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第5話

Author: モメン
赤塚咲妃(あかつか さき)だ。

咲妃は俺が惨めに地面に押しつけられているのを見るなり、目つきを鋭くし、怒気を帯びた。

奈々の視線もまた場内をひととおり走った。最後にあの腕時計の残骸に止まり、瞳孔が鋭く縮んだ。

「こ、これは……どういうことなの?!」

奈々の声は震えていた。

晶は奈々を見るや、溺れる者が藁をも掴むように奈々にしがみついた。

そして、さっきまでの陰惨な気配は跡形もなく消え、今にも泣き出しそうな被害者の顔を作り上げると、ふらつく足取りで奈々へ歩み寄り、俺を指さして先に訴え始めた。

「奈々、ようやく来てくれた!この男、狂ってるんだ!俺を殴っただけじゃなく……腕時計まで自分で叩き壊したんだ!

お前から金をゆすり取ろうとしてるだけだよ!」

奈々は反射的に晶を庇うように背後に引き寄せた。しかしその視線は壊れた部品の上に釘づけになり、悲しみと怒りに満ちた顔で俺に怒鳴りつけた。

「賢人、気でも狂ったの?!この腕時計にいくらかかったと思ってるの!」

俺の心臓が、見えない手で握り潰されたように、痛みすら感じないほど麻痺して冷え切った。

咲妃は自分の秘書に警備員隊長を押しのけさせ、俺の前へ歩み寄った。傍らの秘書にそのジャケットを脱がせ、俺の身体に掛け、俺の惨状を覆い隠した。

「遅くなって、すみません」

咲妃の声はかすれていた。

咲妃の後ろにいた秘書が前に出て、呆然としている警備員隊長に冷たく告げた。

「こちらの方は立浪グループの立浪賢人様。そしてあちらは、あなたたちの雇い主のお父様、福原康雄(ふくはら やすお)様です。

さらに、あなた方の目の前にいらっしゃるのは、東都市赤塚家の咲妃お嬢様です」

「赤塚家」という言葉が出た瞬間、奈々の顔色は一気に青ざめた。

彼女はようやく、俺と舅の康雄の体に刻まれた傷に目を向け、俯いたまま震える視線で晶を見つめた。

晶は目を見開き、俺たちを見つめながら狼狽していた。

「賢人、お父さん、話を聞いてください……」

奈々は、まごつく晶を勢いよく突き飛ばし、俺の方へ駆け寄った。

「あなた、怪我してるよ!病院へ行きましょう!」

そう言って俺に触れようと手を伸ばした。

咲妃は俺を支え起こし、その手を遮った。

「奈々さん、あなたは数億円もの心血を注いで、この唯一無二の『愛』を作った」

咲妃はそう言うと、
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