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第十九話

Author: 麻木香豆
last update Last Updated: 2025-11-17 07:47:01

 寧人は仕事を終えると、着替えもそこそこにベッドへ倒れ込んだ。じん、と重さの残る瞼をそっと押さえる。そこへ、一護が美容院で使うタオルウォーマーから、ふかふかに温められたタオルを取り出して持ってきた。

「はい。今日も、目がんばったでしょ」

 差し出されたタオルは相変わらず熱々で、広げるたびに寧人は「熱っ……」と情けない声を漏らしてしまう。それでも、乗せてしまえばあの気持ちよさには抗えなかった。じんわりと温かさが染み込み、仕事の疲れが溶け出していく。

 ――そういえば、数時間前のことだ。

 突然連絡をくれた古田が、いつになく神妙な面持ちで現れた。言葉を選ぶように何度も頭を下げ、途中から涙をこぼしながら謝罪を続けてきた。

「大丈夫です。そんな……そこまで謝らなくても。反省してるなら、それで」

 年上の彼を寧人が宥める形になったのが、少し不思議でもあった。

(困った顔を見るのが好きって……変わった人だなぁ)

 ふっと思い返していると、頭にひやりと指先が落ちた。

「うわっ」

「ただいま。一護だよ」

 優しい声とともに、温かい気配がすぐ傍に降りてくる。

「……おかえり。びっくりした」

 タオル越しに返すと、一護の指がそのまま寧人の頭皮をほぐし始めた。十本の指がゆっくり沈み、ほどけ、また押し返す。息が漏れそうなほど気持ちいい。

 ふわりと漂うコロンの香りは、一護がよくつけている落ち着いた香調のもの。加減の見事なマッサージは、元美容師ならではの確かな技だ。

 寧人は力を抜き、ただその手に委ねた。

 今日の疲れも、さっきまで胸に残っていたざわつきも、すべて溶けていくようだった。

  彼は少しどきっとした。

 触れられた場所から、じんわりと熱が広がっていく。

 人に触られることがほとんどなかった人生。だが一護と一緒に暮らし始めてから、寧人の身体は変わってしまった。

 一護に触れられると、まるで電気が走ったように敏感になるのだ。全身の血が、一瞬で“ある一部”へ流れ込んでしまうような、あのどうしようもない感覚。

 本来なら恥ずかしくて仕方がない。

 けれど──一護ならいい。

 寧人は、彼の前でだけは自分をさらけ出してしまう。

 頭の上あたりから、ふふふっとくぐもった笑い声が降ってきた。

 その声に、寧人はますます息が荒くなる。

「寧人、私がそれ……マッサージしてあげる」

「えっ……?」

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