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第4話

작가: 清水澪
だが、今年でそれも最後だ。

私はレストランの席に座り、刻一刻と過ぎていく時間を見つめていた。

約束の時間をとうに三十分も過ぎているのに、蒼真の姿は一向に現れなかった。

彼に電話をかけようとしたその時、レストランの外の夜空に突然、次々と花火が打ち上がった。

火花が夜空に形作ったのは、【莉乃、誕生日おめでとう】という文字だった。

その場にいた全員の視線が、その光景に釘付けになった。

そして私もようやく、ずっと姿を見せなかった蒼真を見つけた。

彼は仕立ての良いスーツを着て、バラの花束を抱え、莉乃の前に片膝をついてプロポーズをしていた。

少し離れたビルの大型ビジョンにも、蒼真と莉乃の婚約を祝うポスターが映し出されている。

「篠原社長も気前がいいよな。一分間で二千万円もする大型ビジョンを借り切るなんて」

「でも、篠原社長の彼女ってあんな顔じゃなかったと思うけど?」

「彼女? お金持ちの火遊びなんて、所詮は『愛人』止まりだろ。こっちこそが本命なんだよ。幼馴染で、いよいよ結婚ってわけさ」

周囲の嘲笑うようなささやき声が耳に届くたび、何もかもが滑稽で、皮肉にしか思えなかった。

十周年記念なんかじゃなかった。今日は莉乃の誕生日であり、彼女のためのプロポーズパーティーだったのだ。

私は静かにため息をつき、用意していたプレゼントをゴミ箱に投げ捨てた。

そして、この場所から立ち去ろうとした。

その時、いつの間にか本日の主役である莉乃が私の目の前に立ち塞がっていた。

彼女は蒼真の隣で見せる大人しくて無邪気な顔を一変させ、私に向かって勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「今日はあなたと蒼真の十周年記念日らしいわね?教えてあげるけど、彼、そんなことこれっぽっちも覚えてなかったわよ。ただ私の誕生日だったから、ついでにあなたの存在を思い出しただけ」

以前の私なら、とっくに彼女と取っ組み合いの喧嘩になっていたかもしれない。

「そう。それじゃあお幸せに」

私は冷たく口角を上げ、彼女を押しのけてその場を離れようとした。

だが、莉乃はわざと足をもつれさせて床に尻餅をついた。その弾みで、テーブルの上のシャンパンがすべて彼女の頭上から降りかかった。

私が反応する間もなく、駆けつけた蒼真がその光景を目撃した。

「泉緒!いい加減にしろ!」

彼は有無を言わさず私の襟首を掴むと、テーブルの角に向かって力任せに突き飛ばした。

割れたグラスの破片が手のひらに深く突き刺さり、どくどくと鮮血が溢れ出す。

「婚約の件は俺がうまく処理するって言っただろう!なのに、どうして莉乃を傷つけるんだ!」

手のひらに破片が残ったまま、鋭い痛みが全身を駆け巡った。

私が弁明する間もなく、かすり傷一つ負っていないはずの莉乃が、突然胸を押さえて苦しげに肩で息をし始めた。

蒼真はすっかり血相を変え、震える手で運転手に電話をかけながら、あろうことか目を赤くして涙ぐんだのだ。

「莉乃が喘息持ちだってこと、知ってるだろう!彼女は箱入り娘で脆いんだ。お前みたいに、放っておいても勝手に生きていけるような女とは違うんだ!」

彼は私に向かって怒鳴り散らし、すべての怒りと不満を私にぶつけた。

「そんなに結婚したいなら、他の誰かとでも結婚すればいいだろ!俺は絶対にお前とは結婚しない!出て行け、二度と俺の目の前に現れるな!」

周囲の客たちは誰もが私を嘲笑うような好奇の目を向け、手のひらの激痛はやがて鈍い痺れへと変わっていった。

遠ざかっていく二人の背中を、私はただじっと見送る。

これほど酷い仕打ちを受けてもなお、胸の奥がズキリと痛むのを止められなかった。

私は深呼吸をし、消え入りそうな声で呟いた。

「蒼真、別れましょう。……十周年の、この日に」

私の最後の言葉が彼に届いたのかはわからない。返ってきたのは、彼を乗せた車が非情に巻き上げる土埃だけだった。

私は一番早く出発する便の航空券を予約した。

この忌々しい場所には、もう一秒だって居たくない。

搭乗口へ向かう間も、蒼真からのビデオ通話は執拗に鳴り響いていた。

連絡先を削除して着信を拒否しても、彼は見知らぬ番号を使い、次々とメッセージを送りつけてきた。

【どこにいるんだ?いい加減、子供みたいな真似はやめろ。いつまで拗ねてるつもりだ?】

空港のゴミ箱にスマホを投げ捨てるその瞬間まで、画面の通知が止むことはなかった。
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