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第3話

Author: ちっちゃな魚
美波は表情を引き締めた。

音夢は昔から大人しい子で、幼稚園でトラブルを起こしたことなどなかった。

先生からそのような電話が来たのは初めてだった。

美波が急いで職員室に来たら、音夢は隅っこに立っていて、シクシク泣いていた。

小さな顔はトマトのように赤くなって、体はぶるぶる震えていた。

それに対して、隣りにいる冬雪は冷え切った顔をして、その隣にもう一人の女の子とスタイル満点の女もいた。

一目して、美波はわかった。その女が冬雪の初恋相手、緒方梨乃(おがた りの)だと。

彼女は冬雪のそばに立っていて、親しく彼の腕に手を回して、夫婦だと勘違いされるほどお似合いだった。

冬雪のそばにいるその子が、梨乃の子供だった。

美波が入った瞬間、緒方心愛(おがた みあ)は冬雪の腕を掴んで、大声で「平野パパ、音夢ちゃんにいじめられた!」と泣きついた。

「平野パパ」という呼び方を聞いて、音夢は目を丸くした。

彼のことを「パパ」と呼ぶことを、冬雪に一度も許されなかった。

その故、幼稚園の先生達は皆、音夢が片親だと思い込んでいた。

しかし今、他の子供は、彼女の目の前で堂々と「パパ」と呼んでいた。

その上、冬雪は自分の子のように心愛を抱きしめて、優しい声で「大丈夫だ、心愛。パパは守ってあげるから」と慰めていた。

そのような優しい表情、愛に満ちた眼差しは、

一度も音夢に向けたことがなかった。

その視線を彼女に向けた瞬間、またすぐに寒気を覚えさせるような眼差しに変わった。

「幼稚園でクラスメートに手を出すなんて、どこで覚えたんだ?失礼すぎるだろ。すぐに心愛に謝れ!」

その怒りの帯びた口調にびびった音夢は震えが止まらなかった。彼女は泣きながら、「心愛ちゃんが先に私のぬいぐるみを破いたの」と言った。

机の上に、まだその破かれたうさぎのぬいぐるみが置いてあった。

それが昨日酔っ払った冬雪が持って帰ってきた、音夢へのプレゼントだった。

音夢は嬉しくてたまらなかった。一夜も抱きながら寝て、幼稚園にいる時でさえずっと持ち歩いていた。

しかし今、心愛は逆ギレした。

「あんたのぬいぐるみだって?これは平野パパが私にくれたぬいぐるみなの。泥棒!」

「泥棒」という言葉は、五歳児にどれほど重い傷をつけてしまうものか。

音夢の瞼はすぐに濡れて、自分の裾をギュッと掴んだ。

「違うの……」

彼女は焦りながら、助けを求めるような目を冬雪に向けた。

なのに冬雪はただ冷たく目を逸らした。

その時、梨乃が口を開いた。

「昨日冬雪が心愛にいくつかぬいぐるみを買ってくれたけど、心愛はうさぎが好きじゃないから、冬雪が持って帰ったの。

たぶん音夢ちゃんがちょうど同じものを買ったんじゃないかな」

それを聞いて、音夢の目には更に悲しみが溢れていた。

自分が宝物のように大事にしていたぬいぐるみは、他の子に捨てられたものだなんて。

しかし、それでも、あれは父に送られた、唯一のプレゼントだった。

音夢はやはり心を痛めて言った。

「それはパパがくれたもの……」

それを聞いた冬雪は眉を顰めた。

彼は音夢の顔から視線を逸らして、無慈悲に叱った。

「だとしたら?ただのぬいぐるみだし、手を出したほうが悪いんだ。さっさと謝れ」

そう言って、彼はまたすぐに美波の顔を見た。

「これがお前の育ててきた子供か?他の子に手を出して、反省もしないなんて。母として恥ずかしく思わないのか?」

美波の心も冷えてきた。何か言おうとしたところで、

裾がいきなり音夢に小さく引っ張られた。

涙目をしている彼女は、焦った声で言い出した。

「ママとは関係ない。ママは世界一優しいママだから!」

言い終わった瞬間、彼女はまた涙を含んだ目を上げて、美波ににこりと微笑んだ。

「大丈夫、ママ。ちゃんと謝るから」

だって、今日謝らないと、冬雪はそう簡単に諦めなさそうだから。

そうなったら、母も巻き込まれてしまう。

彼女は母を巻き込みたくなかったのだ。

そう言って、彼女は悲しみに満ちた目で冬雪を見て、頭を下げた。

「ごめんなさい、平野さん」

細くてガラスのような声が耳に入ってきて、美波の心はまるで何かに刺されたようにチクッと痛み出した。

彼女は音夢を見て、晴れない憂いが目の底から広がっていった。

「ごめんなさい、心愛ちゃん」

「ごめんなさい、緒方さん」

言い終わって、音夢は美波の手を取って、後ろに向いて帰ろうとした。

急に態度が変わった音夢を見て、先生はみんな驚いて、ぼんやりした。そしてうさぎのぬいぐるみを持って追いついてきた。

「音夢ちゃん、忘れ物よ」

音夢は足を止めて、そのうさぎのぬいぐるみに目を走らせた。

それから涙を流しながら、「もういらない」と言った。

美波は信じられないような顔で彼女を見た。

冬雪も呆然とドアの前に立ち尽くして、何も言わなかった。

ツーンとする感覚が美波の鼻の奥から伝わってきた。

冬雪、チャンスはあと二回だけよ。
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