲き誇った。

彼女はあらかじめ用意しておいた、なみなみと注がれたもう一つのワイングラスを掲げ、彼を迎えた。

「お兄様」

彼女の声は蜜のように甘かった。

「お祝いよ。お疲れ様」

チン――

クリスタルグラスが空中で清らかに触れ合い、深紅の液体が灯りの下で揺れる様は、先ほど武雄の体から流れ出した温かい血によく似ていた。

美琴は柔らかいソファに身を沈め、長く、満ち足りた息を吐き出した。

「これで」

完全にリラックスした気だるさを滲ませて言った。

「私たちの唯一の危機は、完全に去ったわ。シャンデリアの件が私たちの仕業だと証明できる人間は、もう誰もいない」

彼女はグラスを揺らし、そのいつも潤んだ瞳に、骨まで凍るような冷光を宿らせた。彼女の狩りは終わっていない。話題はすぐさま、次の、そして最後のターゲットへと向けられた。

「次は、ベッドに寝たきりの白石紗季ね」

蓮もワインを大きく一口飲み、貪欲な笑みを浮かべた。

「その通りだ!白石紗季さえ始末すれば、黒川隼人はお前のもの、黒川グループ全体が……」

「いいえ」

美琴は彼を遮り、冷笑した。

「そんなに楽に死なせてはやらないわ。ゆっくり時間をかけて甚振ってやるの。本物の生ける屍みたいに、感覚はあるのに、喋れず、動けないようにし
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