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第四話

작가: 麻木香豆
last update 게시일: 2025-10-21 07:42:46

「鳩森くん、すまんがその提案はもう別のものが採用されていて、すでにプロジェクトが進んでいる。そのサポートをお願いできるかな」

 会議で上司にそう言われ、寧人はパソコンの前で小さくうなずいた。

 まただ。

 何度目だろう。

 彼は提案を却下されることにも、もう驚かなくなっていた。

 数日後、本部から届いたメールを見て、彼はふぅ、と息を吐いた。

 「了解しました」とだけ返し、また机に戻る。自分の役割は“進んでいる何かの支え”。決して“新しい何かを生み出す側”ではない。

 でもそれでいい、といつしか思うようになっていた。

 昼を過ぎると、胃がきゅうっと鳴った。

 反射的に開くのは「フードジャンゴ」のアプリ。

 そこにはまた“麻婆丼”が上位に表示されていた。

「また麻婆丼……」

 苦笑しつつも、結局それを選ぶ。

 あの日の味が忘れられなかった。濃いタレと山椒の香り、何より、あの“イチゴ”という青年の笑顔が頭にちらついた。

 麻婆丼は、ご飯とおかずが一緒に食べられる。

 洗い物も少なく、すぐ腹が満たせる。

 “効率”がいい。

 そう、彼にとって食事は“栄養摂取と仕事再開の間の作業”にすぎなかった。

 ――もう四十歳が見えている。

 恋人はいない。いや、これまで一度もいなかった。

 もちろん、性の経験もない。

 ただ、性欲がないわけではない。

 日々の中で溜まったストレスを、空しい手慰みで発散することはある。けれど、それすら“義務”のように淡々と。

 恋とか愛とか、そんな情動はずっと置き去りにしてきた。

 オナホールの新品を開けるときでさえ、感情は動かない。

 「まぁ、出せば楽になるからいいか」

 それくらいの感覚。

 自分でも呆れるほど乾いていた。

 両親は昔、電話のたびに「そろそろ結婚は?」と言っていたが、三十五を過ぎたあたりでその言葉も聞かなくなった。

 最近は年賀状すらこない。

 それでも寂しさはない――はずだった。

 欲しいものも、特にない。

 必要なのは仕事道具とパソコン、参考書、最低限の生活費。

 あとは家賃と光熱費と通信費。

 浪費も外出もしないから、貯金だけは着実に増えていく。

 “使い道のないお金”が通帳に積もっていくたび、自分の人生も同じように堆積しているような気がした。

 そんな時だった。

「一人で、寂しくないですか?」

「うわっ!」

 背後から声がして、寧人は飛び上がった。

 心臓がバクバクと鳴る。

 振り返ると――またいた。あの青年。イチゴ。

「こないだは“GOOD評価”ありがとうございます!」

 イチゴはいつものようにニコニコと笑っていた。

「また来ちゃいました」

「お、おう……」

 あまりに自然な登場に、驚きよりも呆れが先に出る。

「てか、またドア開いてましたよ」

「……は?」

「多分、壊れてます」

 寧人は立ち上がり、ダダダッと玄関へ。

 見れば確かに、ドアの取っ手が半分抜けかかっている。

 鍵も締まりきらず、ガタガタと音を立てていた。

「築五十年のアパートだからなぁ……」

 彼は頭を抱え、ため息をついた。

 大学時代から十数年、同じ部屋。

 更新のたびに「引っ越しめんどくさい」と言い続けて、気づけばこの棟の最古参。

 ある意味、このボロアパートの“長老”のような存在だった。

「どうしよ……管理人さんに……でも仕事が……」

「いやいや、仕事も大事ですけど、これは危ないですよ」

 イチゴは真面目な顔で言った。

「こんな古い部屋のわりに、パソコンとか機材は最新じゃないですか。寝てる間に泥棒が来たら一発アウトですよ」

 確かにその通りだった。

 でも、管理人の連絡先も思い出せない。

「とりあえず……麻婆丼、冷めないうちにどうぞ」

 イチゴが笑って差し出した瞬間、部屋に香ばしい匂いが広がった。

 寧人は無意識に唾を飲み込み、受け取ると勢いよく蓋を開けた。

 一口。二口。止まらない。

 気づけば半分以上を食べていた。

「わぁ、すごい食べっぷり!」

 イチゴは感心したように目を丸くした。

「うるさい……てかお前、いつまでいる気だ」

「それより、管理人さんに連絡しましょうよ」

「……管理人さんの名前、知らない」

 寧人がぽかんと呟くと、イチゴも一瞬固まった。

「えっ……電話番号は?」

「知らねぇ……」

「うそーっ! どうするのっ!」

 二人の声が同時に部屋に響いた。

 気づけば、寧人の部屋には久しぶりに“人の声”が満ちていた。

 パソコンのファンの音の代わりに、誰かの笑い声が響く。

 それは、長く閉じていた窓の隙間から差し込む新しい風のようだった。

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