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第 711 話

Aвтор: 一笠
あんなに彼のことを想っているのに、早く会いに来てくれないなんて。

テントの外で誰かが呼ぶ声で、凛はようやく目を覚ました。

状況を理解する間もなく、瑶子は目の前に現れ、有無を言わさずベッドから引っ張り上げた。

暖かい布団から突然引き剥がされ、凛は寒さで身震いした。眠気は一気に吹き飛び、激しい頭痛に襲われていることに気づいた。

テントの外に出ると、遠くの砂丘で焚き火が勢いよく燃えていた。空気に肉の焼ける匂いが漂い、凍えるような暗い夜に温もりを与えている。

空には満天の星が広がっていた。

撮影クルー全員がそこに集まっていて、笑い声が砂漠の風に乗って遠くまで聞こえていた。

「今夜は私の誕生日パーティな
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