ログインとある、男の娘と男子の、相思相愛の初恋物語――。
もっと見る「おっかま! おっかま! おっかっまー!」
ある男子が、そうボクをからかうと、ダッシュで逃げていく。
しかし、それを追う影が!
「オラァ!」
ボクをからかった男子が、キツイげんこつを一発頂戴する。そして、「ちくしょー! オカマナイトー!」なんて捨てぜりふを吐いて、逃げていく。
彼を追いかけた男子……。同級生の「タケル」くんは、意にも介さず、ゆうゆうと戻って来る。
「まったく、どいつもこいつも、おめーのことを……」
「ありがとう。ほんとに、どうしてだろうね」
地面に、寂しい視線を落とす。
ボクは、青いフレアスカートに、白のブラウス。そして、純白のランドセル。スニーカーは女物。ロングヘアが、風になびく。
でも、性別は男……ということになっている。
「あんなの、気にすんな! また、あーいうのがいたら、ぶん殴ってやる」
「気持ちは嬉しいけど、暴力はやめようね」
ちょっと、困り笑い。
実際、タケルくんは足がとても早く、背も高いので、あっという間に追いついて、強烈なげんこつをお見舞いする。
でも、彼が暴力を振るうのは、いじめっこに対してだけ。特に、よくボクのために戦ってくれる。
たびたび指導室に呼び出されるけど、動機を堂々と話すと、相手の保護者も、教師も、それ以上強く追求できなくなるらしい。
「いけね、授業始まるぞ! いこーぜ!」
ふたりで、ばたばたと昇降口に向かうのでした。
◆ ◆ ◆ お昼休み後。ボクの哀しみのひとつは、女子トイレを使わせてもらえないこと。
お医者さんが言うには、ほんとにボクの心が女なのか、それとも、ただの女装愛好なのかが、まだはっきりしないらしい。
たしかにそう言われると、ボク自身、どっちの道を生きたいのか、まだよくわからない。
だから、今は男性化を止める薬だけで、様子を見ているところ。
ただ、トイレは男子トイレでも必ず個室を使って、座って小をする。立ってなんか、絶対ヤダ。
水を流して洗面台に向かうと、タケルくんが、水だけで手洗いを、済まそうとしてるとこだった。
「石鹸、使ったほうがいーよ? ほら、例の病気とか、あれだし」
実のところ、ボク自身が、男子特有の、手を洗わなかったり、水だけで済まそうとするムーブが、どうにも苦手なんだけど。
「あー、わかったよ」
石鹸で、手を洗い直す彼。ボクも、石鹸で手洗い。
そして、ハンカチで手を拭いていると、タケルくんは、手を振って、水気を払うだけ。
「貸してあげる」
ハンカチを差し出すと、「おう、サンキュ」と言い、受け取る。そして、広げると……。
「お! マリ○リじゃん! お前も、マリルリ好きなの!?」
「え! タケルくんも!? マリ○リ、かわいいよね!」
「ん? いや、そーゆーんじゃなくて、『ちからもち』とかさ……」
「強さ」を基準に、マリ○リ熱を語る彼。
同じ「好き」でも、随分方向性が違う。ボクは、逆に強さとか、どうでもいいんだけどなあ……。
手を拭き終わると、「サンキュ」ともう一度言って返してくれ、予鈴が鳴ったので、二人で教室に向かうのでした。
◆ ◆ ◆ そんな日々が過ぎていき、まもなく夏休み。「あのさ、ちょっといいか?」
放課後、タケルくんに、ついてくるよう促される。
やってきたのは、体育館の裏。
「あのさ、オレさ。その、えーとさ……」
なんだか、話を切り出しにくそうにして、もじもじしている。
「あ~! 男は度胸! オレさ、前々からお前のこと、いいなって思っててさ! でさ、その、付き合いたいって言ったら変か!? ……初恋、しちまった」
間。蝉の声が、響き渡る。
「変じゃないよ。ボクをずっと守ってくれたタケルくんが、なんでそんな事言うの。ボクも、タケルくんのこと、ずっと好きでさ、これが初恋。初恋同士で、相思相愛だったんだー」
くすっと微笑む。
「なあ……抱きしめていいか?」
「うん」
ぎゅっと、抱きしめ合う。この暑さの中、ちょっときついけど、ドキドキのほうが勝っている。
「お前、体細いな」
「薬のおかげかな」
逆に、たくましいタケルくん。
「あのさ」
「ねえ」
同時に声を出す。少し溜めて。
「……キスしていい?」
ハモった。
「恥ずかしいから、目、つぶるね」
ドキドキして待っていると、唇に、柔らかいものが触れた。
タケルくんみたいな、男の子男の子した男子でも、唇って、こんな柔らかいんだな。
ちょっと、これ以上先に進むのはためらわれたのか、唇を離す彼。ボクも、まぶたを開ける。
「お前の唇って、すげえ柔らかいんだな」
「タケルくんのも、柔らかかったよ」
互いに、微笑み合う。
「ねえ、今日ボクんち来ない?」
「いいのか!?」
「もちろん。タケルくんなら、大歓迎!」
夏休み前は、持ち帰るものが多くて、手を繋いで帰れなかったのが残念だけど、これから、素敵な毎日になりそう!
会場の喧騒が、この控室にもかすかに響いてくる。 眼の前には、頭からタオルを垂らしたタケルくんが、ベンチに座っているけど……。 精神統一しているように見えて、組んだ指の親指を、忙しなくすり合わせている。これは間違いなく、プレッシャーを感じているね。 タケルくんは、U20世界陸上で、百メートルで銀、二百メートルで銅という、とても立派な成績を残したけど。悲しいかな、世間様の扱いは、金に非ずば、メダルに非ずという非情さだ。 でも、陸上界ではその名を知られる存在になったのは確かで、前回の金メダリストへのリベンジに燃えている。ただ、これは……。見るからに、入れ込み過ぎだね。タオルで顔は伺えないけど、肩から緊張の様相がにじみ出ている。 ボクはというと、専門学校を卒業し、スポーツメンタルトレーナーとして、本格的な一歩を踏み出したところ。 するとタケルくん、ボクをチームのメンタルトレーナーとして、指名してくれました。 もちろん、監督やコーチらからは、実績のないボクの起用に強い反対があったけど、タケルくんが、「幼馴染かつ恋人で、気心知れた仲であること」を、強調したそうです。 タケルくんも、銀と銅という実績があるので、最終的にチームに、「さしあたって、タケル専属」という形で雇われました。 彼が、わがままと取られる態度をしてまで招いてくれたわけで。今回の結果如何で、ボクの進退が決まるし、タケルくんへの、周りからの心象にも響く。 ボクとしても、失敗できないというプレッシャーがあるけど、それが選手に伝わってはいけない。 今日まで、文字通り精神のトレーニングをしてきたわけだけど、これから総仕上げだ。「タケルくん」 彼の横に腰掛けるけど、こっちを向いてくれない。これは、耳に入ってないね。「たーけるくんっ」 肩をつつくと、ビクッとしてこっちを向いてくれた。 ここで、「リラックスしよう」なんて声をかけても意味はない。そんなこと、彼自身が重々わかってる。 じゃあ、どうするか。「何を悩んでるか、聞かせて?」 穏やかな声色で、問いかける。「……オレ、死ぬほど練習してきた。でも、それでも、あとほんのちょっと届かなくて。動画見て、何度悔しく思ったか! あれから、監督やコーチの指導で、さらにギリギリまで追い込んできたけど、向こうも当然、それやってるわけでさ。差
楽しかった夏休みも、ついに最終日。宿題モンスターは退治済みなので、今日はタケルくんと遊び収めです。「そらー!」「わぷ! あはは! 冷たくて気持ちいー!」 久しぶりに、タケルくんちで水遊び。二人で水着着て、大はしゃぎ!「はー……、はー……。こーたーい」 ノズルを受け取る。「それーっ!」「うっは! つめて! サイコー!」 もう、二人して大はしゃぎ! そして、引き続き水着姿の撮影会。「よーし、きれいに撮れたぜー」「見せて見せてー」 ジュースを飲みながら、わいのわいの!「ボクにも、タケルくんの写真撮らせてー」「オレなんか撮って、楽しいか?」「うん。こう、マッチョなポーズ決めたりして!」「なるほど。そういう趣向は面白そうだな!」 カメラマン交代。いいのいただきました! ご利益ありそう。 昼を過ぎつつあるので、屋外で遅めのお弁当。お庭があると、こんな楽しみ方ができるのがいいね!「今日も、タンパク質たっぷりだよ~」「うおっ! ステーキ丼!?」「うん。牛赤身が安かったから、野菜たっぷりで仕上げたよー」 ちょっと炭水化物が多いけど、今日は特別に、ね。「うまそー! いっただっきまーす!」 どこかの剣士さんみたいに、一口ごとに「うまい! うまい!」と言いながら食べる彼。ほんと、作ったかいがあるなあ。「ごっそさんでした!」「お粗末様でした、ボクも、もうちょっとで食べ終わるから」 ちょこちょこお箸を進めていると、そのさまを微笑んで見つめてくるタケルくん。急に恥ずかしくなって、俯いてしまう。「なんか、見つめられると恥ずかしいよ~」「お前も、オレの食べっぷり見てたじゃん。お互い様、お互い様」 むう。ぐうの音も出ない正論。「ごちそうさまでした」 水遊びを終え、シャワーを借りて買ってもらった服に着替えると、台所を借りてお弁当箱と箸を洗う。 その後は、ポ○モン対戦!「あ! タケルくんに、初めて勝てたー!」「お見事!」 拍手をもらい、照れてしまう。 もちろん、接待プレイなんかじゃない、真剣勝負。嬉しい! さらに、ポ○モン映画リレー&雑談。 思えば、マリ○リハンカチが縁で、ボクと彼のお付き合いが始まったわけで。縁結びのポ○モンだね!「ねえ、タケルくん」「ん?」「ボクね。新学期になったら、女友達作っ
「さーて、またじゃんけんだな!」 じゃーんけーん、ポン! ありゃ、負けちゃった。「お、勝った。じゃあ、お前に服をプレゼントだ!」「ええ! いいの!? そんな、ボクだけ得する話!」「お前がきれいだと、オレも嬉しい。Win-Winだろ?」 ほわあ~……。なんでしょう、このパーフェクト彼氏は!「ほんとにいいの?」「二言なし!」「じゃあね、いいお店があるんだ!」 いざ、ショッピングモールへ! ティーン向け女性服のブティックにとーちゃーく!「あのね、提案なんだけど、タケルくんに選んでほしいんだ」「ええ!? オレ、女物の選び方とかわからんぞ!?」「ボクは、タケルくん好みの服が着たいんだ。だから、どんなのも大丈夫! パンツ選んだら、パンツルックだってするよ! どうしてもわからないこととか悩んだら、ボクや店員さんに訊けばOK!」 彼は、ボクがパンツルックを嫌ってるのを、知っている。それでも、あえて宣言した。タケルくん好みの女になりたい!「わかった」 入店~。二人で見て回る。「あ……」 まず、タケルくんが手に取ったのは、タイトなデニムのミニスカ。「そのサイドテール見てたら、ビビッときてさ。あ、でも、ミニスカ嫌だったよな?」「ううん。ボク、タケルくんが選んだものなら、なんでもいいよ」 抵抗があるといえばある。万一、アレが見られたら生きていけない。でも、タイトのデニムなら、そんなに風でめくれることもないと思う。「そうか? じゃあ、これキープして……」 さらに、店内をうろうろ。「お前、水色と白好きだよな。この白いノースリーブなんかどうだ?」 次に選んだのは、襟付きのノースリーブ。「ちょっとあててみて。デニムは、ボクが持つから。……どう?」「……イイ! 自画自賛だけど、オレ、ナイス! お前、もっとナイス!」「ほんと!? すみませーん、試着いいですかー?」 さっそく、試着。我が身の余計なモノを見たくないので、デニムを履いてから、鏡を見る。 おおー! たしかに、イイ! さっすがタケルくん!「すっごく、いい感じだよ~! この後は、これ着て歩こうかな。店員さん呼んでもらえる?」「おお! 気に入ってもらえたみたいでなによりだ! すみませーん!」 ややあって、店員さんと戻ってくるタケルくん。精算後、タグを外してもらい、さっきまでの服はリ
「よっしゃー! 終わったああああ!!」 ガッツポーズで叫んだかと思うと、大きく息を吐いて、だらんと椅子の背もたれに体重を預けるタケルくん。 今日は、彼の家で宿題のラストスパート中! 夏休みもそろそろ終わり。早いものです。「待ってね。ボクももうすぐ追いつくから」 こちらもせっせと、追走中。「手伝おうか?」「ううん。ボクの手でやらないとだから」「じゃー、せめて、わからないとこあったら教えるから」「うん、ありがとう!」 ああ、サイコーの彼氏さんだ~。「それにしても、ノンシュガーコーヒーゼリー、イケるなあ! さすがだぜ」 今日のおやつは、人工甘味料で作ったコーヒーゼリー。それを、どどん! と、タッパーで出してます。 ボクもタケルくんも、ミルクかける派。気が合うね! それはさておき、ところどころ教えてもらい……。「でーきたー!」 うーんと伸びをして、だらーん。「おつかれー。これで、あとはずっと遊べるな!」「だねー」 二人で手つなぎ、ウキウキるんるん。 まあ、楽しい夏休みも、そろそろ終わっちゃうけど……。「なあ、明日はおじさんマネーと金一封の使って、パーッとデートしねえ!? お前の好きなとこで!」「え、いいの!? でも、タケルくんの好みは?」「オレはいつだって、お前ファーストだぜ!」 いやん、何このパーフェクト彼氏!「じゃあ、ピュー○ランドいいかな!?」「おう! と言いたいところだが、ちょっと待ってな……。 スマホを操作する彼。「うっ! 悪ぃ、完全に資金不足だ……」 しょぼん。たしかに、遊園地って、どこもお金かかるもんねえ……。「じゃあさ、完全ノープランデートとかどう!?」「行き当たりばったりデートか。面白いな!」「でしょ! とりあえず、タケルくんちに集まって、それから考える!」 ト○ピーみたく、人差し指をふりふり。「チャリ使うか?」「うーん。自転車は、とりあえずなしで!」「よっし! 十時集合でいいか?」「うん!」 ああ、明日が楽しみすぎるよー! ◆ ◆ ◆「おー、またイメチェンしたんだな!」「うん! せっかくのデートだからね! どう? どう?」 集合時刻。せっかくのデートなので、またイメチェンしてみました! 今日は、右側にサイドテールを垂らしています。「いいね! 似合ってるぜ。いやー、ほ