Share

第 710 話

Author: 一笠
電話を切った途端、聖天から着信があった。

凛は再びスマホを耳に当てた。「霧島さん、こんな時間にどうしたんですか?」

「では、夏目さんはこんな時間にどうして電話に出られるのか?」

お互い、忙しさをそれとなくアピールしている。

凛は微笑んだ。「志穂と電話してたところですよ。これから仕事に出かける準備をしてきます」

「辞職の件か?」聖天は尋ねた。

「ええ」凛は軽く息を吐いた。「最初は家族に無理強いされてるんじゃないかって心配してたんですけど、どうやら本人の意思みたいです。

それに、電話の声を聞いたら、案外元気そうで、楽観的でした」

そう言ってから、凛はついでに尋ねた。「何か用事ですか?」

「いや」

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1057 話

    凛が微笑んだ。聖天は、世界が輝きを増したように感じた。......1ヶ月にわたるヨーロッパ旅行が終わっても、凛はまだ授賞式の夜を忘れられなかった。妊娠後期になるにつれ、体は重くなっていったが、それでも凛は毎日撮影の仕事に忙しく、充実した日々を送っていた。その間、朔の裁判も行われていたが、判決は弁護士の予想とほぼ同じだった。その日、テレビでニュースが流れていた。「綾辻朔死刑囚の死刑が、本日午前に執行され......」その時、梓には朔の最後の瞬間が見えた気がした。ちょうど凛の検診中だった梓は、一瞬、動きを止めてしまった。凛は梓の手を握り、優しく言った。「梓、これで本当に自由になっ

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1056 話

    結婚式の後、聖天は凛と新婚旅行で海外に出かけた。ヨーロッパのカフェで休憩していると、弁護士から電話がかかってきた。「本日の公判は順調に進みました。このままいけば、あと1ヶ月で手続きが完了し、判決が下されるでしょう。綾辻さん、おそらく死刑は免れないかと。自首したあの『ウルフ』という男は、おそらく無期懲役、優奈さんに関しては......7、8年の懲役になると思われます」......弁護士は公判の様子を詳しく説明していたが、コーヒーを運んでくる凛の姿が目に入ると聖天は、「分かりました。残りは任せます」とだけ返事をした。凛も今日は公判の日だと覚えていたので、コーヒーをテーブルに置き自分も座

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1055 話

    二人は微笑みながら見つめ合った。この光景に、参列者たちは皆、深く感動した。雪は涙を拭いながら呟く。「聖天が凛と結婚できたことは、もちろん聖天にとっての幸せなんだけど、私たちにとっても大きな喜びね......」ふと視線を向けると、慶吾もこっそりと涙を拭っているのが見えた。雪に見つめられたことに気づいたのか、慌てて手を止め、背筋をピンと伸ばす。雪は涙を拭うと、微笑んで言った。「もう誰もあなたのことなんて見ていないんだから、泣いたってどうってことないわよ」「泣いてなんかない。こんなめでたい日に、なぜ泣く必要があるんだ?」慶吾は鼻をすすり、真面目な顔で言った。「目にゴミが入っただけだ」雪は

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1054 話

    真っ青な空には白い雲が浮かんでいる。昨日の夕方から、続々と招待客が島に到着し、別荘地にチェックインしていた。普段裕福な暮らしをしている彼らも、島の装飾に驚きを隠せなかった。島全体が美しく飾り付けられ、甘い雰囲気に包まれている。青と白を基調とした花々が桟橋から式場となる芝生まで敷き詰められていた。今までの霧島家はパーティーを開く際、仕事関係の人だけを招待していた。しかし今回は、雪が芸能界の重鎮たちを招待していた。それに、美雨も凛を応援するために多くの芸術家仲間を招待したのだった。招待客リストが完成した時、慶吾は思わず驚いた。「島が人で溢れかえってしまうんじゃないか?」すると輝が驚き

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1053 話

    「来る途中慶吾と話したの。夏目家を出て、霧島家に嫁ぐという決断をしてくれたあなたを、私たちは絶対に裏切らないようにしよう、って。それに今、あなたは妊娠しているのよ。これから10ヶ月もの間、とても大変だと思うし、出産だって命懸けのことなの。だから、もし私たちにできることが少しでもあるのなら、何でもさせて欲しいなって思って」雪は凛の肩に手を置きながら言った。「もしあなたが断ったら、私たちは悲しいわ。あなたのために何かしたいの」ここまで言われたら、もう断ることなんかできないだろう。凛は少し考えてから頷いた。「ありがとうございます。お父さん、お母さん」慶吾夫妻はすぐに満面の笑みになった。「そう

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1052 話

    笑いを堪える凛の声に、聖天はほっと胸を撫で下ろした。「何か良いことでもあったのか?」「うん」凛は手に持った妊娠検査の結果を見ながら、嬉しそうに言った。「そんなに私に会いたいんだったら、聖北病院まで来て」本来であれば、拘置所から聖北病院までは車で1時間ほどかかるのだが、期待に胸を膨らませた聖天は50分もかからずに到着した。車を停め、遠くから入口に立っている凛の姿を見つけた聖天は、すぐに車を降り、彼女に向かって大股で歩いて行った。凛は幸せそうな笑顔で、両手を広げ、聖天の胸に飛び込んだ。「私、妊娠したの」「なんだって?」聖天は驚き、凛の肩を掴んで少し突き放した。「もう一度言ってくれ」そ

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 444 話

    使用人が案内されるまま、凛は部屋に通された。視線の先、バルコニーには慶吾が立っている。心構えはしていたものの、慶吾と二人きりになるのはさすがに少し緊張する。使用人が部屋のドアを閉める音を聞き、凛は心を落ち着かせ、バルコニーに向かって歩き出した。「慶吾さん、何か御用でしょうか?」「分かっているだろう?」慶吾は低い声で聞き返した。「......」いきなり謎かけか。つまらない。「何かおっしゃりたいことがあれば、はっきり言ってください。本当に何の用で呼ばれたのか分かりません」慶吾は振り返り、鋭い視線で彼女を見た。「ここまで来て、まだとぼけるのか?和子さんにここまで呼ばれたんだぞ。彼女が何

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 460 話

    「清子さん?」看護師は何度か声をかけたが、清子は何の反応も示さなかったので、肩を軽く叩いた。清子はハッと我に返り、真っ赤に充血した目で看護師を見つめた。その様子は、看護師をギョッとさせた。「清子さん、どうしたんですか?」看護師は心配そうに尋ねた。「べ......別に......」清子は慌ててスマホをしまい、手で涙を拭った。「何か?」「検査結果が出ました。先生がお呼びです。それと、もう一つ、先生に見てもらいたい検査結果があったんですよね?先に私に預けてください。該当の科を予約しておきますから」差し出された看護師の手を見て、清子は少し迷った後、首を横に振った。「もういいわ。必要ない」

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 442 話

    凛は曖昧な笑みを浮かべながら口を開いた。「修平さん、そんなに自信満々に断言するってことは、私に監視カメラでも仕掛けてたのですか?それとも霧島さんにですか?私と明美さんはずっとキッチンでお菓子を作っていました。その間、翠さんも一度入ってきましたよ。霧島さんを見かけたかどうか、彼女に聞いてみたらどうですか?」皆の視線が集まる中、翠は首を横に振った。「いいえ、聖天には会わなかった」「翠さん一人の証言では足りないというなら、もうすぐ明美さんもこちらに来るので、彼女の証言も聞いてみればいいでしょう」凛は修平を見つめ、にっこりと笑った。実に堂々としたものだ。修平は一瞬たじろいだ。霧島家の縄張りで

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 436 話

    雪はドキッとし、心の中で思った。「和子さん、誰を呼んだのですか?」「もちろん、最近話題のベゴニアよ。今日はこんなに賑やかだし、記念写真をお願いしたの」「おばあさん、どうして......」和子が一瞥すると、翠は思わず口をつぐんだ。霧島家の他の夫人たちは顔を見合わせ、和子が準備万端で来たことを見抜いていた。雪の顔色がわずかに変わり、平静を装って笑った。「和子さん、記念写真くらい、わざわざカメラマンを呼ぶ必要はありません。家の使用人が撮ってくれます」「それではあまりにも場当たり的だね」和子はティーカップを持ち上げ、少し口に含んだ。その態度は終始自然体だったが、周りの人間には有無を言わさ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status