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第75話

Author: 春さがそう
階下の病室。

隼人は厳しい表情でドアの前に立ち、ノックして声をかけた。

「美琴」

美琴は頬杖をつきながら、マーケティング系のアカウントが投稿した記事を微笑みながら眺めていた。そこには、彼女と「彼氏」がどれほど仲睦まじいかという憶測が並んでいる。

隼人の声が耳に入った途端、美琴はすぐにスマホをしまい、彼に笑みを向けた。

「隼人、来てくれたのね」

「一緒に来てくれ。紗季のところで、ちょっとしたことがあった」

隼人の表情は冷ややかで、いつもとは違っていた。

美琴はぱちりと瞬きをし、ためらいがちに尋ねた。

「何があったの?」

「来ればわかる」

隼人は説明せず、背を向けて歩き出した。

美琴は気持ちを整えると、慌ててベッドを降りて後を追った。胸の中では、すでに見当がついている。

――私が投稿した写真に、紗季が反応したのだろう。

あの病弱な体は、とうに刺激に耐えられない。

今も感情の起伏を繰り返し、悲嘆と落ち込みに沈み、そこへあの写真を見た。もう衰弱しきっているに違いない……

美琴は隼人の背を追いながら、心の奥では「紗季なんて早く死ねばいい。自分の邪魔をするな」とさえ思っていた。

やがて二人は足早に紗季の病室へ着いた。

中では、航平が紗季と話していた。

紗季は顔色こそ冴えなかったが、重篤な様子はどこにもない。

救急の騒ぎもなければ、今にも息絶えそうにベッドに崩れ伏す姿もない。その光景を目にした瞬間、美琴は激しい失望に奥歯を噛みしめた。

それでも彼女は、わざとらしく首をかしげてみせる。

「隼人、何があったの?どうして急に私を呼んだの?」

隼人はスマホを開き、美琴の投稿を表示させた。

「この写真の男は誰だ?どうして俺と同じ腕時計をして、同じ色の服を着ている?」

美琴は一瞬動きを止め、目を細めた。

紗季は冷ややかにその様子を見て、二人芝居にしか思えなかった。

彼女は淡々と言った。

「美琴さん、あなたを困らせたいわけじゃないの。でも、隼人と何かあるのなら正直に言いなさい。写真がすべてを物語っているでしょう?」

美琴は少しの後ろめたさも見せず、ただ紗季を戸惑ったように見つめ、信じられないという表情を浮かべた。

「どういう意味?私と隼人の関係が普通じゃないって疑っているの?」

「違うの?」

紗季は落ち着いた声で言う。

「違うと
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