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第 702 話

Author: 一笠
二日後、佐藤グループ社内公募の一次選考が滞りなく行われた。

丸一日かけて、参加者は順番に壇上へ上がり、経歴紹介から今後の会社経営計画まで、それぞれが十分な時間を与えられプレゼンテーションを行った。

最終的には審査員団による採点で、最初の選抜が行われた。

凛はパソコンの前に座り、ビデオ会議を通して全ての様子を見ていた。

浩二の発表は飛び抜けて優れているわけではなかったが、注目に値する点もあり、点数は低くなく、次の選考にも問題なく進めるだろう。

前回、湊に会ってからというもの、凛はなぜか浩二に興味を持つようになり、聖天に頼んで、浩二の社外での評判を調べてもらっていた。

浩二は性格が落ち着いていて真
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