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第5話

Author: ミツバチちゃん
涼夏の体がピクリと強張り、それ以上動くことができなくなった。

遼河は鼻で冷たく笑い、足を止めることなく、そのまま涼夏の寝室へ入っていった。

階下では、水の入ったコップを持った栞が、二人の親密な様子を静かに見つめていた。

彼女の指はコップを強く握りしめており、爪の色は白青く変わっていた。

遼河が涼夏をベッドに下ろした瞬間、彼女はすぐに体を引いて遼河との距離を取った。

「早く出て行って。栞はもうすぐ来るから」

彼女が焦れば焦るほど、遼河の表情はますます冷たく険しくなっていった。

彼は出ていくどころか、逆に身を屈めてさらに距離を詰めてきた。

涼夏は後退し続け、ついに背中がベッドのヘッドボードにぶつかり、それ以上逃げ場がなくなった。

目の前の男は、まるで彼女を覆いかぶさるように身を寄せ、その姿勢はあまりに親密だった。

心臓の鼓動が速まり、涼夏は頬が熱くなり、澄んだ瞳を見開いた。

「遼河、ちょ、ちょっと何してるの、近すぎ......んっ!」

言い終える前に、遼河は唐突に彼女の唇を奪った。

乱暴で支配的なそのキスは、涼夏の口内を容赦なく蹂躙していった。

涼夏は遼河の肩を強く掴んだ。

押し返そうとしたのか、それとも......引き寄せようとしたのか、自分でもわからなかった。

遼河は彼女の内と外をたっぷりと味わった後、ようやく唇を離した。

そして彼女の顎を指でつかみ、真っ赤に染まった唇をなぞりながら、低く冷たい声で囁いた。

「さっき自分が何を約束したか、もう忘れたのか?」

その一言で、涼夏の赤らんだ顔色は一瞬で青ざめた。

彼に脅されて、「従順な玩具になる」と約束したのだ。

遼河は冷笑を浮かべた。

「今回は警告だけだ。だが次に俺を拒んだら......その時は容赦しない。わかったか?」

そう言って、彼は指にさらに力を込め、答えを迫った。

涼夏は唇を噛み、返事を拒むように睨み返した。

だが、その瞬間。廊下から栞の足音が聞こえてきた。

「お姉ちゃん、水、持ってきたよ......」

涼夏は咄嗟に動揺し、慌てて態度を和らげた。

「......ありがとう」

それを聞いてようやく遼河は顎から手を離し、背を向けながら一言残した。

「三十分後、俺の部屋に来い。来なかったら、どうなるかわかってるな」

涼夏の体がまた強張り、ベッドシーツを握りしめた。

遼河は数歩で部屋を出て行き、ちょうど入ってきた栞と鉢合わせた。

栞は遼河を見上げ、愛らしく笑いかけた。

「遼河、お腹空いてない?最近遼河の好きな料理を練習してたの。作ってあげよっか?」

だが遼河は彼女に目もくれず、冷たく通り過ぎながら言った。

「いらない」

栞はその背中を見送りながら、悲しそうな表情を浮かべた。

「栞......」涼夏は小声で慰めるように言った。

「栞は身体が弱いから、きっと遼河は台所で無理してほしくないのよ」

栞ははっとして笑顔を戻し、手にした水を差し出した。

「そうだよね。でももうすぐ結婚するし、そのときはいっぱい作ってあげられるもん」

栞は頬杖をついて、無邪気に夢見るような顔をした。

その純粋な様子に、涼夏は胸が締め付けられた。

彼女は慌ててうつむき、水を飲むふりをして気持ちを隠した。

栞はしばらく呆けた後、ふいに近寄って涼夏の腕に抱きついた。

「お姉ちゃん、今夜一緒に寝ていい?」

涼夏の表情が一瞬で強張った。

遼河は「今夜来い」と命じていた......

「......今夜はだめ。わ、私、最近仕事で疲れてて、しっかり休みたいの」

それっぽい理由をようやく見つけて、涼夏は彼女の髪を整えてあげた。

「また今度、ね?」

栞はにこっと笑い、「わかった。お姉ちゃんの体が一番大事だもん。じゃあ私はもう休むよ。お姉ちゃんも早く休んで」

そう言って立ち上がり、足取り軽く部屋を出ていった。

だが涼夏の部屋のドアが閉まった瞬間。

栞の笑顔は一瞬で消えた。

涼夏は一人きりの寝室でしばらく呆然とし、その後、ちょうど三十分が経ったころ、そっと部屋のドアを開けた。

栞の部屋は隣。

少しでも音を立てれば、すぐに聞こえてしまう。

涼夏は彼女の部屋が静まり返っているのを確認すると、泥棒のように音を立てず、遼河の部屋へと急いだ。

そしてそっとノックした。

「入れ」中からは遼河の冷淡な声が返ってきた。

涼夏は唇を噛みしめ、大きく息を吸ってから、扉を開けた。

ちょうどその数秒後。

栞の部屋のドアも、そっと開かれた......

寝室では、遼河がバスローブ姿でソファにくつろぎながら座り、雑誌を手にしていた。

彼は目だけを上げて、不安げに立っている涼夏を見た。

「脱げ」

それは感情のない命令だった。

たった二文字で、涼夏の顔色は一気に青ざめた。

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