第2話

俊介が私を迎えに来たとき、すでに会場にはほとんどの人が集まっていた。

私が足を踏み入れた瞬間、俊介の知人であるビジネスパートナーや会社の幹部たちが、まるで合図でもあったかのように一斉に絵里の方へ視線を向けた。

誰も何も言わないが、その表情はどこか含みがあり、何かを知っているような沈黙が場を支配していた。

最初に動いたのは絵里だった。ハイブランドのドレスの裾を軽やかに持ち上げながら、私の手を取ってきた。

「美貴姉、来てくれたのね。俊介にはもっと早く迎えに行くよう言ったのに」

絵里は甘えるように俊介を睨みつける。知らない人が見たら、まるで彼女こそが俊介の恋人に見えたかもしれない。

私は興味深く絵里の顔をじっと見つめた。

彼女の肩越しに、私に同情の視線を向けてくる人々の顔が見えた。

そして、私を連れてきたはずの俊介は、何のためらいもなく絵里の隣に立った。

彼の目は絵里を見つめ、どこか陶酔したような光を帯びていた。

それは絵里という人間に対してなのか――

それとも、彼女が描いた事業のビジョンに対してか？

私は目の前で視線を交わす二人を真っ直ぐに見据え、冷笑を漏らした。

「そんなに仲良しだと、まるであなたが私たちの間に割って入った愛人みたいね」

声のボリュームは一切落とさなかった。

会場の隅々までその言葉は届き、誰もがまるで舞台の幕が上がったように、面白がるような目でこちらを見ていた。

絵里は私の皮肉を聞くと、すぐに涙を浮かべ、絶妙なタイミングで体をふらつかせた。

「お姉ちゃん、冗談でしょ？私と俊介は……ただのソウルメイトなの」

俊介が私に何か言おうと手を伸ばした瞬間、それを予測していた私は素早く身をかわした。

「美貴、お前は狂犬か？場所もわきまえず騒ぎ立てやがって」

私は絵里に触れられた腕を嫌そうに払い、遠慮なく嘲笑を浮かべた。

「どうしたの？やましいことがないなら、言われても平気なんじゃない？」

場の空気が一気に張り詰め、視線が交錯する。

「藤田さん、やめてください。雨宮さんはきっと俊介の才能に感心してるだけだよ。そもそも、あなたは俊介のビジネスに何の役にも立ってないじゃないか？」

俊介の会社の幹部の一人が、私を上から下まで見下すように値踏みした。

次第に、あちこちから聞こえてくる陰口が私を包み込み、私はその場でただ黙って