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夫が私を愛した頃、私は死後二年だった
夫が私を愛した頃、私は死後二年だった
作者: 匿名

第1話

作者: 匿名
私が死んで3年目、怜司がまた私を捜しに来た。紗季のために、私に角膜を提供させようというのだ。

屈強なボディーガードたちが、家の中を手当たり次第に捜し回る。床を剥がしてでも見つけ出そうという勢いだった。それでも結局、彼に向かって首を横に振るしかなかった。

「社長、ひと通り捜しましたが、どこにもいません」

リビングの真ん中に立つ怜司は、深く眉間にしわを寄せた。

「そんなはずがない!体の不自由なあいつが、どこへ行けるっていうんだ。絶対に隠れてる!」

すぐにスマホを取り出し、私の番号を呼び出す。けれど、聞こえてくるのは冷たい自動音声だけだった。

「おかけになった電話は、現在、電源が入っていないため……」

私はため息をついた。つながるわけがない。だって、私は3年前のあの手術で、もう死んでいるのだから。彼は私を気にかけたことも、見舞いに来たこともなかった。だから、死んだことさえ知らずにいた。

「結衣、ずいぶん偉くなったもんだな」

何度かけてもつながらず、怜司の我慢もとうとう限界に達した。鼻で笑うと、ボディーガードたちに命じた。

「管理事務所で防犯映像を確認しろ。どこまで逃げられるか、見てやる」

私は宙に浮かび、慌ただしく飛び出していく一団を見ていた。ただ、悲しかった。紗季のことが絡まなければ、彼がこんなに必死に私を捜すことなんてないのだろう。

私も彼らについて家を出た。

管理事務所に入るなり、怜司は机を平手でたたいた。当番の若い男性職員がびくりと肩を震わせる。

「神崎結衣の出入りの記録を出せ!」

職員は慌ててパソコンを操作し、やがて顔を上げた。どこか戸惑ったような表情だった。

「神崎さん、奥様は……もう長いこと、こちらに戻られていません」

「戻ってない?」

怜司は一瞬きょとんとしたが、何か思い当たったのか、みるみる顔に怒りが浮かんだ。

「ああ、そういうことか。外で男でも囲ってるから帰らないんだな!見つけたら、ただじゃおかない!」

そのまま高圧的な口調で、私が最後にどこへ行ったのか調べろと命じた。

けれど職員は、つばをのみ込んでから、おそるおそる口を開いた。

「実は、奥様は……3年前に亡くなっています」

その場の空気が凍りついた。怜司は面食らったような顔でつぶやいた。

「死んだ?いつの話だ?」

「3年前です」職員が記録を取り出した。「臓器提供の手術のあとに感染症を起こして、助からなかったんです……当時、ご家族にも連絡したそうですが、電話に出てもらえなかったと」

それまでは私の死を疑っていた怜司が、書類を目にした途端、ふっとせせら笑った。目をむき、またあの威圧的な顔に戻る。

「嘘をつくなら、もう少しましな嘘をつけ。結衣にいくらもらって、俺をだましてる!肝臓を少し提供させただけだろう。あんな簡単な手術で、死んだふりまでするのか!

あのとき紗季は、手術は何の問題もなく終わったと言っていた。結衣の回復も順調で、すぐ退院したって、はっきり言ったんだ。それを今さら、死んだって?誰が信じるか!」

怜司が机を何度もたたく。その剣幕に、職員も必死になった。

「嘘ではありません!ご遺骨は今も斎場に預けられたままで、引き取りに来る方もいないんです……」

「黙れ!」怜司は鋭い目で職員をにらみ、言葉を遮った。

「前に提供させたときも、今にも死にそうなふりをしてたじゃないか。それがどうだ。ぴんぴんしてたくせに!お前ら、そろってあいつの味方か。紗季が失明するのを黙って見てるつもりなんだな。そうはさせない!」

これ以上話す気はないとばかりに、怜司は捨てぜりふを残して背を向けた。

「3日以内に顔を出さなければ、足の不自由な父親の治療は打ち切る。そう伝えろ!」

若い職員は何か言いかけたが、結局、ため息をついただけだった。

「でも、お父様も娘さんの死を受け入れられず、とっくに川に身を投げて亡くなっているんですが……」

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