ログイン24歳で処刑された侯爵令嬢ルピナス・カーディナル。 王妃候補として国のために尽くしてきた彼女だったが、大好きだった婚約者の第一王子ローゼンは隣国の王女に心を奪われ、「俺の言うことを聞かないならお前は要らない」と冷たく言い放つ。裏切りの果てにギロチンで命を落とした―― しかし次に目を覚ますと、処刑される一年前へと時が巻き戻っていた。 そして再び訪れた運命の日。 「もし良かったら―」 「結構です!!」 今度の人生で同じ失敗は繰り返さない! 元婚約者を全力回避しながら、自分の夢と未来を切り開くルピナス。だが、彼女を振ったはずの王子はなぜか執着を始めて……? 笑ってスカッとできる、人生やり直しラブコメファンタジー!
もっと見る春。世界樹は今年も、美しい藤色の花を咲かせていた。柔らかな風が花びらを運び、王都は穏やかな笑顔に包まれている。あの日から、半年。かつて戦乱に揺れた王国は、ローゼン王のもとで少しずつ復興を遂げていた。市場には活気が戻り、子どもたちは安心して笑い、旅人たちも「この国は温かい」と口をそろえる。「本当に変わったな。」城下町を見渡しながら、フジは穏やかにつぶやいた。その隣で、ルピナスも優しく微笑む。「みんなが頑張ったからですね。」「ああ。」ローゼンは王として国を導き、マーガレットは王妃として民に寄り添う。ダリアは王宮で相変わらず慌ただしく働きながらも、笑顔を絶やさない。ヘリアンサスは騎士団長として若い騎士たちを育て、ラベンダーもそれぞれの場所で新しい人生を歩んでいた。誰一人として、前世と同じ結末を迎えた者はいない。未来は変えられたのだ。「ルピナス。」フジが優しく手を差し出す。「行こう。」「はい。」二人は手をつなぎ、世界樹の丘へ向かった。初めて心を通わせた場所。互いの想いを確かめ合った場所。そして、結婚を誓った場所。世界樹は、すべてを見守ってきた。丘へ着くと、一人の少女が転んで泣いていた。ルピナスはすぐに駆け寄る。「大丈夫?」少女は涙を拭きながら頷く。「ありがとうございます。」その様子を見た母親が深々と頭を下げた。「王妃様、本当にありがとうございました。」ルピナスは首を横に振る。「私は特別なことはしていません。」「困っている人がいたら手を差し伸べる。それだけです。」少女は笑顔になり、母親と手をつないで帰っていった。その背中を見送りながら、フジが微笑む。「やっぱり、お前らしい。」「そうですか?」「ああ。」「だから皆がお前を好きになる。」ルピナスは照れ笑いを浮かべた。二人は世界樹の下に腰を下ろす。風が吹き、藤の花びらが二人の肩へ舞い降りた。「フジ。」「なんだ?」「私、幸せです。」その一言に、フジは静かに笑う。「俺もだ。」「前世では、守れなかった。」「処刑台へ向かうお前を見送ることしかできなかった。」「……でも今世は違う。」ルピナスはフジの手を強く握る。「あなたが未来を変えてくれました。」「違う。」フジはゆっくりと首を振る。「未来を変えたのは、お前自身だ。」「あの日、お
結婚式の翌朝。王城の窓から差し込む朝日が、部屋を優しく照らしていた。窓辺では、小鳥たちがさえずり、世界樹の葉が朝風に揺れている。ルピナスはゆっくりと目を開けた。「……朝。」昨日までとは違う景色。薬指には、銀色の指輪が静かに輝いている。思わず微笑みがこぼれた。「本当に……夫婦になったのね。」その時。「起きたか。」優しい声が聞こえた。振り返ると、フジが窓辺で紅茶を淹れていた。「おはよう。」「おはようございます。」まだ少し照れくさそうに笑い合う二人。「眠れましたか?」「少しだけ。」ルピナスは照れながら答える。「昨日はいろいろありすぎて。」「俺もだ。」フジはカップを差し出した。「熱いから気をつけろ。」「ありがとうございます。」湯気の立つ紅茶を口に含むと、心まで温かくなっていく。穏やかな朝だった。戦いも、陰謀も、恐怖もない。ただ、大切な人と迎える朝。それだけで十分幸せだった。「今日はどこかへ行きませんか?」ルピナスが尋ねると、フジは嬉しそうに頷いた。「ああ。」「二人で歩こう。」◇王都では、人々が二人を見つけるたびに笑顔で声をかけた。「ご結婚おめでとうございます!」「末永くお幸せに!」花屋の少女は藤の花束を差し出し、パン屋の主人は焼きたてのパンを持たせてくれる。ルピナスは何度も頭を下げた。「こんなにも祝福していただけるなんて……。」「それだけ、お前は皆に愛されている。」フジは誇らしそうに微笑んだ。二人は市場を歩き、小さな露店で焼き菓子を分け合う。「あ。」ルピナスの口元についたクリームを見つけ、フジはそっと指でぬぐった。「もう……恥ずかしいです。」頬を赤くするルピナスを見て、周囲の人々から温かな笑い声が上がる。「仲がいいねぇ。」「見ているこっちまで幸せになるよ。」その言葉に、二人は照れながら顔を見合わせた。◇夕方。二人は初めて出会った世界樹の丘へ足を運んだ。夕日に照らされた世界樹は、あの日と同じように優しく輝いている。「ここから始まりましたね。」ルピナスが懐かしそうにつぶやく。「ああ。」「あの日、お前を守ると決めた。」フジは静かに言葉を続けた。「でも今は違う。」「守るだけじゃない。」「一緒に笑って、一緒に悩んで、一緒に年を重ねたい。」ルピナスの瞳に涙が浮か
「乾杯!!」王城の大広間に、祝福の声が響き渡った。長い戦いを乗り越えた仲間たちが、一堂に会する。今日は戦勝祝いではない。フジとルピナス、二人の新たな門出を祝う宴だった。「本当におめでとう!」真っ先に駆け寄ってきたダリアは、ルピナスに勢いよく抱きついた。「もう……泣かないって決めてたのに。」「ダリア。」「幸せになってね。本当に、本当に……。」言葉にならない想いが涙となってあふれる。ルピナスも目を潤ませながら、親友を優しく抱きしめ返した。「ありがとう。」その様子を見ていたマーガレットも、そっと微笑む。「今日は泣いても許される日ですね。」「そうね。」三人は笑い合った。その時、楽団が優雅な演奏を始める。「新郎新婦、最初の一曲を。」司会役のヘリアンサスが声を上げると、大きな拍手が広がった。「行こう。」フジは優しく手を差し伸べる。「はい。」ルピナスはその手を取り、ゆっくりとホールの中央へ歩き出した。音楽に合わせ、二人は静かに踊る。見つめ合う瞳。重ねられた手。その姿は、まるで一枚の絵画のようだった。「綺麗だな。」「もう……今日は何度目ですか?」「何度でも言う。」フジは照れることなく微笑む。「世界で一番綺麗だ。」ルピナスは恥ずかしそうに笑いながら、そっと彼の肩へ額を寄せた。会場中が温かな拍手に包まれる。宴も終盤を迎えた頃。ローゼンがゆっくりと立ち上がった。「皆、聞いてくれ。」自然と会場が静まり返る。「私は前世で、多くの過ちを犯した。」「だが今世では、多くの仲間に支えられ、この国を守ることができた。」ローゼンはフジとルピナスを見つめる。「二人が歩む未来が、この国の希望だ。」「心から祝福する。」大きな拍手が鳴り響いた。ルピナスは胸がいっぱいになり、深く頭を下げる。宴の最後。庭園へ出ると、夜空いっぱいに花火が打ち上がった。色鮮やかな光が世界樹を照らし、藤の花びらが夜風に舞う。「綺麗……。」ルピナスは思わずつぶやく。フジはそっと彼女の肩を抱いた。「これから毎年、一緒に見よう。」「はい。」寄り添う二人の背中を、仲間たちは優しい笑顔で見守っていた。祝福の宴は終わった。しかし、二人の物語はまだ始まったばかり。翌朝、夫婦となった二人は、誰にも邪魔されない穏やかな時間の中で、未来への約
結婚式当日。世界樹の鐘が、王都中へ優しく響き渡った。城門から教会まで続く道には、藤色の花びらが敷き詰められ、人々が祝福の笑顔で二人を待っている。「綺麗……。」純白のドレスに身を包んだルピナスは、小さく息をのんだ。胸元には、母から受け継いだ紫水晶のブローチが静かに輝いている。「よく似合っている。」サクラディウスは目を細めた。「お母様も、きっと喜んでいますね。」その言葉に、ルピナスは涙ぐみながら微笑んだ。「行こう。」父に手を添えられ、一歩ずつバージンロードを歩き始める。その先には、正装に身を包んだフジが立っていた。彼の瞳には、ルピナスだけが映っている。やがて父はルピナスの手を取り、フジへと託した。「娘を、よろしく頼む。」「はい。」フジは力強く頷く。「命ある限り、一緒に笑い、支え合い、生きていきます。」サクラディウスは満足そうに微笑み、静かに二人の手を重ねた。教会の中は静寂に包まれる。神官がゆっくりと問いかけた。「あなたは、この人を生涯愛し、喜びの日も悲しみの日も共に歩むことを誓いますか。」「誓います。」二人の声が重なる。指輪が互いの左手にはめられる。その瞬間。世界樹から無数の藤の花びらが舞い上がり、教会の窓から祝福するように降り注いだ。誰かが拍手を送る。それをきっかけに、大きな祝福の拍手が広がった。ダリアは涙を流しながら笑い、マーガレットもハンカチで目元を押さえている。ローゼンは腕を組み、優しく微笑んだ。「やっと幸せになれたな。」フジはルピナスへ向き直る。「ルピナス。」「はい。」「愛している。」短い言葉だった。けれど、その一言には、前世で守れなかった想いも、今世で積み重ねてきた日々も、すべてが込められていた。ルピナスの瞳から一筋の涙がこぼれる。「私も……愛しています。」二人は静かに抱きしめ合った。処刑台へ向かうはずだった少女は、今――愛する人の腕の中で、世界一幸せな花嫁になっていた。祝福の鐘は、いつまでも王都へ響き渡る。そして祝宴の夜、仲間たちが二人のために用意していた"最後のサプライズ"が幕を開ける──。(第82話 祝福の宴)
ローゼン王子は決意した。調査が必要だ。なぜルピナスが自分を振ったのか。なぜ避けるのか。なぜ「結構です!!」なのか。その謎を解かなければならない。王族として。未来の国王として。そして何より。一人の男として。「殿下」側近が声をかける。「なんだ」「現在何をなさっているのでしょう」ローゼンは真剣な顔で答えた。「尾行だ」側近は頭を抱えた。学院の放課後。ルピナスは上機嫌だった。隣にはダリア。今日も美人である。「ダリアー!」「なんですの」「ケーキ!」「知っていますわ」「楽しみね!」「貴女は犬ですの?」ルピナスは笑った。前世ではほとんど話せなかった。
帰りの馬車の中。ルピナスは向かい側に座るフジを見つめていた。フジは窓の外を見ている。無言。ひたすら無言。静かだった。あまりにも静かだった。ルピナスは耐えられなくなった。「フジ」「なんだ」返事は早い。「趣味は?」「剣術」「それ仕事では?」「そうだな」会話終了。ルピナスは困った。ダリアがいたら笑っていただろう。「好きな食べ物は?」「米」「子供?」「違う」会話終了。ルピナスは天井を見上げた。何この人。難しい。しばらくして。フジが口を開いた。「お前」「なに?」「なぜ王子を振った」ルピナスは固まった。核心だった。聞かれると思っていた。
ダリアは頭を抱えていた。目の前には満面の笑みを浮かべたルピナス。意味が分からない。本当に意味が分からない。「友達になりましょう」「断りますわ!」即答だった。教室中が頷いた。当然である。普通ならここで終わる。だが。ルピナスは普通ではなかった。「そう」「そうですわ」「じゃあ明日また聞くわ」「聞かなくて結構です!!」ダリアは思わず叫んだ。ルピナスは感心したように頷く。「良い声ね」「何を言ってますの!?」「将来有望だわ」「何がですの!?」ダリアは混乱していた。授業終了後。ルピナスは帰宅準備をしていた。そこへ。ローゼンが現れる。「ルピナス」「結構
翌朝。第一王子ローゼンは寝不足だった。目の下にはうっすらと隈。朝食のパンを見つめながら呟く。「なぜだ……」隣にいた国王が顔を上げた。「何がだ?」「なぜ振られた」国王はパンを落とした。「は?」「ルピナスに振られた」「誰が?」「俺が」「ルピナスに?」「そうだ」国王は頭を抱えた。朝から重い話だった。「何かしたのか?」「していない」「本当に?」「していない」国王は疑わしい目を向けた。ローゼンは真剣だった。本気で分からないのだ。「ルピナスは昔からお前を好いていただろう」「そうだ」「ではなぜだ」「それが分からない」親子揃って分からなかった。その頃